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異端戦争編 18話

タイロン卿を逃がしたライゼンは、たぎるごうを少年剣士レインへとぶつけるように斬りかかる。 ガキイィィーーーンッ! 鋼鉄がぶつかり合う凄まじい音が響き、夜闇に火花が散る。ライゼンの放つ剛剣は、その重量感だけで並の剣士を圧倒するはず。だが、レインはそれをいともたやすく受け流す。 ライゼンは驚きを隠せない。剣を振り切った反動を瞬時に生かし、さらに鋭い突きを放つ。ビュンッと空気を切り裂く音が虚しく過ぎ去り、その切っ先はレインの体を捉えきれない。


(これも躱すか!? 目が見えているのか、それとも……。) ライゼンの脳裏に、一つの可能性が閃いた。 「心眼しんがんか……」 ライゼンは目の前の少年を改めて見据える。 「小僧ッ。まだ若いが、そこまで剣術を磨き上げたとは、よほどの修練を積んだのだろう。大したものだ」 褒め言葉ともとれるその言葉に、レインは沈黙を守る。眼帯の奥の表情は読み取れないが、その構えに一切の隙はない。


ライゼンは、疲弊した体に鞭打つように再び集中を高めていく。剣先に神気が凝縮されていくのが見てとれる。 「ライゼン流・神気柳線しんきりゅうせんーー『はやて』ーーッ!!」


ライゼンの剣から放たれたのは、真空の刃。それは柳の枝が風に揺らめくようにしなやかに、しかしはやての如き速度でサアッとレインへと飛翔する。 レインもまた、咄嗟に自身の技を繰り出した。 「秘剣・反動燕返し(つばめがえし)!」


ライゼンは、その光景に驚愕する。 「技に技をぶつけたのかッ!? 何という小僧だ……!」 ライゼンの斬撃を、レインは剣技で相殺しようと試みた。しかしその直後、**レインの利き腕の肩に、ザックリとライゼンの斬撃の跡が刻まれた。**完璧に防ぎきったわけではなかった。 ライゼンは、負傷したレインに諭すように語りかける。 「その傷では、しばらく剣を握れまい。小僧、引き際を知るのも立派な剣士の務めぞ」 その言葉には、敵ながら、レインの才能を惜cむような響きがあった。


だが、レインは一切の動揺を見せない。ただひと言、強い意志を込めて言い放つ。 「俺を殺してから去れッ!!」 それは、タイロン卿を守る決意と、剣士としての揺るぎない誇り。 ライゼンは、そんなレインの頑なな態度に、呆れたように、しかしどこか諦めではない感情を込めて言い放つ。 「何を馬鹿な事を……まだまだひよっこ風情が生意気な口をきくんじゃない」 そして、その場で剣を納め、背を向ける。 「一端いっぱしに悔しかったら、強くなって俺の首を獲りに来いッ!! 分かったか? この小童こわっぱが」 そう告げると、ライゼンは部隊を立て直すためか、あるいは別の戦場へ向かうためか、そのままその場を立ち去った。レインは、斬られた肩の痛みに耐えながら、その背中をただ見つめるしかなかった。

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