異端戦争編 22話
うっすらと空が白み始めた。どうやら、長く、血塗られた夜が明け、新しい朝が始まったようだ。
この泥沼の戦争に、ついに終止符が打たれる時が近づいている。 静まり返った戦場に、朝日が昇り始めた頃、城の方から微かだが、確かに赤子の泣き声が聞こえてきた。 「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
その声に、ライゼンがハッと顔を上げた。 「……生まれたのか!?」 アイルもまた、その泣き声を聞くと、大粒の涙がとめどなく溢れ落ちた。 「僕の、赤ん坊が……!」 そこに、満身創痍で傷だらけのヴェロンが駆けつける。 「大将! 赤子が無事に産まれたぞぉーっ!!」
暗雲が立ち込める戦場において、それはまさに、唯一の希望の光とも言える報せだった。 ライゼンは、安堵と喜びに満たた声で呟いた。 「ようやった、ライナ。頑張ったのぉ……!」 その吉報は、瞬く間に兵士たちの間を駆け巡る。疲労困憊の勇士たちの顔に、喜びと安堵の色がじんわりと広がった。長く厳しい戦いの最中、新しい命の誕生という、何よりの希望が彼らの心を温かく包み込んだのだ。凍てつく戦場の空気に、微かながらも温かい光が灯った瞬間だった。
決断の時、別れの足音 だが、そのささやかな希望に水を差すかのように、ゼラフィム軍の陣営から降伏勧告の使者がやってきた。事の次第を知らない使者は、感情のこもらない、冷酷にも無機質なもの言いで告げる。 「直ちに武器を置き、大罪人アイルは大人しく我が軍に投降せよ!」 その言葉に、ライゼンは怒り心頭に発し、使者に斬りかかろうと剣を構える。 「おのれぇーーーッ!!」 しかし、その腕を、アイルが掴んだ。 「お父さん」
アイルに諭されるかのように優しく声をかけられ、ライゼンはアイルの顔を見た。その目に宿る、悲痛なまでの決意を読み取り、力なくその場にへたり込んでしまう。ライゼンは直感的に感じた。(死ぬ気だ、これで全てを収める気だ……) ヴェロンが、諦めきれないように声を荒げる。 「なあ大将、こんな奴ら無視して、早く赤ん坊の顔を見に行こうぜ!」 彼は半ば懇願するように、竜化した巨大な背を向けた。 「さあ、俺の背中に乗ってくれよ、城までひとっ飛びだぜ!」 しかし、アイルは歯軋りをしながら、拳を血が滲むほど固く握りしめていた。彼はヴェロンに近づき、耳元に小声で最後の指示を出す。
それを聞いたヴェロンの顔が、絶望に歪む。 「ふざけんなよ、てめぇーーーッ!!」 ヴェロンの咆哮が、戦場に響き渡る。 「俺は一生、お前を許さないぜ……!!」 アイルは、静かに涙を流しながらも、ヴェロンに優しく微笑んだ。ヴェロンはただ自分の無力さに打ちひしがれ、空虚な叫び声を上げる。 「ちくしょうおぉぉぉーーーーーーーッ!!」




