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異端戦争編 14話

神狼しんろうスレイグの幻影による攪乱、天翼鷲騎てんよくしゅうきセレンの奇襲、獅子王ししおうアイルの魔法封殺、そして神竜王しんりゅうおうヴェロンによる壊滅的な砲撃。聖女ライナの『獅子心王の書』によって神獣化した十勇士たちの圧倒的な力は、ゼラフィム軍の戦線を完全に崩壊させていた。


その力を目の当たりにした**タナトス枢機卿すうききょうとゼラフィム法皇ほうおう**は、顔を見合わせ、口を揃えて呆然と呟いた。 「何だ、この力は……ッ!!」 二人の顔には、驚きと困惑の色が隠せない。特にタナトス枢機卿は、その瞳に異常なまでの執着を宿らせ、独りごちた。 「これが……歴代最強と謳われる聖女の力なのか……ッ!?」 (これは何としても欲しいぞ……! もはや、象徴しょうちょうやら建前たてまえなどはどうでもいい……力だ、この力が欲しいのだ……!) タナトスの秘めた欲望が、その表情に露骨に浮かび上がる。


一方、隣で戦況を見守っていたゼラフィム法皇は、恐怖におののき、半ば錯乱したようにタナトス枢機卿に問いかけた。 「ど、どうするのだッ!? 数刻すうこくの間に全軍の半数近くがやられたぞッ!! たった、十人の勇士にだぞ!? どうするんだよーーーッ!!」 法皇の悲鳴にも似た叫びに、タナトス枢機卿は苛立ちを募らせ、怒りに任せて言い放った。 「ええいッ、やかましいわ、この傀儡かいらいの王如きがッ!!」 その言葉には、これまで表に出さなかった法皇への侮蔑がにじみ出ていた。 「わめいた処で貴様に何も出来んだろうがッ! 神輿みこしは黙って見ておれッ!」 タナトス枢機卿の容赦ない叱責しっせきに、ゼラフィム法皇は喉を詰まらせ、それ以上何も言えなくなってしまった。彼らの間の主従関係が、この絶望的な状況下で決定的に崩れ去った瞬間だった。


神獣化した十勇士たちの圧倒的な力の前に、ゼラフィム軍は壊滅状態に陥っていた。タナトス枢機卿は、その異様な力に驚きを隠せず、暫くの間、沈黙して戦場を見つめていた。その脳裏では、(しかし、実際どうしたものか……)と、この状況を打開する策を必死に巡らせていた。


その時である。 後方の「天樹の揺り籠」の中で、聖女ライナの体調が急変したのだ。それまで聖なる光に包まれていた彼女の顔が、突如として苦痛に歪んだ。 異変にいち早く気づいたライゼンが、慌てて駆け寄る。 「ライナ! どうしたーーーっ!?」 ライゼンの額に冷や汗が滲み、その顔はみるみるうちに青ざめていく。彼は、これまでのどんな激戦よりも、娘の身に起きた異変に動揺を隠せない。 「アイルーーーッ!! ライナが陣痛が始まったぁーーーッ!!」 ライゼンの悲痛な叫びが、戦場に響き渡った。


最前線で指揮を執っていた獅子王アイルは、その声に「ついにこの時が来たか」と思いつつも、戦場の只中で出産させるわけにはいかないと、一刻も早くライナを安全な場所へ離脱させなければならないと悟った。 「セレンさんーーーッ!! ライナを城までお願いしますーーーッ!! ごめん、急いでーーーッ!!」 アイルの指示に、天翼鷲騎てんよくしゅうきセレンが即座に呼応する。神獣の姿のまま、彼女はライナの元へと舞い降りた。 「分かったよ、坊や。姫のことは私にまかせな!」 ライゼンは、セレンにライナを託しながら、心配そうな顔で何度も懇願する。 「娘を……娘をお願いします……ッ!」 セレンは、その言葉にニコリと優しく微笑むと、バサァッと大きな翼を広げ、苦しむライナを抱え、あっという間に城に向かって飛び去っていった。


だが、セレンが飛び去ると同時、ライナの陣痛が始まったのと同時に、勇士たちの神獣化が解けてしまった。 彼らの体から神獣の力が急速に失われ、巨大な姿が光となって散り、元の人間の姿へと戻っていく。疲労と、一時的な脱力感が彼らを襲う。 「『獅子心王のしししんおうのしょ』の力が解けてしまいましたね」 聖壮巨鹿から人間の姿に戻ったガレスベルクが、状況を冷静に分析するように呟いた。 翼の一角獣から人間の姿に戻ったスランが、頭を掻きながら文句を言う。 「しょうがねぇなぁ、もうッ!」 しかし、すぐに神竜王ヴェロンが、その場の空気を引き締めるように怒鳴りつけた。彼はまだ大技の反動で完全に動けるわけではないが、その気迫は衰えていない。 「てめぇらぁ~ッ!! 気合いだ気合い!! 根性見せてみろッ! おうッ!!」 ヴェロンが、疲労困憊の仲間たちに発破をかけていく。 それに負けじと、獅子王アイルも力強く叫んだ。 「ここが正念場だ、みんな! 最後の力を振り絞ってくれッ!!」 その言葉に、残されたノートレッド軍の兵士たちと、神獣化が解けたばかりの勇士たちが、一斉に声を合わせて応える。 「おうっ!!」


ライナの陣痛により、十勇士たちの**神獣化しんじゅうかが解け、彼らが疲労に喘ぐ姿を見たタナトス枢機卿すうききょう**の口元が、軽く緩んだ(ニヤリと)。彼の瞳には、状況が再び自らに有利に傾いたことへの確信が宿っていた。 (これぞ好機――ッ!!) タナトス枢機卿は、その全身から冷酷な覇気を放ち、戦場全体に響き渡る声で大号令を下した。 「ゼラフィム(クロスロード含む)全軍に告ぐーーーッ!! 総攻撃を仕掛けよーーーッ!!」

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