三語(劇団パルメザン)
劇団パルメザンの公演は今日も今日とて閑古鳥である。収益よりも準備費用や場所代の方が高い、いわゆる赤字経営が常態となりつつある我が劇団だが、団員たちにあまり危機感がないのが困りもの。
さて。今回の公演、脚本は私。主演は最近バイトでノイローゼ気味の倉橋君。その他が団長のボンゴレ内藤さんと、ヒラ団員の二人。
肝心のストーリだが、かなりの会心作となった。倉橋くん演じる主人公は武闘派吟遊詩人。時に弾き語り、時に自慢の鉄製ハープで悪漢どもをバッタバッタとなぎ倒す。しかしあるとき、敵の喉わを受けた主人公は声を失い、転職。何でも屋となった。そして、謎の仮面の男からの依頼で、鬼退治をすることになる。かねてより友誼のあったマウンテンゴリラ(ボンゴレ内藤さんの熱演が光る)とヒラ団員の一人が扮する傭兵崩れの殺人鬼を引きつれ、いざ出発。その珍道中を描く、一大スペクタクルである。
だけど劇は不興であった。数少ない観客からは時折ヤジが飛ぶ始末。倉橋君の情緒が安定せず、頻繁に奇声を上げる、セリフを噛みまくるという主演にあるまじき失敗の数々。ヒラ団員Bのズボンが突然脱げる等々、凄惨たる状況を受けて、劇は滅茶苦茶になってしまった。ボンゴレ内藤さんの必死のアドリブも、まさに焼け石に水。ヤジが飛び交い、更にそれに興奮した倉橋君が絶叫で呼応、と紛糾の一途を辿る。
そこで事件は起きた。いつもならヤジ程度で済んでいる観客の怒りが収まらず、物が投げ込まれだしたのだ。そしてついにヒートアップした観客の手によって、今はなき近鉄時代の野茂英雄のサインボールが投げ込まれる。それを殺人鬼役のヒラ団員Bが持っていた釘バットで打ち返すも、これがクソファール。背景のセットにぶち当たり、数度バウンドし、逃げ惑ってマスクの取れたボンゴレ内藤団長の頭を直撃。しかし団長は常々、アフロヘアーのパーマネントをあてており、その鳥の巣みたいな毛髪の中へスポッとおさまり、無傷。そのピタゴラスイッチみたいな顛末に、今まで聞いたことのない拍手と、爆笑の渦が巻き起こったのだ。
劇はこうして混乱のうちに幕を閉じ、帰り際に声を掛けてくれるお客は異口同音に今までで一番おもしろかったと言う。私は複雑な思いで応じながら、サインボールをネットオークションにかけて活動資金の足しにしようと決意した。
今回は三語即興文。わかんない人の為に補足すると、関連性の希薄な三つの単語から、膨らませて話にするという遊び。これからは時々、三語も乗せようかと思います。ネタがつきてきたと思っていただいて構いません。今回の三語は「白球」「劇団」「パーマネント」です。ちなみに、三語即興文に関しては、今回のタイトルを見ていただければわかるかと思いますが、一目でわかるようにしておきます。だから、俺は下ネタが読みたいんだよ馬鹿が、という人はこういったタイトル表記のものは避けてください。




