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エルフさんが通ります  作者: るーるー
別大陸編
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ああ、面倒です

 濡れる鞘からぽちを抜くと刃を軽く払い水を飛ばします。今や状態は釣りではなく狩り。

 アーマードク・ジラが再び飛び上がり私に水を掛けようとしてきますがそうはいきません!


「伸びろ! 魔ノ華(マノハナ)!」


 すかさずぽちが震え、魔ノ華(マノハナ)へと変化したのを確認する黒靄を作り出し、刀の切っ先を突き刺すべく突き出します。


「ん?」


 いつもならすぐに突き刺したような感触が柄越しに感じるんですが今は全くなにも感じません。

 不審に思い魔ノ華(マノハナ)の先をきちんと見ると全く伸びていません。


「なんで伸びないんですかね?」


 首を傾げて思考しているとアーマードク・ジラが音を立てながら海に着水。水が巻き上げられ頭上から土砂降りの雨の如く降り注ぎます。


「…… またずぶ濡れですよ」

『……だね』


 またもずぶ濡れになった私とくーちゃんの出した声は怒りの声音でした。


「なんで伸びないんですか!」


 私同様に濡れている魔ノ華(マノハナ)を振るいますが魔ノ華(マノハナ)は全く伸びません。いつもならばあっさりと長さが変わったりするんですがどういうことでしょう。


『魔力が足りないんじゃないかな?』

「私は魔力は全然使ってないんですが?」

『いや、いつも黒靄が魔力吸って魔力の羽根みたいなのがリリカの背中にでるじゃない? 今はそれがないし』


 くーちゃんに言われ背中に意識を向けてみると確かにいつもはある魔力の羽根が見当たりませんね。


『多分だけど吸う魔力がないんだ』

「吸う魔力がない?」

『うん、周りに魔力がないから吸えないんじゃないかな?』

「そんなバカな……」


 生き物は生きているだけで微弱でも魔力を体に宿しているものです。それが全くなくなる? あり得ない事です。

 首を傾げているとまた船が大きく揺れます。しかもさきほどよりもかなり大きな揺れです。


「あたぁ!」


 あまりの揺れに私は姿勢を崩し甲板上を転がります。周りの客も同様に転がっていました。


「誰か魔法を使えないんですか?」


 周りに転がる客の中にはローブを着た人もおり、魔法使いと見たので声をかけます。


「バカか! アーマードク・ジラだぞ⁉︎ あいつの餌は魔力だ! あいつの近くにいると魔力を吸い取られるんだよ! 魔法なんて撃てるわけあるか!」

「なんと……」


 怒鳴り散らしてくる客の言葉に私は納得します。確かに魔力を吸い取られ続けているのなら大してない私の魔力などはすぐに空になるでしょうし周りの客も大した魔力がないのであらば私と同じように空になっているんでしょう。


「なんて厄介な!」

「あいつは海で会いたくないランキングを十年連続で一位をとるような奴だぞ!」


 そんな奴だったんですか。というかそんなランキングまであるとは…… 二位と三位が微妙に気になりますね。


「だからあいつを倒すには物理攻撃しかきかんのだ!」

「なら困りましたね」


 物理攻撃といっても私には弓とぽちしかないわけですからね。控えめに考えてもあの明らかに硬そうな体を魔法なしで貫けるとは思えませんし。


「ああ、面倒です」

『面倒がってる場合⁉︎』


 そんな驚かなくてもいいと思うんですけどね。

 有効手段がないわけではないんですが魔石は残りが少ないからあんまり使いたくないんですよね。ま、命の危機なら躊躇いなく使いますが節約できるとこは節約したいですからね。


「あ、ゼィハならいい古代魔導具アーティファクト持ってるんじゃないですかね?」

『よ、よんでくるよ!』


 一瞬のうちにくーちゃんは踵を返し船内へと向かいます。

 そんなにあせらなくてもすぐに沈みはしないと思いますが。


 ズゥゥゥゥゥゥゥン


「……」

「ゆ、揺れが大きくなってる!」

「しずむう!」


 今までよりさらに大きな音が鳴り上がり周囲から悲鳴があがります。

 前言撤回。意外とやばいかもしれませんね。揺れがどんどん大きくなっていってます。

 どうにかしようにも魔力がない事にはどうもしようがありませんし。


「うーん、こういう場合はフィー姉さんが一番強いんですけど」


 あの人はある意味物理攻撃に完全特化してますからね。魔力の他にも確かに戦士系の人たちが使う確か闘気オーラとか呼ばれる物も使えますしね。


「あら、お姉ちゃんがどうかしたのかしら?」

「気配もなく後ろに立つのやめてください。あと人形みたいに抱き上げて頬ずりしないでください」


 いつの間にか背後に姿を現した、というさ多分出ると思っていましたがフィー姉さんに抱き上げられ高速で頬ずりされます。熱い! かなり熱いです!


「いや、フィー姉さん! 今船沈みそうなんで! 遊んでる場合じゃないんですよ!」

「えー」


 無理やりフィー姉さんを引き剥がすとフィー姉さんは悲しそうな顔をしますがそんなのに構っている場合ではないんですよ。


「じゃあ! お姉ちゃんが片付けてあげるからあとで撫でていい〜?」

「早く片付けるならいいですよ」


 私がため息混じりに了承するとニコニコと笑いながらフィー姉さんが離れます。


「じゃ、殺っちゃいますよ〜」


 全身から蒼い湯気のようなものを立ち昇らしながらフィー姉さんは海にいる敵と対峙するのでした。

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