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鼻☆塩☆塩

 すみません、間違えて違う話をあげてしまいました



「………フッ、あの程度の奴らを倒しただけでいい気になるなよ?」


「何?」


「お前が倒したのは下っ端も下っ端、今仲間が「あのお方」を呼びに行った。お前の命もそれまでだっ!」


「な、なんだと!?」



 まさか、いままでのは俺を油断させるための茶番!?下っ端をあてて調子づかせたところで、本命が襲ってくるってことか!?


 目の前のこいつは監視役ってことか。……まてよ?ならなんで今打ち明けた?


 ……もし「あのお方」とやらがテトロレベルなら、どっちにせよ俺はやられるってことか。PKらしく、最後にネタバラシをしたのか、ちくしょう……


 …………せめて監視役だけでも潰しておこう






「ま、待て。もちつけ(落ち着け)鼻☆塩☆塩(話をしよう)!!!」


「…………」


「わーーー!?冗談冗談、冗談ですや〜〜ん?嘘嘘、あれ全部ウソ!!みんな逃げた!あんたが倒したのはうちの主力!!だから降参!こうさーーん!!!」


「……本当か?」



 は、恥ずかしっ!冗談を間に受けちゃった


 目の前でナイフをペロペロしながら悪どい笑みを浮かべていたPKが、いきなり装備を全部外して情けない声を上げ始めた


 両膝を地面について手を上にあげ、全身で無抵抗を示している。そんなPKの後ろから忍び寄る存在がひとつ



「ミュラ、一旦ストップだ」


「ーー?」


「ひっ!?」



 小さなおててをあげてPKにペチペチ攻撃をしようとしていたミュラを、すんでのところで止める。流石に降参している相手に追撃するのは気が引けるからな


 まあ、だからといって見逃すことにはならない。こいつには、初心者狩りをやめてもらわないといけないからな



「こ、こいつはあんたのペットですかい?」


「ペットって言い方はよろしくないな。そいつは俺の相棒……いや、やっぱペットでいいや」


「ーー!?」



 うむ、いずれは俺の身代わりになってもらう予定だけど、今のところ餌付けして従わせた程度だ。ペットと言われても否定できんな


 ミュラが怒って手をブンブン振っている。間近にいるPKは、ミュラの手が頭の近くを通過するたびにビクビクしているな。掠ったら死ぬぞ?




「み、見逃してもらえないっすかねぇ?」


「いいぞ」


「そこをなんとか!せめて、俺の命だけでご勘弁を───え、いいの!?」


「ああ、ただし条件がある」


「マジか。言ってみるもんだなぁ」



 俺は、ヘラヘラ笑っているPKに、まだ展開しているアロー魔法を突きつける。そして、脅すように言い聞かせる



「今後一切、力の弱い人間を襲わないことだ」


「…へ?」


「これはお前達のためでもあるんだぞ?弱いものいじめばかりしてたら、いつかはこの世界から追放されるんだぞ」


「あ、ああ、わかった……(初狩り(初心者狩り)ばっかしてたらBANされるって警告か?でも俺一回も初狩りはしたことないけど……)」


「本当にわかっているのか?」


「わ、わかってるって!!だからその物騒なもんを引っ込めてくれよ……」



 なにやら不服そうだったので、アロー魔法をギリギリまで近づけて念を押す

 まあ、どれだけ言ってもやるやつはやるからな。これも意味ないことになるかもしれん




「な、なあ、あんた「弱いやつは襲うな」って言ったよな?」


「ああ、そうだが?」


「なんで、人間を襲うこと自体を咎めないんだ?その言い方だと、弱くない人間なら襲ってもいいみたいだぜ?」


「なんだ、そんなことか。別に構わんぞ?あまり褒められた行為じゃないがな」


「……え?マジで?」



 うむ、PKってのは悪人ロールプレイなのであって、中身も悪人な訳じゃないからな。俺が止めたいのはあくまでも害悪行為だ


 PKやりたいんなら、自キャラと同レベル帯かそれ以上を狙うんだな。でも高カルマ値ルートはきっついぞ?初見じゃやめとけやめとけ



「異邦人同士でドンパチやるのは知らん。だが、他の異邦人をこの世界から去らせるようなことはするなよ?お前達が少なくなると俺たちも困るんだ」


「…………ああ、そういうことね。(これ、ゲームのNPCとしてじゃなく、運営からの忠告っぽいな。顧客を減らすようなマネはすんじゃねえぞと。……でも、誰かを引退に追い込むようなこともした覚えはないんだが……)」


「それから、この世界の住人(NPC)を襲うこともやめとけ。今回は見逃してやるが、次はないぞ?」


「了解了解、肝に銘じとくよ(………もしかして、クラン内でしてた会話を聞かれてたか?攻略組が歯応えないから低レベル帯襲って原石探してみるとか、NPCのほうが強くて楽しめそうとか話したな。先んじて忠告してきたってことか)」



 俺の説教に、どこか話半分で相槌を打っているPK。本当に聞いてるのか?



「本当にわかってるんだろうな?」


「OK、大丈夫、完璧に理解した。これからは(つえ)異邦人(プレイヤー)しか襲わんすよ」


「別に無理して襲う必要もないんだが?」



 同レベル帯を狩れないから初心者狩りなんてしてたんだろ?無理してPK続けなくてもいいんだぜ?




「………そうだな、ここらが潮時かもな。俺もそろそろ、PK引退するか……」



 よっし、一名救出成功!!!


 うんうん、PKなんてマゾプレイ続ける必要なんてないんだよ。あれは一握りの、いや、一摘みの強者にしか許されないようなプレイングだからな


 下手は下手なりにコツコツ強くなっていこうぜ。昔は俺もそうだった。なんなら今も下手のままだ。10数年もやってて多少はマシになったが


 こいつは昔の俺みたいなもんだ。自分が強いと信じたくて、簡単に打ちのめされて、でもこの立ち位置を崩せなくて、ダラダラと続けてしまって………そう考えたら親近感湧いてきたな




「…………そういや、結局なんでお前らは俺を襲ったんだ?」


「え?」



 同族だと考えたら、急にどうでもいいことが気になってきた。確かこいつは、最初に俺に『強奪』しようとしてきたやつだったよな?


 さっきは聞いてる途中で戦闘再開しちゃったからな。聞きそびれてしまった



「タバコじゃなかったんだろ?何が狙いだったんだ?」


「………あんたが持ってる、超高品質の[魔草]だよ」


「え?」



 今度は俺が素っ頓狂な声を上げる番となった

 超高品質の魔草?確かに持ってるけど、なんで知られて…………まさか、テトロのやつ!?


 ………別に焦ることでもないか。あんな戦闘狂なやつが自分で【農家】になって増やすなんてことしないだろうし。そもそもあいつ魔法ほとんど持ってないだろうし


 MP回復アイテムなんて持ってても宝の持ち腐れだ。自分だけで使うようなことはせず、すぐに金に換えてるはずだな!!



異邦人(プレイヤー)の製薬クランが依頼出してんだよ。まあ、俺らみたいなアウトローしか受けてないけど。そん中でも、あんたから直接盗ろうって気概のやつらは俺らぐらいしかいねぇがな」


「ふぅん、こんなののせいで狙われてたのか……。こんなことならさっさと売ればよかったな」


「………………はぁ!?!?売れるの!?!??」


「おわっ!?」



 びっくりしたなぁ、急に大声出すなよ!



「なんだ?買いたいのか?」


「そ、そりゃ買えるんなら買いてぇよ!!!……絶対こっちが正攻法じゃん…」


「ほう?だが、俺が丹精込めて育てた魔草は高いぞ?そうだな………一本50万、いや、100万Gだ!」



 初心者狩りへのお仕置きとして、めちゃくちゃぼったくってみる。どうだ?通常価格の2000倍だ!!



「え、安っす、つかさっきまで敵同士だったのに売ってもらえるのかよ………」


「ん?なんか言ったか?」


「い、いや、流石に冗談キツいっすよ兄さん!!せめて10万Gぐらいにまかりまへんか?」


「おいおいおい、そっちこそ冗談だろ?まけられるとしても95万だ」



 値下げ交渉か?受けて立つ。ただこっちはここで売れなくても困らない。そっちも5万以下で刻んできたら、容赦なく打ち切るからな?



「値下げできるんだ………。い、いやいやいや、まだまだ高いですぜ。20万で頼む!」


「しっかり弁えてんじゃねぇか。90万だ」


「お願いだ、30万で!」


「85万」




 その後も値下げ交渉が続いていく。が、途中でPK側から待ったがかかった



「60万!これ以上は無理だ、今手持ちが50万しかねぇ。引き出しに行ってもいいってんならまだ行けるが……」


「ダメだな、仲間も引き連れてくるかもしれねえ。この場で決めな」


「じゃあ、今の手持ち全部出す!アイテムも全部だ!これでどうにかならんか?」



 そういってPKは、50万Gの入った金袋に加え、アイテムポーチからアイテムをポロポロと取り出した


 ざっと見た感じ、アイテム全部合わせて8万弱ぐらいの価値がある。足りねえじゃねえか



「おい、2万G分足りねえぞ」


「え、マジ?計算ミスったかな…」


「まだ持ってんだろ?ほら出せよ」


「い、いや、マジでこれで全部なんだって!!」


「おいおいとぼけんなよ。まだあるじゃねぇか。さっき持ってた短剣はどこだ?」


「………マジすか?」


「大マジだ。見たところ、7〜8万ってところか。それも合わせて65万でいいぞ」


「あ、値切り続いてたんだ」



 うーん、ちょっと大人気ないかな?武器を取り上げれば、しばらくは大人しくするかと思ったんだけど、やりすぎかな?



「で?買うのか?買わないのか?」


「……ああ、それで買ったらぁ!!持ってけ泥棒!!」


「ハッハッハ!!泥棒はそっちだろ?」


「あ、ちょっと待って所有権譲渡するから」



 そういって、目の前のPKは短剣を取り出してアイテム群に置き、こちらによこす──前に、なにやらウィンドウをポチポチ操作し始めた


 俺も魔草の所有権捨てとかないとな。思考操作でサクッと



「よし、今度こそ持ってけ泥棒!」


「受け取ったぜ。こいつが約束の品だ」


「おお、これが……。ありがとな、コオロギさんよ」



 ほぼ素寒貧状態のPK、いや元PKは、俺から魔草を受け取るとすぐに立ち上がり、立ち去り際に握手を求めてきた



「あんたとはまたどっかで会いそうな気がするぜ。じゃあ、またどこかで」


「ああ、またな」



 そう言って彼は早々にこの場を去っていった。ちゃんとPKやめてくれるといいなぁ



 …………うむ、にしても、思いもよらず儲かったな。無知な相手にぼったくっちゃったのはちょっと心が痛むけど……

 ……まあ、あいつぐらい図太いやつなら逆境も乗り越えていくだろうさ!!(超無責任)



「ーーー?」


「……そうだな、本来の予定に戻ろうか」



 そうミュラと話した俺は、放置していたアリの巣へホクホク顔で向かっていった。いやぁ、懐があったかい!

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― 新着の感想 ―
[一言] pk……元PK?側はお得に高価な希少素材をゲット(したと思ってる)、主人公は簡単に量産できる価値の薄いものを売ってる。・・・うん、winwinだな!
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