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エルフさんが通ります  作者: るーるー
別大陸編
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これが闘気

 鳥が空を飛ぶ青空。

 見る人が見る人が見れば必ずこういうことでしょう。「いい天気だ」と。

 しかし、今の私にはとてつもなく代わり映えのしない退屈なものでしかありませんね。


『ふぁ〜 いい天気だね〜』

「人の頭の上で寝てたらそりゃ気分もいいでしょうね」


 すっかり定位置となったわたしの頭の上でくーちゃんは大きな欠伸をしています。

 アーマードク・ジラの襲撃から一週間。あれから特に何かに襲われたりすることなく船旅は安全にすすんでいます。ええ、退屈なくらいに。

 あまりに退屈なのでフィー姉さんに闘気オーラの使い方を学ぼうとしましたが無駄です。天才は人に教えるのに向かないということを再認識するだけでした。

  なんというか表現が抽象的というか音で表現しようとするんですよね。

 ぎゅーんとかバッ! っとかよくわからないですし。音ですし。手で表現してくれているんでしょうけどまったくわからないですし。

 熱心に教えてくれてたフィー姉さんには悪いですが授業は途中で逃げ出しました。


 そうなると闘気オーラについて知ってる人というのが途端に私の知り合いにはいないことになるんですよね。

 面倒ですが自分で感じ取るという昔の修行方法を頼るしかないわけなんですよ。でも私はエルフの里では弓と精霊魔法の授業しかまともに聞いてなかったですから闘気オーラはわからないんですよね。


「うーん」

『リリカ、悩んでると槍が降ってくるよ?』

「言ってる意味がわかりませんが表現的に私を馬鹿にしているということはわかるんですよ?」


 馬鹿にしている割にはくーちゃんの顔はかなりの真剣さです。

 つまり真面目に人を…… エルフを小馬鹿にしているわけですね。人族の間では森の賢者と名高いエルフを!


「ふむ、私を馬鹿にするとはいい度胸です!」

『だってリリカは頭使って考えるの得意じゃないでしょ?』

「……」


 た、確かに得意ではありませんが、考えるより先にぶっ飛ばした方が早いじゃん! と考えるのは否定しませんけど!

 なんだかくーちゃんの言葉を認めると負けた気がするんですよね。森の賢者的に!


『だから考えるよりもやってみた方が早いんじゃない?』

「……一理ありますね」


『習うより慣れろ! 慣れたら使いこなして復讐じゃ! by長老』


「復讐する相手はいませんが慣れるというか練習は必須ですね」

『リリカって努力するタイプのエルフ?』

「場合によりけりですね」


 必要最低限の努力はしますがあまりにも大量の努力はしたくはありません。面倒ですし。

 勝利を得るなら限りなく最低限の労力で最高の結果を取りたいものです。


「さて、ではどうやって闘気オーラを感じ取るかですね」


 特訓するしかないわけなんですが、私は闘気オーラはなんとなくなら見えますがそれはあくまでかなりの強さを持った闘気オーラだけです。暇弱なもの、つまりは体から自然に発されているものはまったく見えませんからね。


『エルフの里ではどんな訓練してたの?』

「あんまり記憶にないですね〜」


 というかあんまり思い出したくもないんですが。確か何かが流れる感覚がどうのこうとかいってたような気がしますが…… これは魔力でしたかね?


「うーん?」


 うろ覚えながらなにもしないよりはマシと考えたので、とりあえず手を前に突き出し目を閉じ集中します。突き出した手のひらの上に魔力を集めるような感覚でやってみます。

 流れているものが徐々に体を巡り一点に集まるイメージをひたすらに繰り返します。


『あ、なんか出てきたよ!』

「本当ですか⁉︎」


 くーちゃんの言葉に興奮したように目を開くと私の右手の中に薄く輝く緑の球体がありました。


『これが闘気オーラ?』

「いえ、違いますね」


 興味深そうに見つめながら呟いたくーちゃんの言葉をすかさず切り捨てます。

 確かにこれは密度の高いものですが闘気オーラではなく魔力。多分、今の私の体の虚脱感を鑑みるに私の全魔力の結晶なんでしょう。すでに腕を上げていることすら辛いほどに体が重いです。


「今の私は体の中の魔力が空のはずです。もう一度同じことをすれば闘気オーラがでるかもしれませんね」

『だ、大丈夫? 今のリリカすごい眠そうだよ?』


 くーちゃんが心配するほどですからかなり眠そうに見えるんでしょう。


「……大丈夫だいじょうぶ」


 魔力を一気に使ったから精神的疲労が来ているせいでしょう。眠いには眠いですがだいじょうのはずです。……多分。


「むん!」


 魔力の結晶を右手に浮かべたままの状態で再び目を閉じると次は左手に集中していきます。

 先程と同じように体に流れるイメージ行いさらにその流れが掌に集まるように考えていきます。

 すると先程はなにも感じなかったのに今度は左手に熱を感じます。


「これが闘気オーラ!」


 ついに感じ取れた私は目を見開き左手を凝視します。開いた私の目に飛び込んできたの手のひらの上で轟々と唸りをあげながら燃える真っ赤な炎の塊がありました。


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