グリメント
ザアアアアア!
誰もいない村で一人滝に打たれる村長(仮)の男。
何故こんな事をしているのか?
強くなりたい訳では無い。ただの憧れだ。
彼は昔悪しき神を討ち取った英雄に憧れているのだ。
人の命を奪うという神が持っていた個性を破った、人間の個性に。
だから、自分も英雄みたいに人を守れる個性が欲しいと願い、今こうして滝に打たれている。
「ああ・・・・・・・寂しいなこの村は、ずっと前から変わらない」
誰もいない村は、俺が生まれた時から誰もいなかった。
魔法みたいになんか生き延びてたし、誰かが育ててくれたのか?
と不思議ではあるが
今を生きてるという事が証明できるなら気にしない。
「さて」
滝から離れ目を開ける、濡れた髪をタオルで拭きながら言った。
「何も得られない。やっぱ・・・・俺は」
"英雄にはなれないのか?"
その言葉が頭によぎった。
もう何年も同じ事してきても、まだ何の成果も得られていない。
悔しくて唇を強く噛んだ、事を待っていたかのように強い風がビュオーと吹き
「あ」
首にかけていたタオルが風に攫われていく。
タオルの代わりかはしらないが、空から、光る物体が湖にドボーンと落ちてくる。
「!!。は・・・・何だこの強い魔力反応。突然な事で身震いした」
警戒を崩さないまま、例の物が落ちた湖に近寄る。
揺らめく水面の底には、一つの鏡が薄らと光を発しているのが見える。
「なんで鏡が・・・・?」
と疑問を抱きながら
水の中から取りだすと、突然、強い光と魔力を放ちこの辺りを別の景色に変えた。
"グリメント"
これが今俺達が住んでいる世界の名前。
俺はずっとこの村にいて外の世界には出たことが無かった。
その理由は、まるで俺を縛る使命感みたいなのを強く感じていたから。
憧れというよりかは・・・・むしろ外に出したくない思いに近いかもしれない。
がなんで俺を引き留めているのかは不明だ。
鏡は"グリメント"の世界を映し、それを見ていく内に俺は外への好奇心色に染まっていく。
よく分からない使命感よりも、今感じる自分の気持ちが勝り、決意をする。
「いい機会だし、気分を変えてみるか。今度は・・・そうだな。世界を旅して、俺なりの個性を手に入れていつかは昔の英雄みたいになってやるとか・・・が良いな!」
善は急げだ!
準備をパッとすませて、家を出る。
そして今までの場所を駆け抜けて、新たな世界への一歩を踏み出した。
別の時代が進み出した。1500年後の今の世界が進み出す。
そう進み出す。