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エルフさんが通ります  作者: るーるー
大破壊編
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ハゲ! 頭寒くないんですかね?

「冒険者、騎士団、集合せよ!」


 戦争の出撃前に各自が自由に過ごしている場になかなかに厳しい声が響き渡ります。

 ゼィハはというと魔法の本を読んで過ごし、私とくーちゃんはというと邪ん拳(じゃんけん)と呼ばれる遊びをゼィハに教えて貰ったので遊んでいました。

 拳を握ったぐーは拳を開いたパーに弱く、パーは指二本で模したハサミのような形のチョキに弱い、そしてチョキはぐーに弱いというシンプルな遊びですが私とくーちゃんはかなりの必死具合です。


『「邪ん拳(じゃんけん)ぽん!」』


 くーちゃんと私が同時に言葉を発し、私がぐー、くーちゃんがパーを出します。つまり私の負けです。


「ぬぁぁぁぁぁ!」


 私は雄叫びを上げながら横に飛び退きます。そしてさっきまで私がいた空間をくーちゃんが風魔法を使いすごいスピードで通り過ぎて行きました。


『また避けられた!』

「これであいこですね」


 私は顔に付いた泥を落としながら避けられ、悔しそうにいうくーちゃんに向かい合います。

 邪ん拳(じゃんけん)の恐ろしいところはぐーで勝ったならパンチを、パーで勝ったならビンタを、チョキで勝ったなら目潰しを敗者に行えるということです。

 ただし、避けたらあいこ。つまりは仕切り直しです。

 先ほどからくーちゃんに負けっぱなしの私はひたすらにくーちゃんの攻撃を躱しています。


「というかくーちゃん! パーで勝ったならビンタでしょ! 体当たりとか反則ですよ!」

『違いますぅ! パーだからちゃんとビンタですぅ! 勢いつけてるだけですぅ!』


 いつからこんな悪知恵が働くようになったんでしょうか……


「リリカさん、集合らしいですよ」


 本を閉じ杖を手にしたゼィハが告げてきます。


「くーちゃん、勝負はまたの機会に」

『仕方ないね』


 二人して構えを解きこの場は納めます。

 遊びでここまで本気になったのは久しぶりですね。


「ほら、行きますよ」


 呆れた顔をしたゼィハが先に皆が集まり隊列を組んでいる場所に向け歩き出します。私とくーちゃんもその背を追いかけ列の後ろに並びます。


「なんですかね? お菓子でもくれるんですかね?」

『りんご?』

「いえ、どちらもないでしょう」


 お菓子をくれないならなぜ集められたんでしょう?


『いや、リリカ。戦争見に来たんでしょう?』

「あ、邪ん拳(じゃんけん)に夢中で忘れてましたね」


 そうでした戦争に来たんでした。完全に忘れてましたよ。

 よく見ると馬に乗ったけど騎士もちらほら見えますし戦闘前なんですかね。

 遠目に見るとかなり離れたところにも人影が見えます。


「あちらに見えるのはピリァメイス軍でしょう。おそらくは前哨戦として軽く矛を交える算段なんでしょうね」

「ああ、あれが!」


 となると指揮官当たりが挨拶でもするのかもしれませんね。

 そう考えていると一際高くなっているところに鎧姿の人物が姿を現しました。瞬間、空を覆っていた雲が晴れ光が差し込みます。さらにはその光がまるで祝福するかのように鎧姿の人物に降りおり、反射(・ ・)してきました


「ま、マブシィ!」


 そんなに多くはない光量ですが真正面からその光を見る羽目となった騎士や冒険者は皆手を翳し光を遮ります。

 やがて太陽が再び分厚い雲に隠れると光が収まりまともに目を開くことができました。

 そして開いた目で一番に確認したのは私にこんな目を見せた奴の顔です。

 怒りながら鎧姿の人影に目線を向けた私でしたがプっと吹き出してしまいました。


「あ、見てくださいゼィハ! ハゲ! ハゲですよ! 頭寒くないんでしょうか?」

「リリカさん、本当のことでも指をさしながらかつ笑いながらいうの失礼ですよ。プププ。あとハゲハゲ言い過ぎです」


 私の言葉に周りの冒険者たちが肩を震わして笑っています。

 なるほであの光る頭に太陽の光が当たりこちらに反射して目潰しをしてきたわけですか。


「貴様! ハゲハゲうるさいぞ!」


 壇上の鎧姿の男が頭を光らせ…… 顔を真っ赤にしながら私を見てきます。

 威張っている態度から推測するにあれがこの場で一番偉いんでしょうね。


「いいか! 俺がこの第一騎士団の指揮をとる……」


 ハゲが言葉を語る最中、再び雲が途切れ自然の目潰しが発動します。再び非殺傷の光を浴びた私達は目を閉じます。それと同時に何かが倒れる音が聞こえました。

 瞼に光があたる感じがなくなったので眼を開けると先ほどまで威張り散らしていたハゲが壇上のからいなくなっていました。


「リリカさん、姿勢を低く、頭を下げて盾があれば出した方がいいですよ。死にたくなければですが」

「ん?」


 ゼィハの言葉で彼女の方に視線を向けると彼女はすでに姿勢を低くしおそらくは魔法のカバン(マジックバック)から取り出したであろう盾を頭上に掲げていました。とりあえず言われた通りに私も魔法のカバン(マジックバック)から先ほど頂いた盾を取り出し掲げます。


「だ、団長⁉︎」

「敵襲! 敵襲だぁぁ!」


 慌てたようなおそらくは騎士たちの声と共に私の掲げる盾にもカツンカツンという音を響かせて何かが当たり落ちてきました。

 盾に当たり地面に落ちてきたのは弓矢、つまりは


「あ、戦争始まったんですね」

『軽いなぁ!』


 どうやらピリァメイスとドラクマの戦争が開戦されたようでした。

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