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エルフさんが通ります  作者: るーるー
大破壊編
155/332

きんにくつーでー

「全くあなたという人は!」

「ゼィハ痛いです」


 酒場を出てからも私はゼィハに引き摺られながら町中を移動させられていました。ゼィハは意外と力があるのか私を引き摺っても全く疲れたそぶりを見せません。


「どうせ賞金首とわかったなら襲ってきたんですからたいして問題ではないかがするんですが?」

「それはバレてからです。今騒ぎを起こしたら買い物もロクにできなくなりますよ」

「なるほど」


 ゼィハの言葉に手を叩いて私は納得します。ま、最後の手段としては奪えばいいわけなんですが、それを言うとまたゼィハに怒られそうなので言わないでおきましょう。


「なら一度馬車に戻りましょう。面倒ですし」

「ならあなたも歩いて欲しいんですが?」

「きんにくつーでー」


 体の全身の力を意図的に抜きつつ引き摺られる部分のみに魔力強化を施していきす。ふふふ、これで楽できます。


「この! 怠ける時は本気では怠けますね!」


 私が歩く気が一切ないことを悟ったゼィハは嫌がらせのように引きずっていきますが魔力で強化された私の足は一切傷つくことはありませんからね。無駄な努力を続けるがいいです。

 ゼィハが引きずってくれるならば好都合と私は引き摺られたまま先ほどテーブルの上に現れていた折りたたまれた黒い紙を開きます。

 中も紙同様に真っ黒でしたがしばらく眺めていると私の魔力に反応するかのように文字が浮かび上がってきました。


「ああ、これはシェリーからでしたか」


 私の魔力にだけ反応するとはすごい技術ですね。


「拝啓、よくも私を死にそうな目に合わさせやがりましたわねこの野郎。あそまで命の危機を感じたことはありませんでした。私は魔力がないとなにもできないということを理解した上で今後の行動を考えていただきたいですね。そもそも……」


 なんだか読んでいると小言が大半な気がして仕方ありません。そのたむた大半は読んでるようで読んでいないという適当さで済ましていきます。

 一番下まで読み終えると黒い紙は二枚に増えたため仕方なしに二枚目にも眼を落とすとそこにも小言の癖にバカみたいに大量に書き込まれていた。


「シェリー暇なんですかなぇ」

「引き摺られながら手紙読んでるあなたよりは忙しいでしょうよ!」


 イラついた声色で私の独り言にツッコミを入れてきたゼィハに私は笑い声をあげます。


「はははは、確かにそうですよね!」

「バカにしてるんですよ⁉︎」


 バカにするような言葉にたいして笑い声をあげた私にゼィハは逆に驚いていました。


「最後にお礼の品を入れておきました。別大陸でも魔王の欠片をお探しくださいって書いてありますがなんなんでしょうね?」


 そんなゼィハを無視し私はなんとも言えない奇妙な文章を読み終えます。この紙以外に特になにもないんですが入れ忘れでしょうか? そう考えていると同時に黒い紙に再び私の魔力が吸い込まれていきます。私の魔力を十分に吸ったのか黒い紙に変化が現れます。黒い光を放ち、その光が収まると私の手元の紙は二枚の紙切れへと変貌を遂げます。


「これは?」


 変化した紙は元の紙のように黒いわけではなく普通の紙ですが綺麗な文字と装飾が施されていました。特になにか魔力を感じるわけでもありませんしなんなんでしょう?


『たいりくかんせんチケットって書いてあるね』


 頭の上に座るくーちゃんが紙を覗き込み教えてくれます。


「なんですかそれは?」

『さあ?』


 読めるだけでくーちゃんも知らないようです。

 首を傾げ悩んでいるとふわっとした感覚が私を襲い視界が一転、眼前に地面が迫ってきます。


「わわ」


 どうやら私は投げられたようです

 突然のことで驚きはしましたが空中で姿勢を整えると這いつくばるようにして地面に着地します。衝撃を殺すために何度か地面を転がります。


「危ないじゃないですか」

「人を勝手に移動ように使うからです」


 地面に転がったままゼィハに声をかけますが返ってきた言葉を聞く限り起こっているようです。

 ゼィハが私を放り投げたようでした。周りを見ると馬車が置いてある場所に着いたようです。何故か馬に「ねぇ、なんで地面に転がってるの?」という視線を向けられた気がします。


「これなんだと思います?」


 起き上がり服についた砂を叩きながら片手にあるチケット二枚をゼィハに見せます。ため息をつきながらもチケットを受け取ったゼィハは気だるげに見ていましたが途中で眼を見開いていました。


「これは船のチケットじゃないでふか!」

「でふってなんですでふって」


 私の揚げ足取りも気にならないくらいにゼィハは興奮しているようでした。


「船ですよ! 海を渡り別大陸に行ける乗り物ですよ」

「海!」


 ああ、そういえば以前のお礼に海が見れる方向でと言ったのを忘れてましたね。早くも返してくれるようです。


「ならこの船とやらに乗りに行きましょう。その間にほとぼりも冷めるでしょうし」

「そうしましょう!」

『なんだかわからないけどいいよ!』


 珍しく意見が一致した私たちはチケットに記載されている港国カルフランへと進路を定めるのでした。


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