たんぱく質
鈴田君は、今日も元気に虫かごの中を跳ね回っています。自慢の後ろ足で、土を蹴り、阿呆のように跳ね回っています。先程、新鮮な茄子をむさぼったばかりなので、とても元気です。飽きもせずにプラスチックの壁面に頭突きをしていると、同じく虫けらの鈴野さんが近づいてきました。鈴田君は、笑顔で振り返りました。
「やあ、鈴野さん。もうお食事は済んだのかい?」
鈴野さんは太っちょで、食いしん坊なので、いつもはまだまだ餌を食べている筈の時間でした。鈴野さんは、問いには答えず、黙ったまま鈴田君の方へ歩み寄ります。どうしたのだろうか、と鈴田君の方も近寄っていきます。
すると、突然、鈴野さんは口についた頑強な左右の歯で、鈴田君の腹を挟み込みました。歯はやすやすと肉に食い込みました。歯から滴り、口元へと流れ込む体液を音を立てて吸います。マックシェイクのようです。やがて黒い蛇腹を歯が食い進みます。体表面のやや硬い部分を噛み砕く音は、人間が小枝を踏みしめる時に出るそれに似ていました。パキパキ。グチュグチュ。フルーツシャーベットのようです。
「鈴野さん、一体なにをするんだい? 痛いよ。死んじゃうよ」
「……」
「鈴野さん、やめてよ! どうしてこんなことするんだい?」
「たまには肉たべたい」
五分後、鈴田君は自慢の健脚と羽根だけの姿になりました。
友人と話しているときに、子供のころ飼っていた昆虫の話題に。ちなみに友達は、飼っていたカブトムシを、弟に殺されたそうです。ざまあ