異端戦争編 9話
お互いに一歩も引かない激戦の中、ホールキンス司教が解き放った**無数の「雷光雀」**が、混乱する十勇士たちめがけて猛烈に乱れ飛んだ。
バチバチバチィーーーッ!
まるで電撃の嵐が吹き荒れるように、光の鳥たちが勇士たちに次々とぶち当たる。 一発被弾するだけでも、激しい電撃が身体の芯までぶち抜くような衝撃が走った。 何発も「雷光雀」を受ければ、まるで雷に直撃されたかのように、全身を凄まじい電流が駆け巡り、意識を刈り取らんとする。
「うおおおおぉぉぉーーーッ!」 「いでででッ! なんじゃこりゃあッ!?」
勇士たちは、これまで見せたことのない苦悶の表情を浮かべ、電撃にのたうち回る。その鍛え抜かれた肉体も、強靭な精神も、聖女の力を宿す雷光の前には無力だった。
その勇士たちの苦しむ様を、ホールキンス司教は悦に浸りながら見下ろしていた。 「ほぉほぉほぉほッ、愉快。愉快。実に愉快ですぅ~!」 彼は歪んだ笑みを浮かべ、勝利を確信するかのようにつぶやいた。
逃げ場のない雷光の檻の中で、十勇士たちは苦戦を強いられていた。 ホールキンス司教が放つ無数の雷光雀に被弾し、その激しい電撃に身体を貫かれ、まともに動くこともできない。 その中でも特に、「天翼」のセレンは致命的な状況にあった。 雷撃によって身体が痺れ、彼女の生命線であるはずの「空を飛ぶ」能力を完全に封じられていたのだ。地上に縫い付けられた獲物のように、セレンは空を見上げ、苦悶の表情を浮かべている。
「断罪」の一撃
この絶好の好機を、「断罪のクシャルカン」が見逃すはずもなかった。 彼はセレンの窮地を一瞬で察知し、その手に持つモーニングスター(メイス型)が、まるで命を得たかのように火花を散らし始めた。
「穿星・百裂流星堕ーーーッ!」
クシャルカンの叫びとともに、モーニングスターは火を噴きながら凄まじい勢いで振り下ろされ、セレンへと襲いかかった。 雷撃で痺れ、空に飛ぶ術も持たないセレンは、抗うことすらできない。
ギャアァーーーッ!
彼女の悲鳴が戦場に鳴り響く中、クシャルカンのモーニングスターは容赦なくセレンを滅多打ちにした。その姿は、まるで夜空に煌めく流星が、罪人を断罪するかのように降り注ぐ一撃だった。
戦場はまさに絶体絶命の危機に瀕していた。 これほどまでに、かつての聖女が女神から与えられた特権――奇跡の法術、すなわち「創生魔法」が、かくも強大な力を持つものとは。その圧倒的な威力は、誰の想像も超えていた。
そして、この「創生魔法」の最も恐ろしい点は、他の魔法使いと異なり、魔力を一切消費しないことだった。 それどころか、魔法を行使するのに魔力そのものを必要とさえしない。まさに、奇跡を無限に生み出す法術。 故に、術者本人さえ無事であれば、永遠にその力を繰り出すことができるのだ。 この尽きることのない猛攻こそが、十勇士たちを追い詰める最大の要因となっていた。
その中で、「剣鬼」ライゼンは、一人、己が編み出した**「神気刀法」**で何とか防御していた。
神気刀法とは、ライゼンが若かりし頃、剣の道を極めんともがき、独自の探求の末に編み出した剣術である。 魔力に乏しい彼が着目したのは、この世界に流れる気脈だった。生命力の源である丹田を利用し、気脈をまるで血流のように体内の「気流」に変換する。そして丹田を介して全身の生命力のオーラ(精気)を闘気へと還元する、それが神気術。 神気刀法とは、その神気術をさらに剣術に応用し、昇華させた唯一無二の技なのだ。
この神気刀法は、ライゼンの弟子であるアイルはもちろん、孫弟子のスレイグにも伝授され、その者たちが使えるほどの汎用性も秘めている。特にライゼンは、その技を防御に特化させているようだった。
彼の刀の刃には、極大に増幅された神気が纏わりつき、ホールキンス司教が放つ乱れ飛ぶ「雷光雀」を次々と撃ち払っていく。 しかし、それは自身を守るのが精一杯の、まさに綱渡りの防御だった。
ライゼンの額に、止めどなく汗が滴り落ちる。 「くそッ、ワシとてそんなに持たんぞ……ッ!」
その声には、明らかな焦りが滲んでいた。 バシッ、バシッと、ライゼンの刀は次々と「雷光雀」を撃ち落としていく。 だが、無数に、そして無限に飛び交う雷光雀の猛攻を前に、彼の防御が崩れるのはまさに時間の問題だった。




