疲れたけど楽しみですね
「疲れた……」
ボフという音を立てながら私はベッドに倒れこみます。隣ではくーちゃんも私同様にベッドに倒れていました。
再びシェリーの転移魔法でドラクマに戻ってきた私とくーちゃんは疲れながらも宿屋へと向かい、最後の一部屋である部屋を手に入れ今に至ります。
『リリカ、本当にあんなのと手を組むの?』
ベッドを味わうようにゴロゴロと転がりながら尋ねてくるくーちゃんに私は同様に転がりながら頷き返します。
「くーちゃん、まちがってはいけません。手を組むんじゃありません。共犯者です」
『……どう違うの?』
よくわらかないと言った顔ですね。
転がるのを辞め、私はベッドに座ります。するとくーちゃんも転がるのを辞めてベッドにきちんと座りました。
「言い方の問題と、共犯者のほうがカッコいいでしょう?」
『適当だなぁ』
「大事なのは楽しいかどうかですよ」
窓の外を見やると外は一面が真っ白になっています。非常に綺麗な光景です。
「まぁ、シェリーの話ではしばらくはドラクマでの戦争は起きないとのことでしたからね。新入りは新入りらしく仕事をするとしましょう」
『意外だね。ちゃんとやるんだ』
普段、私をどう見てるかわかる発言でしたね。
「くーちゃん、楽しむにはまず下ごしらえが必要なんですよ」
『下ごしらえ?』
何事も与えられたもので満足するなんて私の主義ではありません。
欲しい物は力尽くででも手に入れてやります。
「魔王復活というイベント、ひっくり返すなら後半です。ならばはじめはそれらしく振る舞うべきでしょう?」
『相変わらずな考え方だなぁ』
「あとはもらった弓の調整がてらですね」
黒の軍勢の館を離れる際にシェリーに渡された弓。大樹で作られたエルフの弓と同じような感じがしますがどちらかというと妖刀と同じような感じがしますね。
「そのためにも明日はドラクマのダンジョンに向かいますよ! 戦争が起こりそうになれば使いの者をだすとシェリーも言ってましたからね」
シェリーに教えてもらった退屈しのぎ兼新入りの仕事ができる場所、それはダンジョンです!
ドラクマの少しそれたところには魔物が出現するダンジョンがあるそうなのです。しかもまだ攻略されていない物。これはテンションが跳ね上がりますよ。
『目がキラキラしてるねリリカ』
それはそうでしょう!
ダンジョンですよダンジョン!
冒険者の花形とも呼べる物じゃないですか。確かに魔物を狩ったりクエストを受けたりするのも冒険者の仕事と言えるかもしれません。ですが私はやっぱりダンジョンに行きたいのです! だって楽しそうだし! 目指せ、一攫千金!
『行くのはいいけどどんなとこなの?』
「一応は魔王復活に必要な物があるかもしれないと噂される場所です。それは明日行く前に調べるとしましゅう」
シェリー曰く新入りに回ってくる仕事は真偽が曖昧な物が多いらしく派閥的には関係ないとのことでしたが私は二つ返事で飛びつきました。
『ダンジョンには夢と希望とあとおっぱいが詰まっている by長老』
最後も大事ですね。私にはとても必要です。夢と希望と同じ位に重要です。
これは明日が楽しみですね。
『ああ、情報不足で嘆くリリカの姿が見えるよ』
「あのですね。私も流石にそこまでバカじゃありませんよ?」
呆れた口調で告げたくーちゃんを睨みつけますが彼女は気にも止めず小さな体で布団の中に潜り込むと寝始めました。
なにを言っても無駄なようなので私も服を脱ぎさっさとベッドに潜り込みます。
「ふふ、楽しみですね」
自然とにやける口元を自覚しつつ私は目をつむり明日を楽しみにするのでした。
ようやくダンジョン編