止めれたらベシュ、あなたの勝ちでいいですよ
「ありがとうございます。大体どれくらいありましたか?」
『大体三キロアメルくらいかな? でも大体だよ?』
くーちゃんは私の頭の上に座りながら報告してきます。大体でも距離がわかれば問題ありません
「あとはどの範囲にエルフ達がいるかですが」
『門の近くから城の近くまで結構広い範囲にいたよ』
「そうですか」
くーちゃんの言葉通りならばかなりわ範囲です。これを避けて逃げるのは困難でしょう。
だから、
「薙ぎはらうとしましょう。言葉通りに」
「あなたの相手は私よ!」
魔ノ華を構えなぎ払おうとした私の前にベシュが舞い踊ってきます。
舌打ちを一つした私は魔ノ華をベシュの首筋を狙い振るいますが 巨大を討つ剣で容易く防がれます。再び舌打ちをした私を見てベシュは狂気にまみれたような瞳でこちらを見つめると口元を三日月状に歪めてきます。
「今日こそ私が勝つんだから!」
「知ってますか? 人間の書物を読んで私も初めて知ったんですがそういうセリフを言うとフラグってやつが立つんですよ? 」
「何を意味のわからないことを!」
苛立つように繰り出される 巨大を討つ剣を魔ノ華で受け止めます。大した衝撃が来ないのは魔法で体を強化しているからでしょうが受け止めた私の体は地面を砕き、僅かに脚が地面へと沈みます。
お返しと言わんばかりに魔ノ華で押し返しすぐさま刃を閃かせベシュへと切り掛かりますがベシュも体勢崩しながらも 巨大を討つ剣で攻撃してきたためまともに振り切ることはできず半端な攻撃となり軽々と躱したその間にベシュは魔ノ華の間合いの外へと逃れました。
一瞬の攻防でしたが私もベシュも肩で息をしていました。短い攻防とはいえ集中した状態でかつ魔力を消費し続けているわけですから疲労がすぐにたまりやすいのです。
魔法は集中すれば威力が上がる。しかし、集中力が解けたとき、それが戦闘中ならば確実に隙が生まれるほどの威力低下を引き起こすのです。
しかし、ベシュと私には大きな差がありそれは埋めようのない差でもあるのです。
ベシュを警戒しながらも私は背中に視線を向けます。すると未だに背中の魔力の羽根は健在であり、私の予備魔力はあるとを示しています。そしてそれは黒靄が未だに魔力を集め回っていることを意味しています。
「そろそろ終わりにしましょう」
私は魔ノ華を水平に構えながら静かに告げます。その言葉に警戒するかのようにベシュの全身を今まで以上の量の魔力が覆います。
「この一撃、止めれたらベシュ、あなたの勝ちでいいですよ」
「! なら絶対止めてやるわ!」
瞳を輝かしながらベシュは 巨大を討つ剣を握る手に力を入れたようです。ふふふ、これでベシュから逃げるという選択肢は消えたわけですね。戦闘狂は思考誘導が楽で助かります。
水平に構えていた魔ノ華の柄を片手から両手に持ち替え、背中で唸る魔力の羽根の大半を魔ノ華に注ぎ込んでいきます。注ぎ込まれていく魔力に魔ノ華が歓喜の声を上げるがごとく脈打ちます。
武器が普通なら持ち得ない熱を帯びながら魔ノ華の歓喜の胎動は続きます。魔ノ華が震えるたびに空気が揺れ、途方もない威圧感が満ちていきます。
『ひ!』
戦闘中ですら声ひとつ上げずに頭に乗っていたくーちゃんが短く悲鳴をあげます。それほどの圧が魔ノ華から放たれているのです。
やがて胎動が止まり空気の揺れも止まります。残ったのは私の手の中にある禍々しい魔力を放ち続ける魔ノ華だけです。
「いきますよ?」
「こい!」
一応は待ってくれていたわけですから声をかけるとやたらと気合の入った声が返ってきました。
そんなベシュに向かい私は手にしていた魔ノ華にイメージ浮かべながら全力で振るいます。
そして私のイメージを完全に再現された狂刃が離れているはずのベシュに襲いかかります。
「『でか⁉︎』」
味方のくーちゃんと構えていたベシュが同じように声を上げます。
私が魔ノ華に望んだものは巨大な刃。しかもくーちゃんに教えてもらった城までの距離を一掃できるほどの刃です。その見様によっては壁のように見える刃を身体強化の魔法で強化された私はただただ力に任せて叩き潰すがごとく振るったのです。
「こんなの受けれるわけ……!」
「あ、よけるとエルフたちは全滅ですかね? 振り抜く予定の範囲にはまだエルフいるみたいですし」
「あなた! 味方ごと⁉︎」
「はははは」
驚愕したようにこちらを見てくるベシュですが私は笑いながら刃を振るうのをやめません。
振るわれる刃は建物の残骸を切断、というさ潰しながら私を中心にしてその破壊の爪を披露していきます。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ベシュの悲鳴と僅かな抵抗を魔ノ華の刃に感じながらも私は刃を振り抜きそして、
ドラクマの街を半壊さしたのでした。