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異端戦争編 最終話

背後から受けた超音波によって、ヴェロンの巨体が宙で硬直した。ライゼンは、その異常事態を瞬時に察知する。 「ヴェロン殿!しっかりしてくれいッ!」 叫びながらも、ライゼンは咄嗟に**神気しんき**を全身に練り上げ、自らと腕の中の赤子を光の膜で覆った。 ヴェロンは、全身を襲う麻痺の中で、最後の理性で自らの体を動かした。落下していく最中、ライゼンと赤子を包み込むようにして、その巨体を丸める。


ズドーーーーンッ!! 地を揺るがす轟音とともに、ヴェロンの体が大地に叩きつけられた。激しい衝撃が辺り一帯に響き渡り、土煙が大きく舞い上がる。 上空から、漆黒の翼を広げた狂鴉のビョルンがゆっくりと降りてきた。


友への鎮魂歌 傷だらけのヴェロンは、衝撃で全身を震わせながらも、ライゼンと赤子の無事を確かめる。 「……逃げろ」 ヴェロンは、か細い声でそう告げた。ライゼンが戸惑っていると、その声は怒りの咆哮へと変わる。 「いいから逃げろぉーーーッ!!」 その時、ヴェロンは直感した。この狂鴉ビョルンの背後には、ただならぬ存在がいる。竜王としての本能が、全身の毛を逆立たせるほどの、おぞましい気配を告げていた。 ヴェロンは、ビョルンの変わり果てた姿を見て、それが友である天翼のセレンであることに瞬時に気づいた。彼が全身の力を振り絞り、渾身の一撃を放つ。 ドゴォッ! 巨大な拳が、ビョルンの頭部に叩き込まれた。一撃でビョルンは意識を失い、ドスンッ、と地面に転がる。 「ちっ、静かに眠っとけ……」


竜王の恐怖と物語の終幕 倒れたビョルンの陰から、一人の人影が現れる。 その姿を見た瞬間、ヴェロンの心臓は止まりそうになった。竜王のヴェロンでさえ、本能的な恐怖に全身を支配される。今、目の前にいるのは、彼をして震え上がらせるほどの、とてつもない存在だった。 下卑た薄笑いを浮かべるタナトス枢機卿が、そこに佇んでいた。


「てめえの所業か、これはぁーーーッ!」 ヴェロンは怒りを露わに問いただすが、枢機卿に問答は通用しない。タナトスは即座に魔言を唱えた。 対するヴェロンは、反射的に業火の炎を吐く。だが、虚しくも、それは時すでに遅かった。炎を吐き終わると同時に、彼の体は見る間に魔獣化を始めてしまったのだ。 「こいつは人間じゃない……!? な、に、者、だ……?」 意識が遠のく中、ヴェロンは最後の力を振り絞ってその正体を探ろうとするが、やがてその思考も闇に飲み込まれていく。竜王でさえ抗えないほどの力を持つタナトス枢機卿は、涼しい顔でその様子を眺めていた。 「……やはりおかしいな。聖女の力を、全く感じられない」 彼は首を傾げ、不機嫌そうに呟く。 「勇士たちから力を奪った時には、少なからずとも聖女の恩恵を感じ取れたはずだが……。まさか、赤子に力を全て持っていかれたか!?」 タナトスは鬼の形相で辺り一帯を見渡すが、もうそこにはライゼンと赤子の姿は見当たらない。


ライゼンは、赤子を抱え、全力で走っていた。途中で見つけた野生の馬に飛び乗り、闇夜に紛れて、ただひたすらに逃げ続けた。遠くへ、もっと遠くへ。そして、遥か遠くの地へと逃亡したのだった。


これにて、愛の章ー外伝ー閉幕。                                        

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