小さな物を見る兵器
『汝、右の頬を叩かれたら相手が立つ意欲を失うまで殴るべし by長老』
ええ、長老。
つまりはやられたら今後舐められないように徹底的にやれということですね。
こんな感じに、
「おら、とっと死になさい!」
『こわっ!』
「傷つけられるとキレるタイプでしたか」
後ろから色々と声が聞こえてきますが今は無視します。
ひたすらに自身の魔力を駆使しひたすらに風矢を放ち続けます。
私の手元を離れた風矢は乱戦で身動きが取れない前衛組を敵味方関係なく吹き飛ばしてきます。
絶えず矢を放ち続け、聞こえるのは敵味方の相互の悲鳴だけです。
「ざっけんな!」
「この破壊エルフが!」
戦場の方からやたらと罵声のような声が聞こえてきますが、私には聞こえません。ええ、聞こえませんとも。
矢筒に入っていた矢がなくなると私が次に取り出したの全てを弓矢に。それを素早く装着すると魔法のカバンから適当に武具を取り出していきます。
『リリカ〜 そろそろ攻撃やめない?』
「嫌です」
くーちゃんの頼みをあっさりと断ると私は全てを弓矢にで武具を全て銀矢へと変えます。
『いや、リリカ⁉︎ それはやりすぎじゃないかな⁉︎』
「あー、あれはなかなかの威力ですね。軽い軍なら吹き飛ばせるんじゃないですかね」
銀矢をぽちへと番え、さらには魔力を加え込みます。
「捻じれろ!」
私の声と共に放たれた銀矢は風を抉るように突き進み冒険者、騎士達を等しく吹き飛ばしていきます。
「はっはっはっ! ごみみたいですね!」
ごみくずが風に飛ばされるごとく宙を舞う人々を見て私は笑います。
手の中にある銀矢はあと三本。それらを見下ろし私は口元を歪めます。
「あと三本ですよ? がんばって下さいね!ハハハハハ!」
次なる矢を引き絞り私は笑顔で聞こえるはずもない前線に向かい矢を放つのでした。
五分後
「外道とはあなたのことを言うとあたしは思いましたよ」
「え、なんで?」
死屍累々となった戦場を私とゼィハ、くーちゃんの三人で前線へと移動を開始します。
私の周りにいた後衛組はというと高笑いしながら矢を打ち続ける私から距離を取り、矢を射ったり魔法をはなったりしています。そう、未だ戦争は終わっていないのです。
私たちの前の方では未だ前衛組が汗臭く働いていることでしょう。
「ぷぷ、泥臭い泥臭い」
『性格わる!』
「ですが、その泥臭い人たちがいないとあたし達後衛組はすぐに死んじゃうんですけどね」
まるで緊張感なく歩きます。まぁ、矢とか飛んでくるんですけどね。どれも私達とは違う後衛組の方へと飛んで行っています。
「あんなのに当たって死ぬのはやだなぁ」
別に逃げずに戦う! とかそんな心意気でいるわけではありませんが矢が頭に刺さって死ぬところを考えるとげんなりしてしまいます。
「そうですねっ! と」
ゼィハはというと私の言葉に頷きながらいつの間にか手にしていた杖ではなく小さな何かを空に向け振るっています。
それが振るわれるごとに空に光が走り、こちらに向かい飛んできていた弓矢を片っ端から焼失さしていきます。
「それなんですか?」
興味が出てきたのでゼィハの方へと歩み寄り手元を覗き込みます。
「これですか?」
ゼィハが私の前に出してきたのはメガネのレンズに取っ手を付けたようなものでした。
「これは?」
「あたしが発掘したものから作り出した古代魔導具もどきです」
「古代魔導具⁉︎」
「……もどきです」
なんでもどきなんでしょう?
「なんか凄そうなこれ拾ったんですけどとりあえず取っ手を付けてみたんです。すると小さなものが大きく見えるようになったのです」
「手持ちメガネ?」
それは便利そうですが、さっきは弓矢消し去っていましたがね。
「ある日、外で使っていたら光を集める性質があることに気付いたのですよ。それを軽く大木に向けて振るったら焼き切りました」
「取っ手つけただけで……」
よくわからない、古代魔導具よくわからないよ。
「このレンズ部分に光を当てると」
ゼィハが手にしていた古代魔導具に光を当てるようにして掲げます。レンズに光が集まり透明なレンズが蒼く輝いています。
「これで光が集まります。さらにそれをふるうと」
ゼィハが振るった古代魔導具から光が放たれた空を穿ちます。先ほどよりも光は小さなものでしたが確かにゼィハが言った通りに光はでましたね。
「名付けて小さな物を見る兵器です!」
「ほほぅ!」
ゼィハの手から小さな物を見る兵器をとると私は天高くかざします。
「こうして光を集めて!」
光が先ほどと同じように集まっているのを感じます。
『ねぇ、何してるの?』
「なにって光を集め……」
くーちゃんなら見ていたのでわかるはず。ではこの声は一体?
小さな物を見る兵器を天に掲げたまま声が聞こえた横を見ると轟々と燃える四対の炎の翼を携えたドラクマの街で泣きながらどこかに行ったイフリュートが興味深そうな顔をしながら座っていたのでした。