表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/154

ゴブリンスタンピード ⑩

 思考が停止する。一体どういうことだ?ボスが回復を使ったのか?それはゲームにおけるタブーじゃなかったのか?


 いや、最近のゲームではそういうことはままある。だが、こんな知能の低そうなボスが回復を使うなど、初見殺しもいいところだ



「うっそぉ、全回復かよ」


「倒し切らないと回復するのか?無理ゲーじゃない?」


「流石にあんなこと何回もできないでしょ」



 初見?いや、先に挑んでいたものがいたな。〈ビーストロード〉共め、我々を陥れるために、わざと情報を出し渋ったな?


 いや、それ以前に〈パイオニア〉共が正しく情報を集められなかったのが原因だ。奴らが考察を専門とするから、我々はその分野から手を引いてやったというのに。自身の責務も果たせないとは



「グギャキャギャ!!!」


「やばっ、ウォーリアーが来てる!?」


「ちょ、タンク守ってくれ!俺まだMP回復できてない!」



 足を引っ張る者ばかりでうんざりする。まさか、上位クラン全員グルなのか?そうだ、そうに違いない。ピンチである我々を助けに来ないのがその証拠だ


 どいつもこいつも、私のクランが強いからと妬みやがって……



「クラマス、クラマス!!どうするんですか!?なにか指示をください!!」


「…チッ、奴らには相応の報いを受けてもらおう。タンク、近接アタッカー部隊!時間を稼げ!!」


「あー…、言いにくいんですけど、タンクは先ほどの瘴気で全滅したみたいです」


「なんだと!?」



 見れば、誰か判別のつかなくなるまで形が崩れた人型のポリゴンが、複数倒れていた



「くっ……第四部隊!彼らの代わりに時間を稼げ!」



 私が振り分けた魔法部隊は、数字が大きくなるほど魔法の火力が低い者たちが多い。そのかわり、他のスキルも伸ばしている。第四部隊は物理スキルも鍛えているものが多いため、物理部隊が崩れた時の補助部隊も兼ねていた



「了解!『タウント』、『ガードスタンス』!あっ──」


「嘘だろ!?防御アーツ使ったのに一撃かよ!!クソッ、『スパイラルランス』!!」


「『エンチャント・ファイ…あぶねっ、『エンチャント・ウィンド』、『マジックエッジ』!!」


「『ショットパンチ』!うわっ!?なんだこの瘴気、触れただけでダメージ喰らうぞ!!」


「くっ、取り巻きすら抑えられないか……」



 物理系ステータスが本職と比べて低いとはいえ、それでも攻略クランのメンバーだ。それなのに思うようにダメージが入っておらず、逆に相手からの攻撃は一撃でこちらの体力を削り切ってくる


 しかも、やっと撃破してポリゴンへと散らしたと思ったら、ゴブリンキングの瘴気が脈打ち、まるで逆再生でもするようにポリゴンが集まって取り巻きが復活してしまう


 さらにゴブリンキング自身も動き始めた。背に背負った、全長2mほどある大剣を片手で軽々と握り、ゆっくりとこちらへ近づいてくる



「流石にマズイっすね。一度撤退して援軍を……」


「いや、奴らは信用できない。我々だけで倒しきる」


「まじすか」



 何度も回復するというのなら、回復する間もなく倒してしまえばいい。そしてこの手段を使えるのは我々だけだ。瞬間火力が最も高いのが魔法、それに特化した我々が倒せなければ、他の誰も倒せないはずだ



「全員撃て!出し惜しみはするな、全力で倒しきれ!!『ダークウィング』『ダークアロー』『ダークスフィア』『ダークボール』『ダークボール』!『ウィンドスフィア』『ウィンドボール』『ウィンドボール』…」



 再度一斉攻撃の命令を出す。一度は半分まで削れたのだから、中断せず撃ち続けていれば倒せるはずだ


 くそ、やはり『火魔法』が使えないのがかなり不便だ。我々の火力が単純計算で2割減っているようなものだ。考えなしに火山の地雷を埋めた奴も後で探し出してやる



「撃ち続けろ!〈中毒〉も気にせずポーションを使え!!」


「グゴガアァァァァ!!!!」


「ま、まずいっ!?」



 ゴブリンキングが地面を蹴り、一気に距離を詰めてきた。そのまま大剣を横薙ぎに振るえば、それだけでクランメンバーが5人死に戻った


 さらに、ゴブリンキングの纏う瘴気がドクンと脈打つと、3割ほど削れていたはずの体力がまたも全回復する



「そんな……」



 予備動作もほぼなく、対価を払ったようにも見えない無限回復。それに加え取り巻きの無限蘇生。勝たせる気がないように感じる。まさか、負けイベントになったのか?


 ゴブリンキングと、いつのまにか復活していた取り巻き共が私のクランメンバーを蹂躙していく。だが仕方のないことなのだ。なぜならこれは負けイベント、勝てなくて当然なんだ。だから私は悪くない……





「グギャギャギャギャ───ゲギャ?」


「……ん?なんだ?」



 暴れ回っていたゴブリンキングが、急にその動きを止めた


 よろけるようにその場に膝をつく。なんだと思って見ていたら、その身体から瘴気が霧散していくではないか


 取り巻きの身体からも瘴気が離れ、それどころかポリゴンとなって死亡してしまう



「い、いきなり何があったんですかね?」


「…わからないが、今が攻め時だ!!全員総攻撃!!!」



 明らかに弱体化している。何故急に弱体化したのかはわからないが、この状態がいつまでも続くという保証はない


 生き残ったメンバーに命令し、ゴブリンキングに攻撃する。最初は50人いたクランメンバーも、今では10人ほどしか生き残っていない


 だが、いままで以上の早さでボスの体力が減っていく。やはり弱体化しているようだ。これなら我々だけでも倒し切れる!



「グゴアァァァア!!!!!」


「苦し紛れか?だが、その技はベータで見た!」



 体力が半分を切ったゴブリンキングが、大剣に炎を宿して薙ぎ払ってくる。その大振りな攻撃を3歩引いて避け、魔法を撃ち続ける──


 ん?炎を宿して?



「な、しまっ──」




 ────ドッッゴオオォォォォン!!!!!!!



 至近距離からの爆音。衝撃と熱風に包まれ、体力が一瞬で消し飛ぶ


 爆風で吹き飛ばされる感覚を味わいながら、私の視界は暗転した

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ