背後からの強襲ですから容赦はしませんよ?
「ちっ!」
こちらに向かいくる魔力の塊に対して舌打ちをしながら私は腰のぽちを鞘から引き抜くと体を回転。遠心力と強化魔法で強化された体を操り片手で繰り出した斬撃を微塵の容赦もなく背後へと振るいます。
『え、シェリーの仲間だよ⁉︎』
「背後から飛びかかってくる段階ですでに敵です!」
背後を見ると先ほどはわかりませんでしたがヒラヒラとした白と黒を基調としたアリエルと同じようなメイド服を着た小柄な二人が目に入ります。
一人はピンクの髪、もう一人は青髪の子供です。
「背後からの強襲ですから容赦はしませんよ?」
無論、私は差別はしません。子供であろうが何であろうが襲ってきたのであるならばそれは完全に敵なんですから。
白刃は振るった私も恐ろしく感じるほどまでの速度でまずは青髪の子へと迫ります。
刃が青髪の子の眼前に迫るにも関わらず全く恐怖心すら見せません。それどころか空中にも関わらず身体をくるりと回し蹴りを放ち私の放った斬撃をすくい上げるように蹴り上げてきました。
腕が痺れるような衝撃が腕に走り、手からぽちが離れ、宙へと散歩していました。同時に鳴り響く甲高い金属音からして確実にあの靴なにか仕込んでますね。
青髪の子が蹴り上げたせいでぽちを戻すに戻せない私へ次はピンクの髪の子が距離を詰めてきます。
めんどくさい
さすがに戦いながらため息はつきませんが連携がうますぎてめんどうです。腰の魔法のカバンに手を突っ込むと望みの物を掴み取り、一気に引き抜き確認する手間も惜しいのでそれをピンク髪の子へと降り下ろします。
『あ、懐かしいやつだ』
「ええ」
魔法のカバンから取り出したのはぽちを手に入れる前に使っていた刀、旋風です。
降り下ろされた旋風は途中で鞘が外れピンク髪の子へと向かいますが一瞬にしてズタズタに切り裂かれます。
はて、手には何ももっていないはずなんですがね?
怪訝に思いながらも久しぶりに手に収まった物に魔力を注ぎ込みピンク髪の子へと降り下ろします。
瞬間、私の視界が白に埋め尽くされます。
「何です? これ?」
とりあえずは邪魔なので魔力をさらに注ぎ込み降り下ろしと共に暴風を発生させます。
凄まじい風圧に辺りを覆い尽くしていた白がなくなり拳を振りかぶるピンク髪の子の目が驚愕に見開いていました。
「終わりですね」
目標がきっちりと見えたので再びさらに魔力を旋風へと注ぎ込み風を発生。翠の刀身から発生した風により振り下ろされていた刃が一瞬にして跳ね上がりピンク髪の子の首筋へと迫ります。
「そこまでに」
しかし、その刃はアリエルの声と共に阻まれます。いつの間にか私とピンク髪の子の真ん中に立つと未だ宙にいる青髪の子の足を掴み床に叩きつけると次にピンク髪の子へと迫る旋風の刃を無造作に掴み取ります結構勢いがあったと思うんですがね。
「しておきましょう」
更には私へと放たれていたピンク髪の子の唸りを上げていた拳も片手で容易く受け止めどうやったのか一瞬にして床へねじ伏せました。
「ぐえ!」
「かは⁉︎」
仲良く床に背中から叩きつけられた子供二人組は痛みのあまりか床を転がり回っています。
「不意を突いたにも関わらず一打も入れれないとは不甲斐ないですよ」
呆れたように告げたアリエルはやれやれといった様子で首を振りながら掴んでいた刃を手放します。
私は旋風を構えたまま警戒をします。
「でもでも姉様! こんな狭い空間で刀と魔法を使ってくる気狂いなんて聞いてない!」
「でもでも姉さん! あの刀あんなヤバイとは聞いてない!」
突如として起き上がった青髪、ピンク髪は二人共が目尻に涙を浮かべながら私を指差し抗議をしてきます。
「だからきちんと作戦を立てなさいと言ったのに立てなかったお前たちが悪いのです」
「だってククルが!」
「だってウルルが!」
ぎゃあぎゃあと喧しく喧嘩をし始めた二人組をよく見てみると髪の色が違うだけでほとんど見分けがつきませんね。とりあえず青髪がククルでピンクの髪がウルルなようです。
あ、殴られた。
「客人の前でみっともない真似は許しません」
「いえ、ここ私が取った部屋なんですが……」
天井を見上げると蹴り飛ばされたぽちがさっくりと刺さっています。結構な勢いで蹴られましたからね。
とりあえず撮ろうと私が脚に力を入れ軽く屈むと同時に肩を叩かれます。というかかなりの力で掴まれます。
「痛いんですが?」
ギチギチという音が鳴るのを聞きながら私は振り返り肩を掴むアリエルに向かい不機嫌な声で尋ねます。
「失礼しました。ですがこれで逃げれないでしょう?」
何のことですと声に出そうとした瞬間、アリエルの背後に笑みを浮かべ両手でドレスを持つシェリーの姿が見えました。
「あ……」
眼前に逃げ道を失った仕方なしに体の力を抜くのでした。
なんだか勝ったのに負けた気がしますね。
『目的が変わっていたんだよ』
くーちゃんが欠伸混じりに告げた言葉に頷くしかない私でした。




