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エルフさんが通ります  作者: るーるー
勇者の武器編
232/332

じゃ、次行きましょうか

 しばらく続いていた爆音がようやく止み、周りには砂埃が立ち込めます。地面のいたるところに私が放った剣や槍といった様々な武器が突き刺さり、なにに使うかよくわからないものまで転がっていて平らだった地面を歪な形へ変形さしていました。


『……ゼィハ、生きてるの?』

「ん? 生きてるんじゃないんですかね?」


 心配そうなくーちゃんの問いに私は軽く答えます。途中から幾つか飛んでいく武具が弾かれていた所を見ると幻想義手イマジンハンドで弾いているでしょうしね。それでも魔力切れだったのか集中できていなかったからかのはわかりませんが弾いている数は非常に少ないものでしたが。


「あ、が、ぁぁ……」


 結論から言うとゼィハは生きていました。ギリギリでしたが。

 これも一応、エルフの服、ゼィハの場合はダークエルフの服の効果なのか直撃がなかったからなのかは判断に困るところですがね。爆風で吹き飛ばされまくったゼィハはすでにボロボロです。見ようによってはスラムにでもいそうな姿です。地面もなんとなく周りよりも低くなっている気がしますし、結構な威力だったのがよくわかりますね。


「まだ改良の余地がありますね」


 今考えると別に武器や防具といった物を攻撃に使わなくてもいいわけなんですよね。そこらの石でもそれなりの威力になりそうですし。あと大きな物を動かすのはかなり魔力を使うみたいですし。今の私は魔力が完全に空ですからね。

 これは今後の課題になりそうです。


「で、気がすみましたか?」


 すてにボロボロのゼィハの元まで歩きしゃがみ込み顔を覗き込むようにします。


「あ、あなだはほんとうに化け物ですか?」

「いえ、ただのエルフですが?」


 息も絶え絶えの割に酷いこと言いますね。こんな美しいエルフ、略して美エルフにむかってなんで言い草なんでしょうか。


「まぁ、悪態をつけるなら大丈夫でしょう」


 魔法のカバン(マジックバック)を漁り、私は大量のポーションを取り出します。


「とりあえず治療しましょう」

「あ、あたしを助けてくれるんですか⁉︎」


 身動きが取れないゼィハがありえないものを見るような目で私を見てきます。


「なに言ってるんですか? 仲間じゃないですか」

『リリカが正しいことを言ってる⁉︎』


 なぜかくーちゃんもゼィハ同様に驚いています。なんでこの二人は私が人に優しくすると驚愕するんでしょう? これってすごく失礼だと思うんですけど。


「リリカさん、あたし今まであなたのこと誤解していたのかもしれません!」


 なんでそんな感動したかのように涙を流しているかはあえて聞くことはしないでおきましょう。


「誤解はいずれとけるでしょう」


 私はにっこりと笑みを浮かべているでしょう。

 ええ、いずれはね。


 笑みを浮かべたまま私はポーションを一度魔法のカバン(マジックバック)に戻し新たな(・・・)ポーションを取り出しゼィハに見えるように並べていきます。


「……リリカさん?」


 不穏な気配を感じ取ったのか不安げな表情で私を見上げてきます。


「な、なんで新しいポーション出したんですか? それに全部色が違うような気がするんですが……」

「大丈夫ですゼィハ。ちゃんと治療してあげますよ」

「ひぃぃ!」


 おかしいですね。不安を取り除くために今まで以上に笑みに力を入れてみたんですが完全に怯えられたような悲鳴を上げられました。


『すごい色だね』

『毒にしか見えないよ』


 結界を解いたからなのかメルルとくーちゃんが興味深そうにしながら私の並べたポーションを覗き込んでいます。


「さて、実験…… おっと、治療を開始しますよ」

「今実験って言った!」


 つい、心の声が漏れてしまったようです。ですが微々たる問題ですよね。


「気のせいですよ。ただの新薬のテストです。どれが治癒のポーションか忘れちゃったんですよね。だから全部投与していけばどれかは当たりのはずです」

「治癒で当たりもハズレもあるわけがないでしょう⁉︎」


 なにやら叫んでいるゼィハを他所に私は紅く輝く液体の入った試験管を取り上げます。

 なんかぶくぶく泡がたってるけどこれだったかな? ま、考えてもわからないですからかけてみましょう。試験管の蓋をあけるとまったく躊躇うことなくゼィハにかけます。


「ちょ⁉︎ あの少しはためらってぇぇぇ全身がいだぁぁぁぁぁぁい⁉︎」


 怯えていた顔が一瞬にして苦悶の表情へと変わり満足に動けない体を痙攣さしています。

 ん〜 これは痛みを倍増させる激痛薬ですかね。全身に傷を負っているゼィハに与えられる痛みは想像もできませんね。


「ふむ、違うようですし次はこれにしましょう!」


 痙攣しているゼィハを尻目に私は次の新たなポーションを手に取り蓋を開けます。中に入っているポーションの色は泥のような色をしているものでどう見ても治癒目的で使うような物の色ではありません。


「ねぇ、いまこれにしましょうって言いましたよね⁉︎ 本当にどれかわかってないんですか⁉︎ というか本当に治癒のポーションその中にあるんですよね⁉︎」

「ありますあります。たぶん」

「今多分っていったぁぁぁぁぁ!」

「えい」


 ぎゃあぎゃあと喚いているゼィハが面倒になったのでとりあえず手に持っていた治癒? ポーションをゼィハに振りかけます。


「ギィヤァァァぁぁぁぁぁぁ⁉︎」


 再び上がるゼィハの悲鳴につい口角が上がってしまいます。


『あ、あくまだ』

『とてもエルフの所業と思えない……』


 振り返ると精霊二体が手を取り合いガタガタと震えていました。よく見ると遠巻きに見ていた街の人たちも怯えているように見えなくはありません。


「じゃ、次行きましょうか?」


 ま、人の目なんて気にしたことがないのでどうでもいいんですが。


「「「『悪魔だぁぁぁぁ⁉︎』」」」


 新たなポーションを手にした私を見て全員が大声をあげました。

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