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小ネタ集  作者: ポンカス
15/19

語感、互換、股間

 この度、新たに中国からパンダを購入することになった。消費財かのようにすぐに死なせてしまう日本国ではよくあることだ。だが、今回のパンダは一味ちがう。そう、名前が……

「チンチンですか」

 渋い顔の政府高官、浜中は搾り出すように言った。受け入れ先のU動物園の責任者、角もまた、深刻な表情で小さく頷いた。

「チンチンです」

 中国語の読みとしては珍しいものではない。それを二つ重ねたとして、彼の国では問題ではないのかもしれない。だが、それを日本国が受け入れるという段では非常に宜しくない。言うまでもなく、男性器の俗称と同じ音となるからだ。

「子供たちも見に来るんですよ?」

「ええ。しかし、中国側で既に名前を決められていまして」

「他のパンダに替えてもらうことは出来ないんですか?」

「いえ。今回、こちらが提示した条件に見合うパンダはチンチンしか居ないようです」

 大の男が二人、顔つき合わせて額を揉んだ。

「オをつけるとどうでしょう?」

「オチンチンということですか?」

 提案した浜中が頷く。

「少し丁寧になった気がしませんか?」

「丁寧とかそういう問題ではない気がします。指し示しているのは同じものですよね」

 角はちらりと自身の股間に目線を落とした。

「そもそも、名前を変えることについては、中国側は何と?」

「原義から逸脱しない範囲なら許可するということで」

「ということは中国語でのチンチンの意味じゃないのですか?」

 それなら日本語のチンチンの意味で取るのは違う。

「いえ。日本語でのチンチンの意味で良いようです」

「意味がわかりません」

「恐らく嫌がらせでしょう。我々はパンダの飼育に失敗しすぎています」

 そう言われると、現場の角としては言葉を返せない。しばらく目を瞑っていたが、やがて大きく息を吐いて言った。

「ビンビンとかはどうでしょう?」

「それは……」

「大きく雄雄しく育つようにという願いを込めて」

「確かに大きくはなっていますが」

「ダメですかね?」

「いえ。その理論ならギンギンとかでも良いような」

「ええ、それでも良いです」

 二人は考える。チンチンでいくのか。オを付けるのか。ビンビンやギンギンに替えるのか。一体どれが正解なのか。

「いっそ逆転の発想で、マンマンとかは?」

「いやいや。オスでしょう? 性別の逆転ですよ、それじゃ」

「そうですね。気の迷いでした」

 二人はまた眉間に皺を寄せて考える。

「パンパンなら?」

「実際に使用しているということですか?」

「ええ。繁殖が成功するように験を担ぐ感じで」

「うーん。やっぱり男性器をベースにするべきじゃないですか?」

「いや、おかしいでしょう。どうして男性器ありきで考えるんですか」

「だから、言ったでしょう。あまり原義から離れないでと」

 浜中は、同じことを繰り返させられて、少々苛立った口調で答えた。

「そういうことでしたら、ポコをつけたらどうでしょう? ちょっとギャグっぽくて和むんじゃないでしょうか」

「ポコチンチンということですか? 和みますでしょうか?」

「冷静になってみると、あんまり和まないかもしれません。むしろふざけた感じがあります」

「でしょう? もういっそのこと居直って、チンコでいきますか。直裁だし、ふざけた感じはありません。至極まじめです」

「直裁ではあるとは思いますが、マジメの意味がわかりません。チンコだとマジメなんですか?」

「冷静になってみると、別にマジメではないかもしれません。むしろ生々しい感じがします」

「だいたい、居直るってことなら、もっと曝け出す感じで、フルを付けて、フルチンチンとかは? これは良い。我ながらナイスアイデアです」

「本気で仰っているんですか?」

「すいません。冷静になると、前面に押し出してる感があって、いやらしいですね」

「いえ。わたしも言い方が冷たかったです。いやらしいと言えば、もうどうやってもいやらしい感じにしかならないので、それは仕方ないですよ」

 二人は堂々巡りの状態に、疲労が募るのを感じていた。そう、言うなれば土台がチンチンなのだから、どういじってもいやらしい語感は拭い去れないのだ。

 ややあって、角ははっと閃めき顔で息せき切った。

「チンチンをもう少し柔らかく出来ないでしょうかね」

「それは…… 萎えて縮ませるということですか? ナエナエとか?」

「あ、いや。そういうことではなく。語感の話です。ティンティンとか」

「ああ! でも、ティンティンではあまり音が中国っぽくないですね。でも方向性は良いんじゃないですか」

「ツィンツィン!」

「ああ! それです! それを待ってた」

 浜中は立ち上がった。角も立ち上がった。テーブルを挟んでいなかったら、抱き合っていたかもしれない。がっちりと握手を交わした両者は、小田原評定を終えて、充実した顔をしていた。

 こうして新しくU動物園に、パンダの「ツィンツィン」が仲間入り。二ヶ月で死んだ。




常々思ってますよ。パンダのニュースを聞くたびに。なんで「チンチン」が居ないんだろうって。実際名前をだれが決めているのかとかは知らないんで、そこらへんは創作ってことで。

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