8。si
「では、お渡し致します。」
イッタは全く理解できなかった。見知らぬスーツ姿のその男の話が。病院のベットの上で、呆然となりながら、話を聞いた。そのXXXX(イッタは聞き流してしまった。)と名乗った男はイッタより年下で、何も分かっていなさそうな雇われ職員だった。
「で、ですね。昨日、ご了解をいただきましたので、こちらで処理をしておきました。」
「処理?」
「ええ。」
男は中途半端な大きさの陶器の容器を、イッタに差し出した。
……骨壷……処理?
イッタは一瞬で何もかもがわからなくなり、点滴の管を引きちぎり、その若い男に殴りかかった。後にも先にも、イッタから誰かに殴りかかったのはこの時だけだった。叫びながら男を殴った。殴りながら、ハナが死んでしまったことを理解して、もうこれ以上ハナに罵られることがないのだと安心した。安心してしまった自分を恐ろしく思いながらも、イッタは、目の前の若い男を殴った。イッタは自分の代わりとしてその若い男を殴った。ひどい話だが、自分の代わりだった。ハナを見殺しにして、その結果に満足して安心している自分を罰するために、イッタはその男を殴っていた。お前のせいだ、お前が悪いのだと。
すぐに病院は、大騒ぎとなり、イッタは取り押さえられ、鎮静剤とか、色々怪しい薬を投じられ、再び茫漠とした意識の海に沈んでいった。