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エルフさんが通ります  作者: るーるー
勇者の武器編
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なんでそんなに濡れてるんですか?

「中位精霊になったからって容姿が劇的に変わるわけではないんですね」


 周囲を飛び回る精霊に混ざるようにして飛ぶくーちゃんを見ながらそう独り呟きます。

 ですが対して変わっていないのは容姿だけであると言うことはよくわかります。

 確か大精霊の前が中位精霊だった気がしますがさっきメルルが言った格とやらが一つ違うだけでここまで違うものなんですね。確かに今のくーちゃんの魔力と言うか存在感というべきか迷いそうなものがはるかに増しています。書くが低位から中位に上がっただけでコレなんですから大精霊というのがいかに桁外れな存在かがよくわかります。


『容姿が劇的に変わるのは大精霊になったときだけだよ。ぼくも大精霊になるまではそんなに変わらなかったし』


 メルルの言葉になるほどと頷きます。飛び回るくーちゃんの見た目はパワーアップする前までは小さな子供のような容姿だったのですが今は少しだけ大きくなったような気がする程度ですからね。おそらくは人間のサイズになるのは大精霊になったときなんでしょう。


『位が上がるのは条件を満たした精霊だけだよ。条件は秘密にされているんだけど大精霊になったらその精霊が条件を満たしているかどうかが判るようになるんだ』

「なるほど」


 位が上がると下の位のもののことがわかるようになってる仕組みですか、うまくできていますね。

 となるとくーちゃんが強くなることで私も強くなるということですからもしかして訓練とか特訓とかしなくてもいいんじゃないんでしょうか?

 そう考えると今後もくーちゃんにはぜひとも大精霊を目指してもらわないといけませんね。


『あ、あと加護あげるね! はい』


 笑顔で差し出された手をどうしていいかわからないまま戸惑いましたがとりあえず手を重ねてみます。するとなにかはわかりませんが体の中に入ってくるような気持ち悪い感覚が体にはしります。


『はい、これで加護がついたよ。使い方は自分で調べるんだよ?』

「不親切ですねぇ」


 どうれくらい使えるかわからない力を渡されても困るんですがまあ、おいおい試していくとしましょう。

 使えるものならこれで私は楽できま…… 殺気!?


「りりぃぃぃぃヵぁぁぁぁぁさぁぁぁぁん!」


 背後から感じ取った悪寒に思わず腰ぽいの柄へと手を伸ばし振り返ると視線を向けたまま距離をとります。


「なんだ、ゼィハじゃないですか。驚かせないでくださいよ」


 私の後ろに立ち殺気を送っていたのはゼィハでした。ですが今の彼女はどうやらずぶ濡れのようです。服のあちこちから水滴が零れ、足元に水溜りを作っているんですから。


「で、なんでそんなに濡れてるんです?」


 ブチっという音が聞こえた気がしました。

 そしてそれと同時に私の眼前を黒い光が覆い尽くします。

 手をかけていた柄を一気に引き抜きぽちで黒い光を斬りはらいます。咄嗟のことでしたがうまく斬り裂けたようで黒い光は二つに分かれ地面を少し削り取りました。

 意外と当たったら冗談では済まなかったかもしれません。


「なにするんですか!」


 若干の怒気を込めて黒いナイフを持つゼィハに噛み付きます。


「あたしのセリフです! 人をゴンドラごと沈めといてなんで物言いです!」


 ゼィハが指差した先には水路があり、そこにはゴンドラの先端らしき物が目に入ります。よく見なくても沈んでいく真っ最中のようですね。踏み抜いた感じがしましたし、飛んだ時に床を割ったのかもしれません。


「だからあたしは濡れてるんですよ!」

「気のせいでしょう?」


 サラッと言ったつもりでしたがそれにさらにイラついたのかゼィハの額に青筋が浮かびます。あ、これ、怒ってますね。


「ふ、ふふふ、リリカさんにはちょっとばかし躾が必要ですね。あたしのこの手で!」


 ゼィハが大きく叫ぶと服の腕の部分を手繰り上げ、生身ではない腕を露わにします。

 普通の腕にしか見えないのですが普通の腕ではありえない光沢を放ってます。今までは戦闘に使っていないことから戦闘向きではないのかと思っていましたがどうやら違うようです。

 どことなくあの腕の周りには薄い魔力が漂っているような感じがしますし、なによりゼィハの眼がヤバイです。血走ってます。


「腕がとんでもポーションがあるから大丈夫でしょ?」

「……」


 なかなかにぶっ飛んだことを告げてきますね。とりあえずはぽちを浅く握りいつでも迎え打てるようにしておきます。


「今までの欠陥古代魔導具(アーティファクト)と同じだとは思わないでくださいね!」


 ゼィハが声とともに右腕を横に振ります。あきらかに私との距離は遠い。ですがいやな感じがしたので一歩後ろに下がります。

 するとわずかに風を感じると同時に私の服の胸元が薄く切られます。


 エルフの服を切った⁉︎ どうやって⁉︎


 驚愕しながらゼィハの方を見ると笑みを浮かべたゼィハが今度は上から振り下ろすように腕を下ろしてきています。

 再び勘に従い振り下ろされる腕の直線上から跳びのきます。すると先ほどまで私がいた場所が爆発したかのような音を立てたあとに大きな穴を作り上げます。


「見えない攻撃?」


 というか全然感知できないのが問題です。


「あたしが八十年かけて作り上げた人口古代魔導具(アーティファクト)幻想義手イマジンハンド、そしてオリジナル魔法、超振動の力です」


 ゼィハが魔法のカバン(マジックバック)に手を入れそこから四本の剣を取り出し、それを地面に突き刺します。しかし、その剣は一瞬にして搔き消えてしまいます。


「掴んだ物の姿を消し、気配を消すあたしの作り出した最高傑作の古代魔導具(アーティファクト)です! これで躾をしてやります!」


 やばい、見えないし感知できないのは本気でやばいです。

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