バリバリの呪いの武器ですよ
「じじいめ!」
私が吐き捨てるように言葉を出すと長老ローはニヤニヤと笑います。あの笑みは昔からとてつもなく勘にさわるものです。
「フォフォフォ、どうじゃ、わしの愛用武器モーニングコーヒーの味は」
長老が手にしていた手にしていた鎖付きトゲトゲ鉄球、モーニングコーヒーを満足げに撫でながら告げます。明らかにいたそうなんですがね。
そしてなぜだかあの武器、とても美味しそうな響きな武器ですね。
「まぁ、ぶっ飛ばされましたね」
私じゃなくてアリエルがですが。目が耄碌してきているんでしょうね。
「なんでお前は吹っ飛んどらんのじゃ!」
「いや、当たってないからですよ」
子供のごとくおこる長老を半顔で見つめながら私はため息をつきます。
「リリカさん、あれ、あれなんですか?」
ゼィハが私の服を摘みながら長老の方へと視線を向けます。あれってあなたもかなり失礼ですね。
「恥ずかしながらあれがエルフ族の長老ですよ」
「え、あれがですか? なんかダークエルフの長老て似たような感じがしますね」
聞きたくない情報でしたよ。両エルフの長老というのはもしかしたら頭のネジがぶっ飛んだ輩がなる罰の称号だったりするのかもしれませんね。
「なにをボソボソしゃべっとるか!」
目の前で隠し事をされたのが気に入らないのかまたもご老人が吠えます。
「はいはい、シェリー、素早く逃げてくださいね」
「わ、わかりましたわ」
返事をしたシェリーが慌てながらもアリエルが埋もれている瓦礫の山へと向かっていきます。それを見届けた後に私は腰のぽちではなくナイフを引き抜き人質の首に突きつけます。
「長老、私とても急いでいるのでそこをどいていただけると……」
「ひいぃぃぃキョォォォォォォォォナリィィィィィァ!」
奇声で私の声を遮りながら長老は愛用の武器、鎖付きトゲトゲ鉄球を私に向かい放ってきました。
「「えっ?」」
人質と私の声がきれいに重なり呆然とした声が空に吸い込まれていきます。
そんな私たちを他所に鎖付きトゲトゲ鉄球はトゲトゲ鉄球から魔力を放出さしながら私と人質に向かい風を唸らせ迫ります。
「やば!」
「うわぁ!」
とっさに危険を感知した私は人質を迫る鎖付きトゲトゲ鉄球へと突きとばします。
鎖付きトゲトゲ鉄球の前に躍り出るように突き飛ばさた人質に長老の攻撃は容赦なく突き刺さり、胸から鈍い音が響いていました。そして次の瞬間、突き飛ばされたかのように元人質は宙を舞い、恐ろしいまでの速度で後ろを付けてきていた二人組のエルフを巻き込み建物へと叩きつけられ先ほど同様に崩壊さしていきます。
長老が鎖を振るうと鎖付きトゲトゲ鉄球はまるで意思を持つかのようにジャラジャラと音を立てながら長老の手元へと戻っていきました。
「相変わらず同族にも容赦ないですね」
「おぬしがこちらに突き飛ばしたんじゃろが!」
突き飛ばした私より吹き飛ばした輩の方が悪いと思うんですがね。吹き飛ばされたエルフは運が良ければ生きてるでしょう。一応エルフの服を着てるわけですし。
「というかジジイ、あなたこの前見せびらかしてた剣はどこにやったんです?」
あの爺さんは私が里を出る前に確かバカみたいに高い剣を買って長老の奥さんに怒られていたはずです。物理的に。
「あ、あれは……た」
今まで威勢良く喋っていた長老ですが最後の方が声が小さくてなにを言ってるかわかりませんね。
『きこえないね』
「はい、大きな声で言ってください」
「……なんですかこのコンビ」
呆れたような目でゼィハが見てきます。でも知らないことのほうが気持ち悪いじゃないですか。
「妻にとられたんじゃよ! あの武器持ったらあいつ強くて取り返せないのじゃ!」
「……ああ、なるほど」
怒鳴りつけるかのように叫ぶ長老を見て私は納得します。長老の奥さんやばいくらい強いですからね。普段はおっとりとしている人なんですが一度キレると手のつけられないような狂人となりますからね。なにせ素手で長老を半殺しにするような人ですから。敵には回したくない人です。
「じゃから、今回の遠征にはお古を持ってきたんじゃ」
「……お古の割にはやたらと禍々しくありませんか?」
鎖付きトゲトゲ鉄球の形状がではなくその武器そのものがやたらと禍々しいどす黒い魔力を放っているのですよ。
「あー、なんだったかのぅ。確かぶっ飛ばした輩の恨みなどがこびりついたりしとるとか言っとったかのぅ」
バリバリの呪いの武器ですよ。それ。
「まぁ、問題ないのじゃ、ブッコロセバイイダケダシ」
『なんたか魔物みたいな喋り方になってない?』
くーちゃんの言う通り語尾が怪しいですよ長老。
なんだか怪しげな感じになりつつある長老に警戒しつつ、私は大きくため息をつくのでした。