導くものたち
「アンジー」
そよ風のように柔らかく優しい声が、気遣わしげに私を呼ぶ。
「大丈夫よ、ランサー。覚悟はしていたもの。私はエイダの……いえ、この惑星全ての知的種族の管理者だから、一個体の運命で立ち止まったりはしないわ」
私は展望室に集まっている守護聖人達に向かって微笑んでみせた。
そう。この先に未来は続く……彼抜きで。
「知っているよ、アンジー。君は強い人だ。でもね……自分で決めた固定観念に縛られちゃダメだ」
「計画通りでないことも時には重要ですよ、アンジー様」
「私は貴女様の水のように融通無碍なところが気に入っているのです。自由におなりなさい」
「アンジー、俺が惚れたいい女はな、そんな顔でメソメソして、それで終わりのタマじゃねーんだよ。しっかりしろ。お前は誰だ?」
「私は……女神候補で……この惑星の現管理責任者で……」
「ああ、もう!じれってぇな。バカアンジー!!そうじゃないだろ!?」
「こらあ、僕らの大事なアンジーをバカって言うな。……バカだけど」
「ふふっ。そうね。今のアンジーちゃんは、とんだおバカさんみたいだわ。ねぇ、クラウス。あなた、おバカになっちゃったアンジーちゃんのために、シリウスと一緒にちょっとこれまでの惑星開発史のまとめを作成してきてちょうだいな。詳しいやつを」
「……うむ。わかった。行くぞ、シリウス」
「む?惑星開発開発史のここまでの総括か?それは詳細に作ろうと思うと随分手間も時間もかかるな。すまぬ、アンジー。それではこんな時ではあるが、私とクラウスは今後の開発のためにしばらく過去資料の検証に入る。作業中は部屋にこもっているから緊急時以外は呼ばないでくれたまえ」
惑星開発委員会の監督官の役割を持つ、法の番人たる光の守護聖人は、一点の曇もないキラキラした笑顔でそう言うと、珍しく微かに口角を上げている闇の守護聖人と共に姿を消した。
戸惑う私の耳元で、風が囁く。
「君の中にある想い。実行する勇気がないのなら、僕が背中を押してあげる」
よろけた私を、地が支える。
「実行する策が立たないなら、私が知恵を授けましょう」
顔を上げた私の頬を水が拭う。
「泣きたいなら、私がその涙いつだって受け止めて上げましょう。でも今は違うでしょう?」
息を呑んだ私は、もう一度、彼の姿を映すモニターをしっかりと見上げた。
「アンジー、無慈悲な荒ぶる神となれ」
くすぶっていた私の魂を、火が燃え上がらせた。
「ちくしょうめ。野郎ども!言いたい放題言いやがって。こき使ってやるから覚悟しろ」
「よっ!姐さん、待ってました!!あんたは、そうでなくっちゃ」
「アンジー、どうする?偽装機体の準備はできてるけど、中型輸送機体の速度だともう少し時間がかかるんだ」
「あらあ、ステルス機能付きの観測用小型機体なら、もう現地にいるのでしょう?それならこんな方法もあるわよぅ」
わいわいと私を取り囲んで力を貸してくれる素敵な仲間達に、私はビシバシ指示を出した。
さあ、愚か者どもよ。
我儘で無慈悲な女神の怒りを思い知れ!




