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エルフさんが通ります  作者: るーるー
出会い編
19/332

その傷は致命傷だ!

 冒険者ギルド。

 扉を開き、目の前に広がるのは一面の紅。

 周囲には鉄の匂いが充満している。いくら拭っても取れることが無い。いや、減らない。

 ぎぃぃと扉の開く音が響く。そこには武装した二人の男がたっていた。


「な、なにがあったんだ」


 男二人は中の惨状を見て震えるながら声をだします。

 だから私は答えました。


「この中に犯人がいる!」

「主にというかどこからどう見ても主犯格は貴方です!」


 ゴス! っと鈍い音が頭から響きます。頭を押さえ後ろを振り返ると握りこぶしを構えたフランが目に入りました。


「リリカさん、あなたが連れてきた人! なんなんですか⁉︎ 血塗れですよ⁉︎ 主に冒険者ギルドの床が!」


 フランが怒り心頭で指差したのはそこいら中にある血だまりです。今現在私がモップで拭いているものでもあります。モップはすでに真っ赤っかです。

 剣の突き刺さった人物を引き摺り回し、冒険者ギルドにやってきたはいいんですが、吐血を繰り返したりしてるので周囲は血の海です。


『……匂い気持ち悪い』


 くーちゃんもぐったりした様子でカウンターの上に寝転がっています。

 精霊は血の匂いがダメですからね。聞くところによれば自然精霊は戦場には近寄らないらしいですし。


「というかですね? あの人だれです? 背中に剣が突き刺さって生きてる人なんて初めてみましたよ?」

「え、宗教状の理由とかじゃないんですか?」

「……人の身体を鞘に見たてる邪教は少なくとも私は聞いたことがないわね」

「宗教的理由ではないのですか」


 あの剣は見たところ結構な大きさの剣です。なのに刀身の七分以上が彼女の身体に突き刺さっていて剣先が貫通していないのです。

 つまりあの剣は折れて突き刺さっているのかなんらかの現象で彼女と一体化していると考えられるのです。


「くーちゃん、なにかわかりますか?」

『んー、あの剣なんかいるよ』


 くーちゃんは冒険者ギルドのソファにうつ伏せになり眠る(剣が背中に刺さってるから仰向けにできなかった)女の子を気だるげに見つめながら言います。

 また、曖昧な表現が来ましたね。しかし、何かですか…… 私の瞳には精霊が見えませんから精霊ではないでしょうけど、おとぎ話に出てくるような大悪魔でも出るんでしょうかね。それはそれで楽しみですが。


「背中に剣? それって赤髪の女か?」

「知ってるの?」


 先ほど入ってきた武装した二人組みのうちの一人が椅子に座り注文を終えたあとに話しかけて来てくれました。


「ああ、多分だがそいつはマリーだな」

「あの『ブラッディマリー』か?」

「多分な、赤髪で背中に剣を突き刺してる奴なんて俺はそいつしか知らないな」

「ブラッディとはまた穏やかではない名前ですね」


 血塗れですよ。いや、今現在も血塗れなんですけどね彼女は。


「彼女とパーティを組むと血塗れによくなるからついた二つ名さ」

「ほう」


 それは楽しそうですね。私のパーティに加えたい位です。

 でも有名人ならパーティ組んでるんでしょうし。


「マリーさんはパーティを組んでらっしゃるんですか?」

「いや、聞いたことないな。基本的にソロだよ」


 ソロ?


「ソロってなんですか?」

「クエストを受けたりダンジョンに行ったりするのをパーティを組まずに一人で行う人のことです」


 フランがすかさず説明してくれます。なるほど一人で戦う人のことをソロと呼ぶのですね。

 なら、パーティが組めそうです。


「り、リリカさ〜ん! ひどくないですか! ボクを置き去りにして! おかげでボクいろいろとべんしょうさせられたんですよ⁉︎」


 振り返るとアレスが怒っていました。器がちっさいやつですね。


「それよりアレス、良い知らせですよ! 三人目が決まりました!」

「三人目よりボクの財布の心配をしてください!」


 私の顔にアレスの顔が近づきます。め、目が血走ってる。そこまで懐が寂しいというのも可哀想ですね。

 仕方なしに私は自分の財布から硬貨を取り出そうとして固まります。


「どうしたんです? 銀貨八枚ですよ?」


 アレスが手で催促してくる中、私は困りました。私の財布の中には銀貨二枚と銅貨が七枚しか入っていなかったのですから。


「お、お金がない!」

「ええ〜」


 そういえば最近いろいろと買ってたからな〜 それのせいかも。

 しかし、ここまで減ってるとはお金って怖い。


「これは至急、マリーさんにパーティに入っていただきミノタウロス狩りですね!」

「本当にやるんですか?」


 アレス、成長とは常に前を向いている者にしか訪れないんですよ? そんな嫌そうな顔するなよ。


「でも、マリーさんは了承してくれるのかしら?」


 フランの疑問はもっともですね。


「とりあえず聞いてみましょう! てい!」


 私はソファで眠る女の子の背中の剣をけりつけます。


「がはぁ!」


 女の子は口から大量の血を吐き出し、収まりかけていた血の匂いが再びギルドフロアに広がります。


「「「お前は常識という言葉を知らないのか⁉︎」」」


 みんなに怒られます。

 起こして差し上げただけじゃないか。何を怒ってるんですかね。

 血反吐を吐いてのたうち回るマリー? を見ながら首を傾げました。

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