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エルフさんが通ります  作者: るーるー
別大陸編
201/332

ああ、いたんですか?

「相変わらずフィー姉さんは化け物じみてます」


 暴風矢ウィンドストームアローの余波で吹き飛ばされた私はとりあえず先ほどと同じ場所まで戻ってきた後、遠見のメガネで高みの見物をきめていたわけですがフィー姉さんの理不尽さを目の当たりにしましたね。

 まさか魔石で作り上げた魔法を魔石を砕くことで解除するなんて…… 非常識極まりないものですね。


『エルフに普通の人はいないの?』

「エルフですからひとではありませんが……」


 もう認めますが武闘派揃いのエルフの中でもフィー姉さんは別格でしょう。本当に正面切って戦いたくない相手です。いや、そもそも対峙した段階で相手になるかどうかも怪しいところですが。


「私がやったということに気付いたんですかねぇ」


 遠見のメガネの先には未だに魔力と闘気オーラを纏ったまま警戒をしているフィー姉さんの姿が見て取れます。あの程度で死ぬとは思っていませんでしたがドレスが若干破れているくらしか変化が見られないというのはなかなかに堪えます。


「ですが、フィー姉さんがそこから動かないのであれば非常に好都合です」

『悪い顔だなぁ』


 遠見のメガネを外した私を見てくーちゃんが呟きます。とりあえず王城に関してはヴィツーからの依頼である皇帝を始末することができたわけです。

 ですが、一方的に利用されるのは面白くありません。ですから私が面白くしてあげましょう。


「ふむ、そろそろ時間ですね」


 懐から取り出した懐中時計の文字盤を見ながら私は独り言を呟きます。すでにくーちゃんは飽きたのか私の肩に座り込み欠伸をしている始末です。

 そんな中で私の耳がちょっとした物音を拾います。それは普通なら聞こえないような小さな小さな音でしたがエルフたる私の耳は拾い上げました。

 そして夜の空気が震えます。

 それも大きな音と共に。


『なに⁉︎』


 半分寝かかっていたくーちゃんは飛び起き、かろうじて屋根のギリギリのところで伸びていたゼィハに至っては飛び起きた拍子にバランスを崩し「あれぇぇ⁉︎」という情けない声を上げながら地面へと落ちていきました。


「攻撃魔法のようですね。ということはうまくいったようです」


 私の視線の先には夜の闇の中、所々で照らすように上がる閃光を捉えていました。そして遅れるように徐々に小さな声が上がり、それは悲鳴へと変わっていきます。


『…… ねぇリリカ』

「なんです?」

『あの光が上がってるところって昼間に行ったスラムのところじゃない?』

「そうですよ」


 同じように迷っていたはずなんですがよくわかりましたね。

 確かに今、攻撃魔法が放たれているのは昼間に訪れたスラムみたいです。


「スラムでなにか起こったみたいですね」

『なんでかわからないみたいな顔してるけどなにをしたの?』


 なんだか私の周りには勘の鋭い人ばかりですね。といっても亜人(ダークエルフ)と精霊なんですが。


「船で作った新薬ですよ。それをちょっとスラムに分けた食料に混ぜただけです」


 効果覿面のようですがね。まぁ、実際は見てみないとわからないんですが混乱を引き起こすという意味では成功と言えなくはないでしょう。


『…… ちなみにどんな薬を混ぜたの?』

「混ぜた薬は骨人薬スケルトンなーる食人薬グールなーる死人薬ゾンビなーるの三種類です」

『名前からしてあきらかに危ない薬だよね⁉︎』

「使う機会がなかったから実験もしてないですから知りません」


 作ったはいいですが使う機会がなかったものですからね。これを機に使ってみようと奮発してみたわけなんですが。


「思いのほか効き目が強すぎたみたいです」


 すでに私の耳は攻撃魔法による攻撃音だけではなく剣戟の音も拾い始めています。

 それもスラム以外からおおよそこの帝国の街をグルリと囲むようにして至る所で炎が上がったり悲鳴が上がったりしていました。


「あー、これもしかしたらスラムの連中から騎士たちが奪いましたかね」


 火の手が上がっているのは騎士団の詰所があった場所のような感じです。大方柄の悪い騎士が食べ物を巻き上げて薬が入っていることなど知らずに詰所で食べたんでしょう。

 私としては好都合ですが街の住人からしたらたまったものではないでしょうがね。なにせ治安を守る騎士団の詰所から治安を乱すゾンビやグール、スケルトンが飛び出してきたんですから混乱は想像を絶しますね。


『これからどうするの?』

「王城の魔の欠片はどうせシェリーの事です。どさくさに紛れて回収していることでしょう。ま、死んでいなかったらの話ですが」

『無責任だなぁ』

「ですから、私たちはもう一つの方を回収するとしましょうか」


 言いながら私は確信しています。あのシェリーがあっさりと死ぬとは思えません。

 屋根の淵まで歩くと風の魔法を軽く発動さし飛び降ります。

 しかし、飛び降りた矢先に視界にあるものが目に入ったため魔法を解除。本来の速度に戻った私の体はグングンと地面に近づき両足を伸びていたゼィハの背中に突き刺します。


「いっだぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

「ああ、いたんですか」

「いたんですかじゃないでしょ⁉︎ 普通死にますよ⁉︎ というか悪意の塊みたいな攻撃するのやめてもらえません⁉︎」


 結構な勢いで踏むつけたんですが意外と元気なゼィハに私は笑みを返します。ひとまずゼィハの背中から飛び降りるとぽちを弓から元の刀の形に戻し鞘へと収めます。


「さ、いきますよゼィハ! こんばんはなかなか楽しくなりそうです!」

「とりあえずはね! あたしに謝ってもいいんじゃないですか⁉︎ ねぇ! リリカさん!」


 唾を飛ばしながら怒鳴るゼィハを後ろに私は死が充満しつつある帝国を笑いながら歩くのでした。

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