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エルフさんが通ります  作者: るーるー
別大陸編
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みんなの迷惑になるとかは思わないんですか?

「いい天気ですね〜」

『だね〜』


 雲ひとつない青空を見上げ、私は呑気に空を飛んでいる鳥を見ながらそう呟きます。

 いえ、雲一つないというのは違いますね。雲はあるにはありますが視界に入るものを片っ端からゼィハが消し去ってるんですよね。


「うーん、この魔石は相性がイマイチだな。次はこの魔石を」


 どうやら作った人工古代魔導具(アーティファクト)のテストをしているようですが座っている横から閃光が走るたびに体がビクついてしまいますね。

 閃光は雲に当たると瞬時に雲を散らしているんですが、一度調整に失敗したのか大地に転がっている大岩に当たったんですよね。結果、大岩は一瞬にして閃光が触れた部分は消失していました。誤射であれを当てられると死にますね。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

「ふふふ〜 がんばってぇ〜」


 対して勇者パーティのほうはやかましいことこの上ありません。カズヤは叫びまくってますしフィー姉さんは喜びながらおそらくは鞭のようなものをカズヤに向かって振るっています。

 かなりの意味不明の状況ですよね? 私もわかりません。

 現在カズヤは簀巻き状態からは解放されていますがお腹に縄が巻き付けられており、その先は馬車に繋がれています。そして馬車はかなりの速度で走っているわけなんですがそれをカズヤは全力で走って追いかけている状況なわけです。


「おっくれてるよ〜」


 フィー姉さんの楽しそうな声とともに風切り音、ヒュゴア! という音が鳴り響きます。


「ぎゃぁぁぁぁぁ⁉︎」


 次の瞬間にはカズヤが電撃で打たれたかのように痙攣。おそらくは痛みででしょうが転がりまわります。しかし、当然のことながら馬車は止まるという選択肢を選ばず逆にスピードをあげるという暴挙に出ます。転がるカズヤですがもはや引きずられているといったほうが正しいような状況です。


「ハイヒール! ハイヒール!」


 シスターであるククが回復魔法をかけますがかけているのはボロボロの勇者カズヤではなく息を荒らげながら全力で走る馬にでした。

 ハイヒールの緑の光が馬を包むたびに速度の落ちていた馬が再び力を取り戻し速度を上げていきます。まぁ、比例してカズヤはボロボロになって血の匂いが周囲に充満していくんですけどね。


「ちょ! ククさん⁉︎ ぎゃはぁ! ハイヒールを俺にもくれませんかね⁉︎」


 悲鳴の合間に切実な叫びを上げますがハイヒールの代わりに返ってくるのは唸りをあげる鞭の一撃です。


「あのあの! お肉のために犠牲になってください!」

「食欲で俺が犠牲になるのか!」


 勇者よりはお肉ですよね。ククは頬を染めながらお腹を鳴らしています。


「さあ! お肉のためにキリキリ走りなさーい」


 満面の笑みを浮かべながらフィー姉さんが鞭を空気を震わすような、最早斬撃と言えるくらいの威力で鞭による攻撃を繰り出します。


 ゴバァァァァァァァン!


 明らかに鞭が鳴らすような音ではありません。その証拠にカズヤが避けた鞭は大地に亀裂を作るほどの威力です。


『やっぱりリリカのお姉ちゃんだよね?』

「そこは疑問系で聞かないでくださいよ」

「あの姉にしてこの妹ありということでしょう。あの勇者の打たれ強さも異常です。ぜひ調べたいものです」


 ゼィハのカズヤを人と見ていないような発言に軽く笑いつつも今も引き摺られているカズヤを見ます。

 ある程度時間が経過すると治るという勇者ですがさすがに身体中に拷問とも呼べる攻撃を受けているためか体の治りがあまりよろしくないようです。


「一体どういう原理なんですかね?」

「精霊よりもヤバイものにでも取り憑かれてるんじないんですかね?」

『精霊を危ないものみたいな言い方しないで』


 精霊にもいろいろいますからね。イフリュートみたいな残念精霊ならば手違いとか言って世界滅ぼしそうですし。


「ぁぁぁぁぁの! エルフさん! おおおお俺を助けたりするという選択肢はないんですかねぇぇぇぇ⁉︎」


 引き摺られながら必死に私に話しかけてきますね。見ると道が血まみれですよ。


「みんなの迷惑になるとかは思わないんですか?」

「そっくり貴様らにかえしてぇぇぇやるぅぃわぁぁぁ!」


 はぁ、私たちがいつ人様に迷惑をかけたというんですかね? おそらくはフィー姉さんとククは助けてくれないと判断してこちらに声をかけてきたんでしょうけど無駄でしたね。ヴァン君なんて興味がないのか寝てますし、人望が欠片も存在しない勇者ですね。


『リリカ本気で言ってるのかな?』

「今までの傾向から見て確実に本気ですよあれ」


 私に聞こえないようにしているつもりでしょうが丸聞こえなんですよね。


「帝国までどれくらいかかるんです?」

「ざっとこのペースなら二時間位かしら?」

「おい! このまま俺を走らせる気ぴゃぁぁぁ!」


 フィー姉さんと私の会話に割り込んできたカズヤでしたが即座にフィー姉さんの腕が振るわれ悲鳴をあげながら転がると再び引き摺られる羽目となりました。


「私とリリカちゃんの会話の邪魔をするなんて!」

「引き摺りながらはなしてんじゃねぇぇぇあががががががが!」


 もはや見慣れた、そして聞き慣れてしまった鞭の音を聞きながら大きく口を開けて欠伸をします。


「ふぁ〜 眠いのでくーちゃん、ついたら起こしてください」

『え、寝るの? この状況で寝れるの⁉︎』

「なんて図太い神経なんですか……」


 二人の戯言を聞き流しながら私は魔法のカバン(マジックバック)から大きめの布を取り出すと頭からかぶり悲鳴と高笑を子守唄にしながら夢の世界へと旅立つべく眼を閉じるのでした。

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