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エルフさんが通ります  作者: るーるー
大破壊編
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いさ、ダンジョン!

「やってきました! ダンジョンです!」


 ですーですー。

 私の声が洞窟内に反響していきます。何度も自分の声が聞こえてくるというのはなかなか奇妙なものですね。


「というわけで行きますよ」


 先程叩き潰した男のパーティから譲り受けた彼らが書いた地図を広げながら私はウキウキとしながら歩みを進めていきます。


『リリカ、あれは譲り受けたとは言わないよ? 強迫だよ?』

「だれも寄越せなんて言ってないですよ? 穏便に下さいと言ってみただけです」

『男の首に刃を突きつけてたじゃない』


 はて、そんなことありませんがね。

 ただくれないと手元が狂うかもしれないと言っただけです。断じて脅迫ではありません。


「しかし、ダンジョンというか完全に洞窟にしか見えませんね」


 周りを見渡してもむき出しの岩、岩、岩。

 ただのそれなりの人数が通れるほどの穴にしか過ぎませんね。


「なぜか明るいんですが」


 普通こんな洞窟は入り口近くだけが明るいものですがすでに振り返っても入り口が見えないくらいになってもまだ明るいというのなにかあるんでしょう。


「精霊の気配はありますか?」

『とくにないけど、なんかじわじわするよ』

「じわじわですか」


 また曖昧な表現が来ましたね。

 しかし、頭の隅に残しておいて損はなさそうですね。

 とりあえずはと、手にしていた地図に目をやります。

 これ、どれくらいの距離なのか全容がわからないんですよね。わかるのは分かれ道が出た時にどっちに行けば何があるかということくらいですし。


『これ地図じゃないよね?』

「それは彼らに言ってください」


 地図を作る能力が皆無ですね。まぁ、気休め程度でしょうし。


「この地図もどきを見ている限り現在確認されているダンジョンの階層は七とありますね」

『それってすごいの?』

「さぁ?」


 今ほど知識って大事だなぁと思ったことはありませんね。

 それよりもさっきから気になってたんですが、


「ダンジョンって魔物がでる話でしたが……」


 足元を見ると幾つもの魔物らしき死体が切り裂かれたような傷を負ってころがっています。しかも徐々に消えていっています。なんですかね、これ。


『さっきの矢じゃない?』

「ん? ああ!」


 確かに男に放った暴 風 矢ストームウィンドアローは確かに肩を貫通して洞窟内に飛び込んでいきましたがそれに巻き込まれたというわけですか。

 なんというか不憫な奴らですね。私達は楽ですが。


 死体のある疑問は氷解しましたがなぜ死体が消えていくのかは分からないままザクザクと進んでいきます。

 時々冒険者らしき死体もころがっているいましたが運が悪かったと諦めてもらいましょう。来世とやらがあるのであれば幸せになれるよう祈りましょう。五秒ほど歩きながらねですが。

 死体がようやく足元に見えなくなったところで壁に放射状のヒビを入れたままおそらくは私が放った矢が深々と突き刺さっていました。

 結構な威力だったようですね。

 引っ張っても抜けないので回収は諦めて地図に目を落とします。


「右っと」


 左は行き止まりらしいので右に向かいます。なんとなくですが生き物の気配もしますしね。

 一応は警戒して魔法のカバン(マジックバック)から弓を取り出すと背中に背負い、いつでも使えるようにし、妖刀を吊るしているのとは反対に矢筒をつけます。ようには鞘から抜いておきいつでも不意打ちに対応できるようにしておきましょう。


『冒険者ぽいね!』

「私も今初めてそう思いましたよ」


 逃げたり、死にかけたり、泥棒したり、仲間を見捨てたり……


 なんだか考えてみたら全く冒険者らしいことしてませんよね? むしろなんでしょう。悪役のような立ち位置にいる気がするんですが……


『やり口が外道だからね!』

「……」


 私の思考を読んでいるのかと尋ねたくなるくらいにくーちゃんはピンポイントでついてきます。

 そう考えるとたまには人助けをした方がいいのでしょうか?

 でも実りにもならないのに人を助けても大していいことありませんからねぇ。


 結論。私らしくないので無償で人助けなんてしません


 うんうんと頷きながら私は自身の思考に非常に満足しています。


『どうせ無償で人助けなんて私らしくない! とか考えてたんでしょ?』

「……くーちゃんは思考が読める?」


 恐る恐る尋ねます。

 すると、くーちゃんはニヤと笑います。


『思考なんて読まなくてもリリカは顔にでたり体が動いたりしてるからわかりやすいよ?』


 む、ポーカーフェイスは完璧だと思っていたんですがね。


「まあ、いいです。読まれてないなら」


 読まれていたら私にプライバシーがまったく存在しないことになってしまいますからね。さすがにそれは嫌ですし。一応は乙女ですし! 美少女ですし! …… 乙女ですし!


『そんな疑いの目を向けなくても読んでないよぉ』


 疑いの眼差しを向けるとくーちゃんが弁解するように言ってきます。


「まぁ、心を読む精霊なんて聞いた……」

『意識して聞こえないようにしているから大丈夫だよ?』


 くーちゃんの言葉に私は立ち止まり、妖刀を握る手に力を込めます。


「わ、私のプライバシーは⁉︎」

『ピャァァァ!』


 楽しげな悲鳴を上げながら逃げる精霊を私は妖刀を振り回しながら追いかけていきます。


 しばらくして捕まえたくーちゃんは笑いながら『冗談に決まってるじゃん』とほざきました。

 性格悪くなってますよねぇ。

本年はエルフさん終了。

魔王さまは昼にはあげたい

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