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異端戦争編 20話

タイロン卿は、ごくりと喉を鳴らした。夜空の下、重い沈黙を破り、彼は静かに、だが確かな声で問いかける。 「覚悟はいいか、レイン!」 「はい」と、傍らに立つレインは短く、しかし明確な返事を返した。 タイロン卿は、大きく、深く息を吸い込んだ。そして、その肺いっぱいに満たした空気を、全身全霊を込めた声として放つ。 「全軍、総攻撃開始せよーーーーーーーッ!!」


その大号令が、夜のとばりを突き破るように響き渡った。 号令と共に、兵士たちが我先にと城壁に梯子をかけ、よじ登り始める。その眼には、戦功に勇んで目をギラつかせる者、略奪に心を躍らせる者、純粋に殺しを楽しもうとする者、家族のために稼ぎ、ただ必死に戦う者、あるいは、己の信じる信仰のために戦う者――。大小、人が戦う理由は様々だが、彼ら全員が、一つの目標へと突き進む。


しかし、そんな彼らの欲望の炎、希望の灯火を無情にもかき消すかのように、ゼラフィム軍の頭上へ、雨霰あめあられのごとき大量の矢の雨が降り注いだ。 城壁の上に陣取るアグロヴァルが、怒号を響かせる。 「今だぁーーッ! 矢、放てぇーーッ!!」 一斉に放たれた矢が、ゼラフィム兵士を次々と貫き、悲鳴が上がる。 「次の矢を構えぇーーーッ! 放てぇーーッ!!」 間髪入れずに放たれる第二波、第三波の矢の嵐が、攻め上がる兵士たちを容赦なく襲う。 タイロン卿も負けじと、即座に次なる攻撃の合図を城門へと送った。 「破城槌はじょうついの用意ぃーーーッ!」 太く重い破城槌が、多くの兵士に押され、ゆっくりと、しかし確実に城門へと向かい始める。 「いけぇーーーッ! 扉をこじ開けろぉーーーーーーーッ!!」


その頃、上空からは、竜化したヴェロンが炎を吐き、城側の防衛を支援していた。灼熱の炎が、攻城兵器や密集する兵士たちを焼き払おうと降り注ぐ。セレンもそれに呼応するかのように、上空から急降下を繰り返す。その鋭い鉤爪は、ゼラフィム兵士を次々と引き裂き、混乱を巻き起こした。 しかし、タイロン卿は、これら空からの猛攻にも即座に対応する。 「竜王は炎を吐けば、この闇夜でも位置がわかる!」 冷静な指示が、部隊に伝えられる。 「位置が分かれば、炎の吐き終わりを狙って強弩きょうどを放て!」 重いいしゆみが引き絞られ、巨大な矢がヴェロンへと狙いを定める。 「ちょこまか飛んでくるセレンは、長槍ながやりで防御しつつ、投槍とうそうで撃ち落とせ!」 タイロン卿の正確かつ矢継ぎ早な指示により、ゼラフィム軍は、激しい城壁からの攻撃や空からの奇襲を受けながらも、なんとかその隊形を崩さず、攻撃を維持していた。攻防は、まさに熾烈を極める。


攻城戦は、まさに一進一退の攻防を繰り返していた。 一方、前線の戦いもまた、膠着状態に陥っていた。大将同士の戦いは、お互い一歩も引かない互角の死闘にもつれ込んでいる。 軍神エンリキは、スラン、レヴィル、オルダ、ガレスベルクという精鋭たちを一人で相手取り、なおも奮闘を続けていた。その強さに、スランが舌を巻く。 「このオッサン、化け物だぜ! ヴェロンのオッサンと良い勝負するぜ、マジで!」


もう一方では、**猛神の魏鐐瀞ぎりょうせいが、アイル、ライゼン、スレイグの猛攻を、その方天画戟ほうてんがげきで巧みに捌き続けていた。彼らの連携攻撃をもってしても、魏鐐瀞の防御を崩すことはできない。 この二人の将は、他の五家領の者たちとは確実に、力量が格段に違った。まさに、人知を超えた人外規格じんがいきかく**の存在。


「ぬうっ、流石にこの者たち相手にはちと厳しいか……!」 軍神エンリキの額には、かすかな汗が浮かぶ。彼は好機を見計らい、魏鐐瀞に鋭い声を飛ばした。 「鐐瀞よ! あれを放つ。少し離れろ!」 その言葉を聞いた魏鐐瀞は、間髪入れずにアイルたちとの間合いを交わし、その場から急速に距離を取った。


軍神エンキリの手に握られた**戦槌せんつい、「奈落ならく」**が、不気味な唸り声を上げ始めた。まるで、今か今かと魂を貪るのを催促しているかのようだ。 「天魔覆滅てんまふくめつ!ーー『震雷しんらい』ーーーッ!!」 エンリキが渾身の力を込めて地面を叩きつける! その瞬間、大地が大きく揺れ動き、地面にはバチバチと青白い静電気が走り回った。そして次の瞬間、巨大な稲妻が大地を渦を巻くように唸り声を上げて走り回り、ノートレッド軍の幾人もの兵士たちが次々と稲妻に撃たれて落命していく。凄まじい衝撃波と電撃が、周囲に甚大な被害をもたらした。 「ぐうおぉぉーーー!」 「何だこれはーーー!」 兵士たちの悲鳴が上がる中、勇士たちもかなりのダメージを受けた。しかし、ライゼンとアイル、そしてスレイグは、持ち前の神気刀法の力で、なんとかその猛威をいなし、致命傷を避けたようだ。 戦場は、軍神の一撃によって、さらなる混沌へと突き進む。

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