異端戦争編 12話
一刀斎の右腕を無情に喰らいちぎった神狼スレイグは、その肉片を**「ぺッ」**と地面に吐き捨てた。 「借りは返したぜ……!」 スレイグは勝ち誇るように呟き、その口元に獰猛な笑みを浮かべた。片腕を失い、苦悶の表情で地面に膝をつく一刀斎の姿は、まさしく神獣の力の前に屈した人間の無力さを物語っていた。
その頃、空では、天翼鷲騎グリフォンと化したセレンが、地上を見下ろしていた。先ほどクシャルカンによって受けた屈辱を晴らすかのように、彼女の鋭い眼光はまっすぐに**「断罪のクシャルカン」を捉えている。両腕、両足に生えた鋭利な鉤爪が、獲物を狙う猛禽類のように鈍く光っていた。彼女は翼をバサバサッ**と大きく羽ばたかせ、その時を静かに待つ。
地上では、クシャルカンがその光景に気づき、何やらわめき散らしていた。 「卑怯だぞぉーーーッ! 降りて正々堂々戦えぇーーーッ!」 セレンはクシャルカンの挑発を一顧だにせず、バアサァッと、その巨大な翼を力強く羽ばたかせた。次の瞬間、彼女はまるで稲妻のように宙を切り裂き、クシャルカンめがけて急降下で突貫する。 「ッッ!!」 クシャルカンが咄嗟に身を固めるも、セレン自慢の大きな鉤爪は容赦なく彼を襲った。本来ならば頭部を狙うはずの一撃は、わずかに攻撃が逸れてしまったものの、それでも見事にクシャルカンの左目を貫き、彼の顔面に深い傷痕と激痛を与えた。視界を奪われたクシャルカンが、悲鳴にも似た呻き声を上げる。かつて空を飛べないセレンを滅多打ちにしたクシャルカンは、今、まさしく同じ空中からの猛攻によって、その身に傷を刻まれたのだ。
スレイグとセレンの猛攻により、敵陣営には混乱と絶望が広がっていた。そんな中、片目を負傷し、その顔から血が滴るクシャルカンの隣で、呆然としていたホールキンス司教が、どうにか気を取り戻そうと立ち上がっていた。彼は、再び巨大な雷鳥を召喚し、形勢を立て直そうと術を編み始める。
だが、その企みにいち早く気づいたのは、金色の光を纏う獅子王アイルだった。彼は、神獣化した状態でしか放てない、そして一度放てばしばらく使用できないという、まさに**<神業>**の一つである秘奥を解き放つ。 「ガオオオオオオォーーーーッ!!」
アイルの全身から溢れ出る金色の魔力が、咆哮と共に衝撃波となって解き放たれる。その雄叫びは、戦場全体を揺るgし、ホールキンス司教が召喚しようとしていた巨大な雷鳥の姿をかき消した。 ホールキンス司教は、何事かと顔を上げた時には、すでに手遅れだった。彼が渾身の力を込めて生み出そうとした雷鳥は、まるで幻だったかのように消し去られていた。 それだけではない。彼は驚愕に目を見開く。もう一度雷鳥を放とうと試みても、あるいは他の魔法を使おうとしても、一切の魔力が反応しない。 アイルの**<神業>、『獅子王の咆哮』は、対象の魔力を封殺する力**を持っていた。一度この咆哮を受ければ、その者の魔力回路は完全に閉ざされ、魔法の行使は不可能となる。 ホールキンス司教は、絶望に打ちひしがれたように膝をついた。もう、彼は魔法を一切使用できないだろう。強力な魔法使いとしての彼の力は、この一撃によって完全に奪われたのだ。




