涙ぐましい努力ですね
今日から連載再開!
「で、隠れるのってしんどくないですか? さっさと出てきてくれるとありがたいんですが?」
ぽちを振るい刃についた血を払いながら私は隠れているエルフ達に告げます。
「やはり気づいていたか」
建物の陰からエルフの里で作られた服を着た奴らが三人出てきます。ふむ、何人かは出てきましたがまだ何人か隠しておくんですね。相変わらずズルイですね。
「で、あなただれです?」
「は? 知り合いじゃないんですか?」
ゼィハが目を丸くしながら私に尋ねてします。
「私の知り合いにいきなり襲ってきたり、隠れて監視するような輩はいません。あと友達いませんし」
『……リリカ。そんな堂々と言わなくても』
「リリカさん……」
「なんでそんな目で見られるですか」
なぜかくーちゃんとアリエルに凄く憐れまれるような視線を向けられました。アリエルは何も言いませんがなぜか目元をハンカチで拭っていますね。
「く、里でも一人だったが外でも一人とは」
「哀れなり、リリカ・エトロンシア」
「ぼっちぼっち」
なぜか襲撃者側からも涙ぐんだような声が聞こえてきます。なんなんですか、一人の何が悪いというんですか。
「あー、同情はどうでもいいんですが、さっきも聞きましたがあなた達だれです?」
「なんだと!」
「私たち三人をわすれたなんて!」
「よくもぬけぬけと!」
何やら怒り出しています。
と言われましてもぬ。エルフはみんな金髪碧眼ですからよくわからないんですよね。
「どうやら私の知り合いのようですね」
『他人事すぎる……』
「知らない人に知ってるかのように振る舞う方が失礼ですよ。で、早く要件を言ってくださいよ。私たちエルフから逃げるのに忙しいんですよ」
「その逃げる対象であるエルフと話してる時点でおかしいことに気づいてください……」
言われてみればそうですね。では、
「切り捨てるとしましょう!」
困った時は大体暴力でいけますからね。
ぽちを構えエルフ三人組へと刃を向けます。
「む、長老の教えたる『世の中は暴力と金でなんとかなる!』という教えを忠実に守るとは!」
「ならば我らも!」
「武を持って復習するまで!」
口々に叫びながら剣を、槍を、
斧を構えてきます。なるほど復讐が目的でしたか。
「復讐ならそうと言えばいいものを。まどろっこしい。それにですね。時間がないんですよ」
ドラクマ兵との戦いが激しくなってきているのか剣戟の音が私の耳に入ってきます。エルフは少数ですが人間とは練度が違います。数で勝るドラクマでも勝てるか微妙なところです。
しかし、この場だけで言えば古代魔導具を使うゼィハと肉体系のアリエル、そこに私が弓で支援すれば容易く切り抜けれるでしょう。
完璧です!
「だからとっと掛かって……」
「やめなさい!」
「あだぁ!」
挑発を続けていると頭を叩かれます。
ぽちを片手に持ち頭をさすりながら振り返ると首を横に振るシェリーの姿がありました。
「今の私は魔力がないんですよ⁉︎ あなたとゼィハさんだけでなんとかなりますの⁉︎」
ああ、そういえばそうでした。
「大丈夫ですよ、ゼィハがいますし……」
「あ、あたしも魔力がもう残り少ないからあんまり戦えないよ?」
「……」
元気に手を上げてきたゼィハをジト目で睨みます。
予想外に二人とも役立たずでしたか。最後の希望と思いアリエルの方へと視線をやるとアリエルと目が合いました。
「お嬢様を守るので手がいっぱいなので」
「言うと思ったよ!」
この方も使えないとは……
「というかあなたに怨みのある方々なんですからあなたがなんとかするのが筋でしょう?」
「……ごもっともな正論で」
仕方なしに一人で戦う羽目なった私はぽちを魔ノ華へと解放さすと隠れているエルフ達がいる方へと黒靄を飛ばしていきます。
「なんだこれ!」
「魔力が吸われていくだと⁉︎」
私から姿は見えませんが背中の魔力の羽根が膨れていくところを見ると順調に魔力を吸い取っているようですね。
それならばやりますか。
「あ、手加減入ります?」
「「「バカにするなよ!」」」
綺麗に声を合わせて反論されました。息はぴったりのようですね。
「我々は」
「ベシュ様のように」
「一対一では戦わない」
「まぁ、あれは頭が悪いですからね」
あれはやたらと体裁に拘るやつだすからね。だから裏をかかれて負けるんですが本人は気づいていないようですし。
「ゆえに」
「我々は」
「貴様に」
「「「三人で挑み必ず勝つ!」」」
『息ぴったりだねぇ』
くーちゃんの場違いな感想に私も頷きます。きっと幾度となくかぶらないように練習したんでしょうね。
「涙ぐましい努力ですね」
取り出したハンカチで目元を拭います。無論演技です。涙なんて一滴も出ていませんよ。ハンカチはおまけでついでに取り出した全てを弓矢にを装着します。
「リリカ・エトロンシア」
「我々の怨み」
「はらさせていただきます!」
「はぁ……」
武器を構えた三人がそれぞれ大地を蹴り私の方へと距離を詰めてきます。
「「「我々の最愛の人を奪った罪を贖え!」」」
叫びながら突っ込んできた三人へ私は魔ノ華を構えます。
……まずい、微塵も心当たりがありません。