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低レート帯仲間






「さーてと、早いとこ奴らを見つけとかないとな」



 ドラゴンシャイニングと別れた俺は街から出て、森の中の入り組んだ道、の付近を『隠密』と『索敵』『魔力感知』を使いながら移動していた


 俺が調べている道は、さっき頼んだ依頼の馬車がこれから通る道だ

 そして俺が探しているとある存在、その正体は、これから馬車を襲う予定の盗賊共だ


 ドラゴンシャイニングが依頼を受注していれば、そろそろ出現してくる頃合いだ


 この盗賊は、ここら辺では数も平均レベルも高く、フィールドボス並みに厳しい戦闘になるだろう

 しかも護衛する荷馬車を引いている馬がかなりのビビりで、高確率で馬車が横転する。戦闘は避けられない


 今回の俺の目的は盗賊共……ではなく、横転する馬車だ

 馬車が横転し、荷物が散乱した隙をついて、とあるアイテムをくすねるつもりなのだ


 え?カルマ値は大丈夫なのかって?もちろん上昇するぞ!

 なぁに心配するな、そのために奪う対象も高カルマ値NPCにしたんだからな。上がるカルマ値も多少で済む


 それに、カルマ値の上げすぎは良くないけど、()()()()もあまりよろしくないからな。後々カルマ値調整は必須だ




「……いねぇなぁ、も少し奥か?」



 にしても、ドラゴンシャイニングにはクリアする必要ないって言っといたけど、あいつのことだからクリアできなきゃ気が済まなそうだなぁ

 まああいつなら普通にクリアできるだろうけどな。なんやかんや強いし


 ……社会人で週に1,2回しかインできないのに、毎日が日曜日な俺と同じレート帯だったし


 純粋に身体の動かし方が上手いんだよな。俺が正面から挑んだ時は毎回負けてる


 ただあいつ、おつむが結構弱い。俺が編み出した作戦──というのは嘘で、適当な動画から拾ってきた戦法を試しただけで、簡単にハマってくれる


 そんなこんなで、俺とあいつの戦績は4:6ぐらいだ。悔しいことに俺が4の方だ

 ………すまん、ちょっと盛った。ほんとは3:7ぐらい……


 ……思い出したら腹立ってきた。俺の方がプレイ時間長いのに、なんでどいつもこいつも俺より強いんだよ……


 腹立つことといえばもう一個あったわ

 あいつ、俺と一緒に「ランカー共には敵わんなぁ」って傷の舐め合いしてたのに、ちゃっかりGボスソロ討伐しやがったんだ!




 Gボス、ジェノサイドエンドのラスボスといえば、『AWR』の最難関コンテンツの一つだ


 昔大流行したゲームのラスボスってこともあって、その攻略動画はかなりバズりやすい

 ただ、そこに辿り着くまでには難易度的に、時間的に、ついでに精神的にもキツいから、挑戦者はあまり多くなかった


 そいつが異常なまでの強さをしてるのに、『決闘鯖』上位ランカー共は当たり前のようにソロ討伐してんだよなぁ。バケモンだよあいつら


 なのに俺たち低レート帯はクリアできない。攻略動画や攻略サイトを参考にして、装備もステータスも戦法も丸パクリしても最終形態にすら届かない


 そんな俺たちを嘲笑うかのように、ランカー共は新しいことをやり始めた

 もう普通に倒すのは飽きたとばかりに、装備縛りやRTAを始めたのだ


 実際には俺たちをバカにするつもりはなかったのだろう。エンドコンテンツすら易々クリアできるようになって、新たなハードルを自ら設置しただけなのだろう


 ただ俺たちは悔しかった。もうどうにかGボスを倒したくなって、いつもつるんでいる低レート帯仲間で集まって、一つの個人用サーバーでGボス討伐を目指し始めたほどだ


 その結果、なんとかみんなでGボスを討伐できた。参加したメンバーとは深い絆が生まれたような気がした


 だが、その中で裏切り者が出た


 その裏切りってのは、ソロでGボス討伐成功した奴が出てきたことだ

 まあ裏切りって言っても暗いものじゃない、冗談で言いあってただけだ。未婚グループの中から結婚報告が出て、祝いたいけど素直に祝えないかんじのアレだ


 その1人があいつ、ドラゴンシャイニングだ

 あの時はだいぶウザかった。ジェノサイドルートのエンドムービーもどきのスクショを何枚も撮って、わざわざ俺だけに送りつけたりしてきたし


 俺もすぐソロ討伐して見返してやろうと思ったね。でも…………

 結局、俺はサービス終了になっても攻略できなかった。あいつは二度目、三度目の攻略を果たしてたってのに、俺は最終形態どころかその二つ前で躓く始末……



 ……思い返してみたら、腹立ったってより落ち込んだ。ゲームセンスぐらいしか取り柄のない俺なのに、そのゲームですら負けるなんて……


 あーやだやだ忘れよ忘れよ。いやな過去(未来)のことなんてもう関係ないし。知識チートとニートのイン率でぶっちぎってやる…………





「……つか、さっきから全然いねぇな、盗賊共。もう森抜けちまうぞ?」



 考え事をしながらも盗賊を探していたが、なかなか見つからない


 人間の反応なら結構ある。ただそれは大体5人1組で移動してるため、プレイヤーのパーティなのだろう。一応ここは最前線一歩手前だし


 俺が見つけたい盗賊の反応は、道の近くでじっとしており、『索敵』じゃ見つけづらく『魔力感知』でやっとわかるような、気配を消している反応だ


 おかしいな?もしかしてドラゴンシャイニングのやつまだ依頼受注してないのか?

 ………俺が人のこと言えないくらい仄暗い感情を悶々とさせてたせいで、見逃しちゃったのかも………



「しょうがない、一応森の出口まで確認したら逆走して再確認だな。『影走り』」



 そう心に決め、『隠密』のアーツである、光の当たらない場所にいる間隠密力が上昇する『影走り』を再発動する


 今度は雑念を持たないようにし、入念に調べながら移動する


 そして、森の出口まであと僅かの場所まで来る


 もう少しでゴールなため気が緩みやすい上に、道がでこぼこしていて馬車のスピードが緩んでしまうだろう場所。そこに、その反応はあった



「おっ、それっぽいのいたな。けど………流石に1人は違うか」



 『索敵』に反応せず、『魔力感知』でやっと捉えられる存在。探していた盗賊の反応と酷似している


 だが、その反応は一つしかない。盗賊なら近くに5〜10人、多い時だと15人はいるため、人違いだろう


 一応目視で確認してみる。発見した存在はどうやら木の上でじっとしてるようなので、隣の木を登って様子を見てみる


 そこにいたのは、ツヤ消しされた真っ黒装備を身に纏った、いかにもアサシンですといった風貌の獣人の青年だった

 そんな青年が、木の上で寝っ転がってくつろいでいるところだった


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