間話 お姫の憂鬱
◆side:フレイニ
どうしてこうなったんだろう
「クラマス、クラン入り希望者がかなり来てたぞ?」
「昨日の活躍が影響してるみたいだな」
「いつも通り全員入れておいたけど、いいよな?」
「………その、入れた方達はどのような人だったんですか?」
「あー……まあ、普通のやつもいたぞ?」
「そ、そうだな。少なくとも即BANされるぐらい終わってるやつはいな……す、少なかったな」
「万が一そいつらがやらかしても、フレイニちゃんのせいじゃないから安心してな?」
「…………そうですか……」
ログインしたら、私たちのクランの初期メンバーの方たちから報告がされる。私はそれを、疲れた笑みで受け取る
最初の頃にはロールプレイとして徹底していた、慈愛のある温かな笑みすら貼り付けきれない
いつからこうなったんだろう
「………それで、昨日他の方に迷惑をかけたメンバーは、何人BANされましたか?」
「……クラマスは気にしなくていいんだよ?マジで」
やんわりと、サブマスターにはぐらかされる
昨日のイベントで、私は貢献順位2位を取ってしまった。そこまではまだよかった。クランメンバーにも協力してもらったから、私を2位にまで押し上げた名誉、みたいに思って貰えたし、実際にそのおかげで彼らもいい順位になったみたい
でも、あの人たちはそれ以上を求めた
姫、つまり私のおかげであのアンデッドを倒せた。姫がいなければ勝てなかった。もっと姫に感謝すべきだ。だから報酬の一部を姫に渡せ
いきなりそんなことを周囲に言い始めた。私の近くにいたメンバーは、すぐに叱りつけて抑えたつもりだけど、他のメンバーにまでは目が行き届かない
叱ったはずの彼らも、反省するどころか喜ぶばかりで何故怒られてるのか理解してるのか怪しかったし、私の見ていないところでまた迷惑をかけているかもしれない
クランマスター権限で、在籍メンバーを確認する。クラン入り1日未満のメンバーを除いて、メンバーの数を数えてみる。……昨日より2人足りない
自主脱退したのか、それとも……。いえ、答えはわかりきっている。また私のせいで、狂ってしまった人が消えたらしい
「そんなことより、俺たちのクランハウスも次の街に移しといたよ。次の目標は、ダンジョン制覇一位か?」
「一位にこだわる必要はないだろ。…まあ、言わなくても勝手に行動されそうだけど」
「ただそっちはメインルートだし、他クランとの衝突が起きそうだな。というか絶対起きるだろうな」
「……いっそ、反対方向でも目指しましょうか」
「反対、というと南ってことかクラマス?」
「火山はかなり難易度高いらしいけど……」
自分でも突拍子のない発言をしたと思ったけど、それが妙案に思えてくる。人の少ないところにいけば、他人との衝突は少なくなるし、「私たちが初攻略になるため」という大義を与えれば、あの人たちも素直に従ってくれるかもしれない
でも、火山はだめかも。少ないけど、既に攻略に乗り出しているプレイヤーはいるみたい。そんなチャレンジ精神の高い人たちと衝突したら、いままでよりひどいことになるかも……
もっと、さらに突拍子のないところを目指さないと。突拍子がなさすぎて、誰も目指さないようなところを……
「……空とか、どうでしょう?」
「え?空?」
「はい、空です。上空には天界があるなんて噂もありますし、私のイメージにもあっているでしょう」
「空かあ、いや、う〜ん……」
「明らかに今できるようなコンテンツじゃないけど?」
「でも、航空手段にいち早く手を出しとけば、今後いろいろ有利になるんじゃね?」
できるかどうかはわからない。十中八九できないでしょう。でも、できる必要はない。あの人たちを、他の人と揉めないように目的を与えられたらいい
空に行く手段が完成するまで秘密にする、とでも言っておけば、人気の少ないところを勝手に探してくれるかな。……あの時みたいに、一部のエリアを独占すると言い張って他プレイヤーを追い払おうとするかも。なら「逆に目立つから接触は避けて」と言い含めておけば……
……なんでこんなことで頭を悩ませなければいけないんだろう。みんなに煙たがられて、迷惑かけて、クランメンバーの扱いに困って。こんなことしたかったはずじゃないのに
最初は、私も1人のベータプレイヤーだった。ただの、キャラビジュアルの作成が上手くいっただけの1人のプレイヤー
教会関連に回復スキルがあると目星をつけ、いろいろと試していたプレイヤーの1人だった。ポーションヒーラーという回復スタイルが確立して、こっちの成果がなにもないことから1人、また1人と減っていった教会勢で、唯一諦めきれずに探し続けてた。ただそれだけの一般人
そのおかげで、『光魔法』というスキルを最初に手に入れれたまではよかったんだけど……
スキルを手に入れて浮かれていた私は、意気揚々とフィールドに出て試し撃ちしようとしていた。神父さんから、レベルが上がれば回復魔法も使えると教えられていたから、とてもワクワクしていた
それで、スライム相手に『ライトボール』を使っていたのだけれど、それをとあるパーティに見られていた。もちろん質問責めにあった
少し驚いたけど、隠すよりも広めてしまったほうがいいと思って教えてあげた。私が第一発見者になれて、自慢したい気持ちもあった
私がやったことを余さず教えた。中には無駄な工程かもしれないこともあったけど。それを聞いたそのパーティは、私が話した習得条件を聞いて難しい顔をし始めた
なにかを相談してると思ったら、急に「うちのパーティに入らないか?」と言われた。なんでも、習得条件が難しすぎるから、既に習得している私を引き入れたいということらしかった
私は、教会に入り浸っていたからレベルも低いしステータスも偏っていると言ったけど、そしたら…
「じゃあ姫プだな!」
「姫プってのは語弊があるだろ、ヒーラーってのは大体そんなもんだ」
「君は俺たちを回復してくれるだけでいい。そしたら他の必要なことは全部手伝うぜ?」
「RPGで質のいいヒーラーは重要だからな。そんぐらいやってもお釣りが来るから気にしなくていいよ?」
たしかそんなことを言われた。私はそれに頷いて、このゲームで初めてパーティに入った
その後のことは……よく覚えていない。好き放題に攻略して、ロールプレイに力を入れてみたりして、いつの間にかクランを作ることになって、何故かクランマスターに担ぎ上げられていて、クランに入ってくる人が変な人しかいなくて……どこから間違ったんだろう
いえ、最初はたしか普通の人もそれなりにいたはず。なのになぜかそう言う人ほど抜けていってしまうし、入れ替わるように変な人が入ってきた。……私が悪いのかな
「…………私は、教会で祈ってきます」
「今日も行くのか?」
「はい、新しいスキルが使えるようになるかもしれませんし」
「……そうか、いってらっしゃいクラマス」
今日も、逃げるように教会へ行く。新しいスキルを、と言う言い訳で、本当はクランメンバーから距離を置きたいから。ゲームに入らなければいいんだけど、そうしたら彼らを心配させてしまうし
まさか、本当にスキルが手に入るとは思っていなかったけど
でも、このスキルのせいでさらに悩む羽目になったし……逃げ場はどこにもないのかも
▽
「クラマスも困ったもんだよなぁ、スキルがあっても元のステータスが低けりゃ意味ないってのに。もっとレベリング重視して欲しいよな」
「しゃあないよ、ありゃ多分成功体験に固執しちゃってるわ。……そろそろ見限るのもアリかもな」
「え?追い出すのか?」
「なわけないだろ。このパーティのヒーラーを別のやつ入れるってことだよ」
「なんだよびっくりしたな。金のなる木を捨てるとか言い出したと思ったぜ」
「ひどい呼び方だな」
「お前もどうせそう思ってんだろ?ほら見ろよ、昨日の「貢ぎ物」の量を」
「おいおい、そりゃフレイニちゃんへの贈り物だろ?受け取ってくれないだけで」
「贈り主も返品に応じてくれないし、困るよなぁ。姫に渡したって言っておいて、俺たちの懐にしまうのも心が痛むしなぁ」
「とか言って、がっつり横領してんじゃねえか」
「それはそれ。あいつらは姫にプレゼントできてハッピー、クラマスは煩わしいのを対応しなくてよくてハッピー。みんなが幸せになる方法だろ?」
「それもそうだな!ヒメサマ万歳!!!」
視点がいろいろなところに飛び、読みにくくなってしまいすみません
イベントということでキャラをいろいろ出さなきゃと思い、不自然にならないよう肉付けした結果、気づいたらこんなことになってしまいました
次話からはしばらく主人公視点で固定されます。……する、予定です




