二話 巫女と挨拶とお賽銭
ようやく完成です、どうぞゆっくりしていってね。
蒼side
私が幻想郷に来て早一週間が経った、
その間ミスティアに弾幕ごっこを教えて貰ったが、妖怪になった影響か空飛ぶのにもそう時間は掛からなかったし弾幕も思ったよりも難しくはなかった。
お礼代わりにミスティアのテーマ曲を演奏してとても喜ばれたのは記憶に新しい。
他にも釣りをしたり、屋台を手伝って過ごしていたがある時ふと思い当たる事があった。
それは私が迷いこんだ竹林のあの岩場、そこでオカリナを吹いてミスティアと屋台の時間まで時間を潰していた時の事。
『そういえば私は外から来た身だけど博麗の巫女とかに挨拶とかしなくていいのかな?』
これから幻想郷で生きて行く上で彼女に挨拶しないまま過ごして行くのは少し不味いし異変の時に面識がない状態で通りすがりに喧嘩を売られても困ると思った。
「んー・・・気にしなくていいと思うけど気になるなら行ってみたらどうかな、道も空飛んで行けば遠くないし。」
ミスティアに教えて貰った場所と方角を聞き、行き帰りの時間をいれても屋台までの時間には間に合うし、少し顔を出すために私は博麗神社に向かって飛び出した。
霊夢side
「んー・・・。」
日課の掃除が終わってお茶を飲んで一息ついたあと賽銭箱を覗きこんでみる、まあ期待はあんまりしていないけど。
「あーやっぱりね、入ってないか。」
どうも最近参拝客が少ない気がする、多い訳じゃないけど少しはいた気がするんだけど・・・参ったわね、備蓄はそれなりにあるけどこのままここの現状が続くとそれも危ないわ。
「あら、妖気?」
博麗神社に向かって来る妖気を感じて顔を上げる。
しかし敵意はなくそれほど大きい訳でもない。
「まあ、襲って来るなら憂さ晴らしに付き合って貰うだけね。」
お祓い棒で肩を叩きながらその妖気を持つ奴を待つことにした。
蒼side
『あ、あれがそうかな?』
やたら長い階段の先に建っている神社、妖怪になった影響かその境内に感じる大きい霊力、まあ間違いなく「彼女」だろう。
しかし妖怪になると霊力まで感じ取れるのか、まあ本来なら妖怪にとって巫女とかは天敵みたいなものだし一種の防衛反応みたいなものだろう。
そう考えると自分の行動は妖怪からして見れば可笑しいものだか、迷いなく神社に降りる、その鳥居の先にお祓い棒で肩を軽く叩きながら此方を見ている「彼女」、私は「彼女」の事を一方的に知っている。
脇を露出した特徴的な巫女服を着た少女「博麗 霊夢」これから起きる多くの異変を解決していく無敵の巫女さんだ。
「妖怪が此処に来るのは珍しいわね、参拝だったら素敵な賽銭箱はそこだけど?」
おおう、生で聴いたよこの台詞、しかし警戒の色を含んだ声だなぁ、まあ私がどう立ち回ろうと彼女に敵うわけないしここは・・・。
『あ、はいわかりました、ありがとうございます。』
真っ直ぐ賽銭箱に向かい、財布を取り出した。
「・・・は?」
うーん、賽銭どれ位いれようかな?
正直あの竹林に住み始めてからお金なんてあんまり使ってないし。
『これぐらいでいいかな?』
余裕もあるし五千円札を賽銭箱に入れて手を合わせて拝む。
さて挨拶しようと振り返ってみると霊夢の姿はなくあれ?どこだ?
っと探してみると自分の真横に賽銭箱を凝視する霊夢の姿が。
(うわ、吃驚した!?)
いつの間にこんなところに居たのこの人!?
「あ、あなた今いくらいれ、いえ、いくらいれてくれたの?」
『え?えーと・・・五千円?』
「・・・。」
ど、どうしたのかな?
なんか顔が凄い事になってる。
「・・・ぁ。」
『あ?』
「ありがとぉぉぉぉぉぉぉ!」(抱きつき)
『ちょ、わぁぁぁ!?\\\』
え?な、なんで抱きつかれてるの?
というかさっきまで警戒心丸出しだったのに何故!?
しばらくお待ちください・・・。
「いやーごめんなさいね、あんなにお賽銭貰ったのは久しぶりだったから少し興奮しちゃったわ。」
『そ、そうですか・・・。』
あれから落ち着いた霊夢に神社に案内されて縁側でお茶をいただいている、一応妖怪を神社に入れて大丈夫なのかと聞いたんだけど。
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「あんたは何となく大丈夫な気がするのよ。」
『・・・初対面の妖怪に対してそう思った根拠は何ですか?』
「勘よ。」
『えー・・・。』
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まあ、そんな気はしてたけど本当に勘で片付けられるとは・・・。
「でもあんたは変わった妖気ね、お金も持っていてしっかりと拝んでおまけに血の臭いもしない、ここまで人間臭い妖怪とあったのは初めてよ。」
『そうなんですか?まあ、今はお金には不自由してないんですよ、それに妖怪全員が人を襲う訳でも無いですし。』
「ん、まあ、それもそうね。」
しかしなぜ預けた貯金まで財布に入っていたのだろうか?
更にご丁寧に換金までされていたし・・・おまけに少し割り増しされて、一体誰がこんな事を?
「・・・あーあ、今こっちに向かって来てる奴にもあんたの事を見習って欲しいわ。」
『はい?』
「ほら、あいつよ、今空からこっちに来ている奴。」
霊夢が指を指した場所を見ると確かに誰かがかなりの速さでこっちに向かって来ているのが確認できた。
そして箒に乗って神社に降下した「彼女」は金色の髪を靡かせて白黒のエプロンドレスを着て、とんがり帽子を被った魔法使い、「霧雨 魔理沙」霊夢と同じく異変で活躍していく努力の人だ。
「よーす、霊夢遊びに来たぜ。」
「あんたも毎日よく来るわね魔理沙、暇なの?」
「おいおい、私はそこまで暇人じゃないぜ?霊夢こそ毎日縁側でお茶飲んでるくせに。」
「あら、残念ながら今日は参拝客が来てるのよ、ほら、こいつ。」
『どうも、こんにちは。』
「うお、マジだ参拝客なんて珍しいな、えーと・・・?」
『空野 蒼です、蒼でいいですよ。』
「お、そうか、私は霧雨 魔理沙だぜ、よろしくな蒼。」
『よろしくお願いします、魔理沙さん。』
「あんたは礼儀正しいわねー魔理沙も見習えばいいのに、蒼はお賽銭も入れてくれたのよ?」
霊夢がそういった瞬間魔理沙は驚きで固まった、そこまで意外?
「・・・嘘だろ、参拝客に加えて賽銭まで入っただと?明日は弾幕の雨が降るのか?」
「おい、どういう意味よそれ?」
魔理沙の発言が気に入らなかったのかお祓い棒を握り笑顔で魔理沙に迫る霊夢、正直怖い・・・。
「だって最近まともに賽銭箱に賽銭なんて入っていないだろうか、私の発言は至極もっともだと思うぜ?」
魔理沙も適度に距離を取りつつやはり笑顔で八卦炉を構えている。
「よし、わかったわ、弾幕ごっこで話を着けようじゃない。」
「おう、望むところだぜ。」
そして二人は空に浮かんで弾幕ごっこを始めた、ミスティアとの弾幕ごっこでも思ったけど実際の弾幕ごっこって花火が飛び交うみたいだ、美しさを重点に置いただけはあるよ。
『・・・そろそろ帰らないと。』
リュックからメモを取り出して「お茶ご馳走さまでした。」と記入して飲み終わった湯飲みの下に挟んでお暇する事にした。
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家の近くに降りたらミスティアが出迎えてくれた。
「お帰りなさい蒼、博麗神社はどうだった?」
『・・・なんて言うか、楽しそうな所だったよ。』
「そうなんだ、私は先代の時に会ってそれきりなのよね。」
『先代の巫女さんか、どんな人なんだろう?』
(お帰りなさい・・・か。)
独りになってずっと聞かなかったその言葉、やっぱり嬉しい。
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あれからミスティアの屋台の手伝いも終わり、私は寝間着に着替えて家で一人思案していた、考えているのはこれから起きるであろう「紅い霧」の異変の事だ。
恐らく私なんか居なくても異変は霊夢と魔理沙が解決するだろう、
弾幕ごっこの経験も少ないし行ったところで足手纏いになる。
『あーやめやめ深く考えてもしょうがないしもう寝よう・・・。』
そして私はそのまま睡魔に身を委ねて意識を手放した、だから気が付かなかった、自分のオカリナが淡く輝いているのを。
次は主人公が不思議な体験をします。