表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフさんが通ります  作者: るーるー
大破壊編
108/332

マナーを守れ、バカ娘

「刺激が足りない」


 ダンジョン二層に入ってどれくらい時間が経ったかはわかりませんが私はすでに退屈でした。


『リリカ はいつも不満ばかりだね』

「くーちゃん、冷静にツッコミを入れないでください」


 ええ、これが理不尽な苛立ちなのはわかっていますよ。

 ですが進む先々で出会うのは魔物の死骸ばかり。傷口を見る限りでは真正面から切り捨てられたようなものばかりです。


「確実にベシュですね」


 見れば両断されているものもありますし、ベシュのもつ大剣で彼女の技量ならこの程度は楽々とこなすでしょう。しかし問題はそこではありません。


「ベシュが楽に殺せる魔物ならば私が殺せないはずがありませんからねぇ」

『相変わらずの自信だなぁ』


 くーちゃんのあきれたような声に私は肩をすくめることで答えます。事実ですからね。まぁ、ベシュや他のエルフに勝つためには卑怯な方法を使わないと勝てないのが問題ですが。正義の味方ではないのでエルフ(彼ら)に卑怯極まりない戦法をとったところで微塵も良心は痛まないわけですが。


「そうなるとこのダンジョンの楽しものではないのかもしれませんね」


 足元から僅かな振動を感じながら私はため息をつきます。

 あの戦闘狂いたるベシュのことです。隠れるという選択肢はないでしょうし出てきた魔物を片っ端から狩り殺しているのでしょう。遭遇したくはないものです。

 たまに現れる魔物も何故か怯えているかのように私を見ると逃げ出していきます。


 どんだけ暴れてるんだあのバカは!


 何とも言えない怒りが私の体の中に湧きあがり自然と歩く速度が上がっていきます。

 これ以上あのバカもに好き放題させていると私が全く楽しめません。

 そう結論付けた私は何故か楽し気な雰囲気を醸し出している妖刀を鞘から抜き放ちます。


「この場でお前を使うのは非常に不本意ですがこれ以上私はストレスを溜め込みたくはないんですよ」

『どこにもストレスになる要素ないよね? むしろ進の楽だよ?』


 楽なことはいいことだよ、と言わんばかりの表情を浮かべていますが私はストレス不服なんですよ。

 妖刀で何度も素振りを行い怒りを発散させようとしますが今市うまくいきません。

 ええ、これは八つ当たりです。


「とりあえずは目の前をバカみたいに暴れ続けているベシュを追い抜くとしましょう魔ノ華(マノハナ)


 刀身が一瞬にして漆黒へと変わり魔力の羽が洞窟内を舞い、一気に濃厚な魔力が満ち背中に黒い羽が生えたところで準備完了。


悪食グロリス


 さらに魔ノ華(マノハナ)の固有能力である悪食グロリスで刀身はすぐさま霧散。

 黒い靄へと姿を変えると私の周囲を漂い始めました。


「魔力を奪いなさい。私は駆け抜けるから」


 そう黒い靄に命令を下すと靄は一気に拡散していきます。同時に背中の魔力で形成されていた羽がドンドン大ききなっていっています。

 どうやら見えていないだけかなりの数の魔物が周辺にいたようで一気に私に魔力が流れ込んできているようですね。

 これだけの魔力があれば十分でしょう。軽く伸びをした後に使えるだけの魔力を使い身体強化の魔法を自身へとかけます。いやぁ、魔力が潤沢にあるってのはいいものですね。


「一気に行きますよ!」


 身体強化の恩恵を受けた私はダンジョンの床を蹴破るほどの勢いで駆け抜けます。

 どうやらこのダンジョンとおう閉鎖されかけている空間では魔ノ華(マノハナ)の能力である悪食グロリスはかなり強力です。逃げ場のない限定された空間においては無敵とも言える強さですね。

 魔力を消費し続けても即座に回復。

 風を切るように駆け、幾人もの先行している冒険者達を追い抜いて行きます。魔力を吸われ弱った魔物、そして同じ様に弱った冒険者。

 魔物はすれ違いざまに魔ノ華(マノハナ)に靄を一時的に刃へと戻し切り裂いて行きます。


「これは想像以上にサクサク殺れますね」

『魔剣すごいねぇ』


 私の肩に座ったくーちゃんがのほほんと告げます。

 いや、確かにこれは楽です。

 いまだかつてないほどのスピードを保ったまま私はダンジョンを駆け抜けていきます。やがて私の前方にやたらと大きな声を上げながら破壊をバラまき続ける奴の姿が目見えました。


「おい! ベシュ! 後ろからリリカが凄い勢いで来てるぞ」


 体験を振り回して暴れているベシュを後ろから見守っていたオーランドが慌てたようにベシュへと声をかけていますね。対してベシュはというと全身を魔物の返り血で染めながら私の方へと振り私の姿を見確認したのか顔に満面の笑みを浮かべています。


「リリカいた! 今度こそ勝つんだから!」

「ダンジョンでのマナーを守りなさい。バカ娘!」


 愛剣たる大剣を構えて私を迎え撃とうとしているベシュに対して忌々しげに言葉を投げつけます。芸劇しようとしてるようですがそううまくいきますかね?

 スピードを落としことなくそのまま私は突っ込みます。当然戦闘狂たるベシュは反応に。狭い通路の横を駆け抜けらるのを阻止するべく横なぎに大剣を振るってきます。対して、私は足に力を入れ跳躍、横なぎの斬撃を躱し、高速旋回していく刃に軽く足を踏み入れ乗せ再跳躍を行います。身体強化魔法に魔力をかなり注ぎ込んでいるからこそできる芸当ですね。

「まだまだ!」


 ベシュの叫びとともに旋回していた大剣の刃が静止。恐らくは膂力で無理やり停止させたのでしょう。なんて馬鹿力!


「テリャァァァァァァァァァ!」


 雄たけびを上げながら大剣を引き戻し、宙を舞う私に照準を合わせると全身の筋肉を使い再び構えを取ってきています。あれはなんの構えですかね?


「空中なら逃げられないでしょ!」


 頭が回らないなりには頭を使ってきたようです。

 空中に漂う私に向かい、勝利の笑みを浮かべながらベシュは大剣を突き出してくるのでした。


他人の獲物をとらない。これはダンジョンルール。乱獲だめ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ