異端戦争編 24話
その日の夕刻。アイルは、兵士と仲間の助命と引き換えに、広場にて民衆の目の前で処刑された。 一人の父親であり、一人の英雄が、その日、短い人生に幕を下ろした。 かくして、後世に異端戦争と呼ばれる戦いは、ついに終わりを告げる。
しかし、物語は終わらなかった。 残された勇士たちは、捕虜となっていた。彼らは、下手に抵抗すれば聖女を処刑すると脅されており、為す術がなかったのだ。 その勇士たちの元に、タナトス枢機卿が現れる。彼は下卑た目で勇士たちを見回し、陰鬱な笑いを漏らした。 「クックックッ……」 スランが、怒りを露わに反応する。 「何だ、てめぇー!」 タナトス枢機卿は、嘲るように告げた。 「お前らの力は、私がもらおう」
枢機卿がそう告げると、禍々しい魔言を唱え始める。すると、呪いにかかった勇士たちは苦しみ始めた。 「うぎぎぎいーーーッ……!」 段々と勇士たちは狂ったように暴れだし、獣のような雄叫びを上げ始めた。彼らの姿は、恐ろしげな魔獣のように悍ましく変貌していく。
「ははははは!! 愉快、愉快!」 枢機卿は高笑いをする。 「さて、お前ら。ノートレッドの兵士と民衆を殺してこい」 非情な命令が下される。命がけで守った人々を、今度は自分たちの手で奪ってこいというのだ。だが、もはや、勇士たちは人の心を持ち合わせていないようだった。呪いの力で魂まで拘束され、従わざるを得ない。 変貌した魔獣たちは、解き放たれ町中を暴れまくる。兵も民も関係なく、ひたすらに虐殺を始めた。
その頃、タナトス枢機卿は、遥か上空を飛ぶヴェロンに狙いを定めていた。 「ふんッ。あの巨躯で、のろく飛べば見つけることなど容易い」 ヴェロンは、度重なる激戦で思った以上にダメージが深く、全力で飛べずにいたのだ。枢機卿は、その隙を見逃さない。 「おいッ、狂鴉のビョルン! あれを叩き落としてこい!」
タナトス枢機卿の非情な命令が下る。 「狂鴉のビョルン」は、かつては**「天翼のセレン」と呼ばれた、誇り高き勇士であった。しかし、今や枢機卿の魔言**の呪いによって、凶悪な魔獣へと変貌させられてしまっていた。理性も知性も無い、ただのモンスターに成り下がったビョルンは、ただ命令に従うのみ。その漆黒の翼からは、本来の輝きは失われていた。
バサバサッ、バサァーーー! 漆黒の翼を羽ばたかせながら、狂鴉のビョルンは高速の猛スピードでヴェロンの背中を射程距離に捉えた。そして、超音波を発する、けたたましい鳴き声を鳴らしたのだ。 背後からもろに超音波を浴びたヴェロンは、全身麻痺の状態で飛行できなくなり、制御を失って地上へと落ちていく。




