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エルフさんが通ります  作者: るーるー
大破壊編
133/332

前より強くなってません?

 魔力をガンガンと消費しながら私は駆けます。くーちゃんはゼィハの肩に座っています。魔ノ華(マノハナ)を使っている時の混戦ではくーちゃんの魔力も吸い取ってしまうことがあったので念のためにです。すでに私の右手には全てを弓矢に(オールボゥ)を嵌めてありますし戦う準備は万端です。

 ゼィハはというと風魔法が付与されたブーツを履いているとのことなので問題なくスピードを上げる私についてきていました。

 さて、残りの一匹ですが……


『少人数でツッコむなんて英雄みたいだね!』


 なんてのんきなことを言ってます。

 この大精霊はいつまでついてくる気なんでしょうか?


「いつまでついてくる気です?」

『わたしがどこかにいるのに理由がいるの?』


 なぜかイラっとしたので無造作に魔ノ華(マノハナ)を振るいます。無論当てる気で。

 ですが腐っても大精霊。魔ノ華(マノハナ)が当たる寸前に体を反らし容易く回避しやがりました。


『あまいあまい』


 切りつけられたのにも関わらず楽しげにイフリュートは笑います。

 こいつ、腹立ちますね。

 空を切った魔ノ華(マノハナ)を手元へと戻し私は憎々しげに空を漂うイフリュートを睨みつけます。

 いや、もう気にしないでおきましょう。気にしたら負けな気がします。


『やーい! バーカバーカ!』

「キィィィィ!」


 負けとわかりますが腹が立ち、魔ノ華(マノハナ)を振る回します。


「リリカさん、遊ぶのもほどほどに……」

「遊んでません! 本気です!」


 そう、これはエルフの尊厳を守る戦いでもあるのです。このむかつく聖霊を叩きのめすのに理由がいりますか? いや、いるはずがない! むかつくというのはそれだけで害悪ですから!


「そろそろピリァメイスの兵が見えてきましたよ」

 

 そうですね。馬鹿に構っている場合ではありませんでした。

 視線を前に向けるとそこにはメイスを振りかぶりドラクマの冒険者や騎士と戦っているピリァメイスの兵が見えてきました。


「このイライラを解消するのを手伝ってもらうとしましょう!」

『八つ当たりだ!』


 くーちゃんの言葉は正解です。

 今のは私はかなりイラついてますからね。

 魔法のカバン(マジックバック)から取り出した槍をすぐさま銀の矢へと変えると魔ノ華(マノハナ)を弓の形へと変えます。

 銀矢を番え、今全身に纏っている魔力を弓形態の魔ノ華(マノハナ)へと注ぎ込みます。

 銀矢にどす黒い風の魔力が纏わりつき今までに放ったことがないほどの密度へと変わります。


「抉り抜け!」


 掛け声とともに矢を放ちます。

 矢は黒い線引き魔力を放ちながら宙を疾りピリァメイスの兵士を纏めて射抜きます。さらには射抜いた兵士が小規模な魔力爆発を引き起こし被害が広がっていきます。想像以上ですね。そして心なしか私の心もスッキリした気がします。


「なんという威力ですか……」

『前より強くなってない?』


 絶句したように固まるゼィハ。確かにくーちゃんが言ったように以前より強くなってる気はしますね。


『そりゃ、魔の剣なら当然でしょ?』

「どういうことです?」


 イフリュートの言葉が引っかかった私は嫌々ながらに尋ねます。

 そんな私の顔を見たイフリュートはにやりと笑います。ちっ、いらつきますね。


『教えて欲しかったらわたしへの今までの暴言の数々を土下座して謝りなさい!』

「却下です。さ、ゼィハ行きますよ」


 どうせそんなことだろうと思いましたよ。というかたかだか暴言で土下座とは器が知れますね。大精霊は。


『リリカ、リリカも暴言吐かれたら怒るでしょ?』

「何を言ってるんですかくーちゃん。私は暴言程度では怒りませんよ」

『本当?』

「ええ」

「そうですね。短い付き合いですがリリカさんは怒らないと思いますよ」

『そうかなぁ?』


 ゼィハ、よくわかってますね。そうです。私は心の大きなエルフ。例えるなら見たことはないですが海! 広いと本に書かれていた海のように広大な心を持っているのですから。


「リリカさんなら笑顔で暴言を吐いた輩を地面に沈めますよ」

『あ、それっぽい』

「おい!」


 私はあなた方の中ではどれだけ短気なんですか。こんなに温厚だというのに。


『ち、ちょっと人の話を適当に流さないでよ!』


 自分の話を無視されたと思われたイフリュートが慌てたように会話に割り込んできます。


「なんなんですか、あなたは却下と言ったでしょう? 構ってちゃんですか? それとあなた人じゃなくて精霊でしょ? 言葉はちゃんとした用法で使ってくださいよ」

『キィィィィ!』

 わざとイラつかせるような口調でイフリュートに声をかけます。案の定なことにイフリュートは炎の大精霊であるにもかかわらず顔を真っ赤にし、私と同じような奇声を上げながら背中の炎の翼を轟々と勢いよく燃やしていました。


「余裕ですね」

『いつものことだよ』


 私たちは未だ、敵軍に向かい駆けながらくだらない言い合いを続けるのでした。


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