その日暮らしのチンゲッティ
チンゲッティは今日も、部屋の片隅でひっそりと暮らしています。チンゲッティは、現状の生活におびえを抱いていました。チンゲッティは、ひとたび家主であるところの望月さんに見つかると、ゴミ箱なる場所へ放り込まれ、身動きの取れないチンゲッティは、そのまま焼却施設という場所まで運ばれ、口にするもおぞましい最期を迎えることになります。チンゲッティの仲間の多くは、すぐに望月さんに発見され、既に非業の死を遂げています。チンゲッティは、まだ運が良いほうでした。望月さんのボクサーパンツから生れ落ちた場所が、比較的かれからは見づらい、部屋の隅だったからです。彼のよく座るクッションの傍などに落ちてしまって仲間は、セミよりも短い生涯を閉じます。
――――あ!
いままさに、チンゲッティの仲間が、望月さんの無骨な手につままれて、ゴミ箱なる亜空間へと落とされます。こうなっては一巻の終わり。もはや逃げ出す手段はありません。チンゲッティは気落ちします。仲間たちのほとんどは、まだ毛根でもって望月さんに根付いていた頃、互いに絡まりあった仲です。性的な意味ではありません。「同じ釜の飯を食った仲」という表現がありますが、チンゲッティたちにとっては「同じチンコを守った仲」となります。そんな盟友の死に、チンゲッティは言葉もありませんでした。
いったいいつまで。チンゲッティは自身の行く末をはかなみます。そして、その実、チンゲッティはその期日を知っています。望月さんは、終末に必ず部屋を掃除するのです。おそらくは、その日がチンゲッティの命運尽きる日となるでしょう。チンゲッティは、盟友の死に、そして自身も遅かれ早かれその後を追うであろう運命を悼みます。
いったい自分たちは何なんだろう。生えている間は、股間を守る役割に全力であたり、その任から解き放たれれば、すぐに用済み。なんとつまらない存在なのだろう。そしてそんな意味の見出せない運命を受け容れたとしてもです。この仮初の自由は、とても残酷なものに思えました。いっそトイレに落ちて、状況もわからないまま水死した方が幸せなのかもしれません。
望月さんが不意に立ち上がります。そして、なんとチンゲッティの方へと真っ直ぐ歩んでくるではありませんか。チンゲッティは遂に悪運尽きたか、と諦観に心覆われます。ですが、同時に、これでやっとこの残酷な生と決別できるかと思うと、どこか安堵に似た感情も去来するのでした。望月さんの指が、チンゲッティの身体を楽々とつまみあげます。ついにきたか、と、やっとこれで、という相反する思いを胸に、チンゲッティはゆっくりとゴミ箱へと誘われます。
と、そこで悪戯な空気の流れが、チンゲッティの身体をふわりと攫い、望月さんの指から離してしまいます。そして、なんということでしょう。先程の部屋の隅よりももっと見つかりにくい、ベッドの下へと滑り込ませます。望月さんはキョロキョロと床を見回しますが、チンゲッティはそんなところには居ません。結局あきらめて、座りなおしました。
チンゲッティは、生き延びました。ですが、それが幸か不幸かは、チンゲッティ自身にもとんとわかりませんでした。
まあネタもとは言うまでもなく。タイトルオチです。でも自分で書いてて、ちょっと考えてしまいました。今まで守ってもらっておきながら、用が済んだら捨ててしまうってのは、酷いことなのかもしれませんね。明日、大掃除しようと思います。ちなみに、原作の方はもちろん未視聴です。明日、借りてきます。嘘です。




