地上へもどりましょう
幾度振り回してもぽちは魔の破片吐き出しません。まぁ、魔王復活に必要なものなのかわからないですが一応、ぽちの中にあれば回収した程にはなるでしょう。
「仕方ありませんか、さて、では行きましょう」
「そうですね」
すでに研究資料などを集めたゼィハは自分の魔法のカバンに放り込み終えたのか手には細かな紋章を装飾した杖のみです。
「軽装ですね」
「魔法使いですし、あたしは古代魔導具を使いますので」
ゼィハの白い服、腰回りにはベルトに吊るされた幾つものよくわからない者が吊るされています。
「全部、古代魔導具ならすごいですね」
私とゼィハが笑いながら扉の方に向かいます。
「あ、言い忘れてました。私はリリカと言います。あと相棒のくーちゃんです」
「ああ、リリカさんの精霊だったんですね。自然精霊がこんなところにいるとはおどろいていたしたの」
くーちゃんは小さくゼィハに向かいお辞儀をしています。それに対してゼィハも笑顔で頭を下げていました
ああ、やはり見える人でしたか。
「ちょっと! 私を無視しないで話をすすめないでよ!」
なぜか怒っているベシュが私たちの行く手を遮ってきます。
「なんですかただの同行人」
「パーティ! パーティだから!」
なんなんですかね? このやたらと仲間意識を持ちたがる生き物。
「どうやってこのダンジョン抜けるのよ? かなり時間かかるわよ?」
確かに、ここに来るのにもかなりの時間を費やしましたしね。
なにか手段はないのかとゼィハの方に目を向けます。
「期待の眼差しを向けてくるのはうれしいのですが、残念ですがあたしが使える転移魔法は一人しか移動できないのです」
「ですよねぇ」
転移魔法は連れて行く人数によって消費する魔力が変わると聞きます。大人数を一気に移動さす転移魔法をあっさりと使ったシェリーの魔力容量が異常なのですよね。
となると帰るための手段ですね。
「ぶち抜きますか」
『え……』
私がボソリと呟いた言葉にくーちゃんが反応してきます。
『ぶち抜くってなにを?』
「何ってい……」
私は天井を指差します。
「天井?」
おそらくはこのフロアに充満する高密度の魔力を全て魔ノ華に喰わせそれを魔力弾として放てば地上までは穴を開けることができるでしょう。というかベシュにできて魔ノ華を使った私にできないはずがありません。
「ちょ! 本気⁉︎ 」
ベシュが慌てたように腰のぽちに手を伸ばした私の腕を掴んできます。
「いや、多分できそうですし、それとももっと手っ取り早く地上に戻る方法ありますか?」
「むぅ」
特に代案がないのかベシュが黙り込みながら私の腕を離してきます。
「行動が過激ですねぇ」
ゼィハはなぜか楽しげな声色で呟きます。心なしか頬を紅潮指しているところを見るとやっぱり破壊衝動とかもある狂人なのかもしれませんね。
「じゃ、ぶち抜きますよ」
腰のぽちを抜き、即座に魔ノ華へと形を変えさします。
「ん?」
いつも通り黒靄を纏う漆黒の刃へと変わった魔ノ華ですがいつもより明らかに魔力の密度が上がっています。魔の破片を食べた反動ですかね?
それ以外は特に目立った変化が見られませんが軽く振るい具合を確かめます。
うん、問題ありませんね。
「悪食」
特殊能力を発動させフロアに漂う魔力を一気に喰らい尽くすように命じます。
黒靄が走り、扉から出て行くと私の背中から黒い魔力の羽が突き出始めます。
みるみる巨大化していく羽を確認し、魔ノ華に、そして私の体の中に魔力が集まり始めているのがわかります。
「こんなものですかね」
魔力が魔ノ華の刀身に見えるほどの密度でまとわりついているのを確認した私は呟きます。
「穴をぶち抜いたら一気に駆け上がりますよ」
「余裕です」
「楽勝よ」
ゼィハとベシュがそれくらいは簡単と言わんばかりに頷いてきます。ガルムの方を見れば気絶したオーランドを肩に担いでいるところでした。まぁ、ガルムなら楽勝でしょうね。
「じゃ、いきますよ」
羽と化している魔力をただでさいち溢れだしている魔ノ華へと集中、超高密度の魔力の塊と化した魔ノ華を両手で構えます。
「てぇい!」
掛け声とともに天井に向かい跳躍、さらには体を捻り魔ノ華を天井へ向け振るいます。
瞬間、圧縮されていた破壊的なまでの魔力が黒い輝きを放ちながら天井へと叩き込まれました。
音は響かず、天井を溶かすようにして魔力が地上へ向かい突き進んでいきます。岩盤をぶち抜き、発生する瓦礫すら消し飛ばして行っているのか作り上げた穴からは瓦礫が全く落ちてくる様子が見られません。
「本当にぶち抜いたの?」
私が魔ノ華で開けた穴を覗き込むようにして言ってきます。
「上から光が見えますし大丈夫でしょう。いきますよ」
魔ノ華に残っている魔力と自分の魔力を使い身体強化を施した私は一気に穴に向かい飛び上がります。
下を見ると同じように身体強化の魔法を使い跳躍してくるゼィハとオーランドを担いだガルムの姿が見えました。
「ま、まちなさいよ!」
情けない声を上げるベシュを無視しながら私は壁を蹴り地上を目指すのでした。