あ、やばい気がします
ドラクマ兵の参入によりすでに街中は大混雑となっています。
いたるところでエルフと冒険者や騎士が戦いあっておりさまざな音が響いていました。
「この調子ならば楽に抜けれますね」
『だね』
ゼィハが不思議な短剣を振るいエルフ達の姿勢を崩したところに私が魔ノ華を伸ばし貫くというのは非常に効率的な戦法でした。
しかし、退屈です。私は魔ノ華の切っ先を敵に合わせて伸ばしたらいいだけなんですからね。
それに比べてゼィハの不思議な短剣を楽しそうに振り回しています。
「……ゼィハ、武器変えてください! そっちの方が楽しそうだし!」
「えぇ? 大事に使ってくださいよ?」
私が手を出すと嫌そうな顔をしながらも不思議な短剣を手に乗せてくれました。私はそれを受け取ると代わりに魔ノ華をゼィハに渡します。
「ふふ、この魔剣にも興味がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
ゼィハが魔ノ華を手にした瞬間、まるで重いものを持ったかのように崩れ落ち、柄を握っていた腕が地面にめり込んでいます。
「なにしてるんです?」
「重ぉ⁉︎ なんなんですかこの重さ! というかなんでこんなの振れるんですか⁉︎」
信じられないものを見るかのように私を見てきます。
とりあえず腕がめり込んでいる中、ゼィハは|魔ノ華をから手を離しとりあえずは腕を保護したようでした。
「なんなんですか、あっさりと持って」
「いや、そう言われましてもね」
そんな恨めしそうな瞳でみられましてもね、特に重いわけでもないんですからしかたありませんよ。
『魔剣や聖剣は契約者以外には扱えないことが多いからね〜 そのせいじゃないかな?』
「なるほど」
つまりはぽちは一応契約者としては認めているわけなんですね。
そして次は私がゼィハから借りた不思議な短剣を試す番です。
この短剣の間合いが長いことがわかっているエルフ達は距離を詰めようともせず武器を構え警戒しています。そんな中、私は無造作に無警戒に一歩を踏み出し不思議な短剣を力任せに横薙ぎに振るいます。その動作を見た瞬間にエルフ達は武器を眼前に立てるようにし身構えます。
「いっけぇぇぇ……ぇぇえ?」
しかし、私は不思議な短剣を振り切った姿勢のまま固まり間抜けな声を出してしまいました。
私が声を出した理由。
それは不思議な短剣が全く伸びていなかったからです。首をかしげながらも私は何度か振るいますが全く伸びません。
そのうちに伸びないことに気づいたのかエルフ達もジリジリと距離を詰め始めてきました。
「ゼィハ、これ伸びないんですけど」
「あー、古代魔導具も相性みたいなのがありますからね。だからかもしれないです」
そう言えば古代魔導具も相性があるんでしたね。つまり、今私の手の中にあるのは唯のナイフということですか。
「はぁあ!」
剣を振りかぶり襲いかかってきたエルフに魔ノ華が地面にめり込んでいる状態なので手にしていた使い物にならない不思議な短剣で迎え撃つ羽目になります。
金属がぶつかる音が響き、同時に私は冷や汗を流します。魔ノ華と同じように受けようとして刀身の短さを考えていませんでしたね。危うく腕を切られるところでした。
あと響いた音が微妙に金属の悲鳴のようだ音も含んでいましたね。あんまり受けない方がいいのかもしれません。
などと考えている間にもエルフは剣を振るいこちらを攻撃してきます。その度にイヤーな音が私の持つ不思議な短剣から聞こえてきます。
「あ、やばい気がします」
「死ね!」
振り下ろされた刃にこちらの刃を打ち合わせるように叩きつけ、瞬間に刀身を少し倒して剣を滑らし勢いを殺します。するとエルフへわずかに姿勢が崩れ、隙が生まれます。私はそんなエルフへと一歩踏み出し、肉薄するとただのナイフと化している不思議な短剣を首筋へと突き刺します。暖かな赤い雨を降らしながら力が抜けたエルフの体を蹴り飛ばすとこちらに向かってきていたエルフにぶち当てますが死体を当てられたエルフは怯みもせずに武器をこちらに突き出してきました。予定とは違いましたが切っ先を不思議な短剣で受け止めると何かが割れるような音が鳴り上がり、不思議な短剣は柄だけを残し刀身が粉々に砕け散ってしまいました。
「あ」
声を上げていると突き出された武器が私の腕に当たり痛みが走りますがエルフの服越しなので突き刺さりはしませんでした。ですが痛くてイラついたので柄だけとなった不思議な短剣を握りしめるとそれをエルフの側頭部に向かい叩きつけます。
「あがあ⁉︎」
意識が朦朧としフラついているエルフの首筋に向け、今度は短剣を持たない方の手で掌打をたたき込み意識と人生を刈り取ります。
「ふぅ、まさか砕けるとは」
額の汗をぬぐいながら刀身のなくなった不思議な短剣を手元で遊び、ゼィハの方へ振り返ります。
「ごめん、壊れちゃった」
『壊したの間違えでしょ?』
「些細な問題ですねって、ゼィハ?」
「…………」
一切のリアクションを取ってくれないゼィハを不思議に思い近づいていくと彼女は顔を真っ青にし、口から泡を吹いたまま
気絶していました。