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エルフさんが通ります  作者: るーるー
別大陸編
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つまり、暗殺ですね

「陸だぁぁぁぁぁ!」

『え⁉︎ そんなに喜ぶところ⁉︎』


 水平線の向こうに見えた陸地を見て私は歓喜の声を上げます。それを見ていたくーちゃんはなぜそれが嬉しいのかわからないと言わんばかりの表情です。

 わかるまい、今の私の気持ちなんて! 羽で優雅に空を飛んでいる精霊にはわかるまい!

 やたらと海が荒れた時の気持ち悪さは半端なかったですからね。船にはもう乗りたくないというのが本音のところです。ま、帰る時にもう一度乗らないといけないんですけど。


「揺れないって素晴らしいことだと思いません?」

『飛んでるからわかんない』


 そりゃそうですね。

 いっそくーちゃんも地面を歩いてみればいいんですよね。歩いてる精霊なんて見たことがありませんが。


「さっさと陸地に行きたいものです。足があるわけですし」


 もともとエルフは陸地の、というか森の住人なわけですからね。海の上では大して強くはないのですよ。肉体的にですが。


『いや、リリカ十分強いじゃない?』

「いやいや、この船に乗ってからはいかに私が普通かがよくわかりましたよ。フィー姉さんもそうですがカズヤも聖剣がばかみたいにつよいですからね。ヴァン少年も強いです」


 あくまで正攻法、真正面からの戦いならばですが。私ならあんな化物みたいな連中とまともに戦いたくありませんね。まともに戦う前に魔石や銀矢を放って逃げます。


『ふーん、にげるんだ』

「くーちゃん、労力を支払って得る対価が割りに合いません」


 勝つ負けるの問題ではなく生きるか死ぬかの戦いです。生き残れば私としては勝ちなんですから。死んだら何もでしませんからね。生き残ってから考える方が賢いに決まってます。


「あら〜 もうじきリリカちゃんともお別れなのね〜」

「だから気配を消して背後に立たないでください」


 甘ったるい匂いを纏わせながら背後を振り返ると案の定というかフィー姉さんが私を抱きしめようとしているところでした。


「むぎゅ……」

「ああ〜 こんなに抱き心地がいいリリカちゃんと別れなきゃいけないなんて!」


 私に誇示してくるかのような大きく柔らかい胸が私の呼吸を妨げてきます。誇示しながら攻撃してくるとはなんて胸ですか!


「姉御、妹、苦しんでる」

「あらやだ! 愛しすぎてるばかりに!」

「ゲホゲホ」


 慌てたように離されたおかけで胸やは埋もれて窒息死という馬鹿らしい死因からは間逃れました。


「なんのようですかフィー姉さん」


 呼吸を整えながらフィー姉さんわ、見直します。私が無事なことを確認したフィー姉さんは安心したようにほっと息を漏らすと再び胸を揺らしながらこちらに飛びかかってきました。しかし、さすがに見えている状態で二度目の動き。今度は容易く避けれます。私が僅かに横に動くことによりフィー姉さんがすごい勢いで私の真横を通り過ぎていきます。

 その勢いは私を通り過ぎても止まる様子は見せず爆音を立てながら甲板の壁にのめり込むようにして止まりました。


「あんな速度で私にぶつかろうとしているなんて我が姉ながら頭を疑いますよ」

『お姉ちゃんだよね? お姉ちゃんにいう台詞じゃないよね?』

「一番近くて遠いのが家族じゃないですか?」

『血も涙もない……』


 血も涙もありますし慈愛に満ちたエルフですよー?

 私が船内へと向かうために踵を返すと仕方なしといった感じにくーちゃんも付いてくると私の頭の上に座り込みます。


「海の上にいる間にいろいろと薬も作れましたからね。あとは魔石が欲しいところですが……」

『あの作ってた薬のこと?』

「ええ」


 超回復薬や強化薬といった戦闘に役立つ薬によストックを作ることができましたし海の上にいる間は無駄な時間ではありませんでしたね。


「次の大陸では魔石のストックが手に入ればいいですねー」

『いや、だからあれはなかなか貴重なんだよ?』

「あと魔王復活のための物もあればかすめ取るとしましょう」

『ねぇ、交渉とか平和的な解決手段はリリカの頭の中にないの?』


 平和的な解決手段?

 言われてから立ち止まり腕を組み頭をかしげて考えます。

 平和的ということは血を流すのが最小限ならいいのでしょうか?

 うーん……


 しばらく考えていると頭の中に素晴らしい妙案が浮かびます。これは平和的解決手段といっても間違いないでしょう。


「つまり、暗殺ですね?」

『……どこに平和的要素があるの?』


 私の答えに不満があるのか私の頭にため息をつかれました。

 いや、平和的でしょう? 最小人数が死ぬことで目的が達成されるんですから。

 なにが不満なんでしょうか?

 船内の階段を下りながら私はくーちゃんのいう平和的な解決手段とやらを考え部屋に向かうのでした。


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