表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/155

ゴブリンスタンピード ⑤



◆Side:クロート



「『ライトボール』『ライトボール』、こっちも人が多くなっちゃったなぁ『ライトスフィア』『ライトスフィア』『ライトアロー』、後ろから魔法を撃つことぐらいしかできないな『ライトボール』『ライトボール』」



 たしかにここに誘導したのは俺だけどさぁ、まさかこんなに来るとは思わなかった。それよりこっちにこんなに来て外は大丈夫なのか?


 広さ的にも、外と中の人数振り分けは9:1ぐらいが適正だ。まあ、こっちの敵は初見のはずだから多めに振り分けたのかもしれないけど、それでもこれは多すぎだ。感覚でしかないけど、多分プレイヤーの半分くらいがここにいるんじゃないか?


 そのせいで、俺は人垣の後ろから遠距離攻撃をチマチマ撃つしかできていない。いや、暴れるつもりはなかったんだけど……前列プレイヤーの手際の悪さを見ていたらウズウズしてきてだな……



「まあ、これがMMOの醍醐味ってやつなのかな……」



 ほとんどぼっちでゲームしてた俺には慣れない感覚だ。16年前の俺はどうだったっけか……



 ちなみに俺がインしてたサーバーの割合は、自前のソロ鯖が9割、決闘鯖が0.5割、公式鯖が0.1割くらい。公式鯖は過疎りすぎて、ほとんどがソロ鯖と変わらない状況だったり、愉快犯に荒らされた跡でどうにもならない状況だったりするため、一部の鯖以外はインしてもすぐ抜けてしまう


 あ、残りの0.4割は配信者や有名人が開設したソロ鯖にお邪魔したやつ。プレイヤー間じゃ『非公式(マルチ)鯖』とか言われてソロ鯖と区別されてるけど。ソロ鯖は開設者がサーバー設定や時間スキップ、プレイヤーBANができるから、公式鯖よりやりやすい


 サーバーコードが公開されてたので、試しにインしてみたのが何回か。まあ、熱心なリスナーじゃなかったからアウェイな空気を感じちゃって抜けることも多かったけどね



 実を言うと、アウェイな空気は今も感じてたりする。俺以外は初見ゲームに一喜一憂切磋琢磨してるのに……なんでMMOで俺だけまたソロプレイしてるんだろ



「…もっとプレイヤーと交流してぇ……」



 できればNPC(コオロギ)としてではなく、プレイヤーとして接したい。対等な立場で和気藹々としたい


 ついでにちゃっかり最先端の武器使ったり、誰も知らないスキル使ったりして「なんだそれ!?」みたいなの言わせたい。詰め寄られてはぐらかしてみたい。「俺なんかやっちゃいま(ry」を言ってみたい


 それもこれも俺がNPCだと思われてたら驚きも半減だ。「へーそんなのもあるんだー」で終わりだろう



 …思考がブレた。とにかく、折角MMOなんだし仲間を作って協力ゲーがやりたいってことだ。あぁ、でもフレンドになって名バレする問題をどうにかしないと……





「あ、ボス湧いた」



 ま、そういうのは後でいいか。今はイベントを楽しもう。といっても、何度もやったことのある一番最初のイベントなので、今更楽しめる要素はないと思うが


 う〜ん、街中のスタンピードはボスさえ倒せば残りの雑魚も全部消えるから、サクッと倒して外に行きたいんだけど……流石にダメだよね?


 自制して、今まで通り雑魚アンデッドを『二重詠唱』も駆使して処理していく


 スタンピードの雑魚って基本的に無限湧きなんだよな。そんでもって無限湧きの敵は経験値がめちゃくちゃ少ない。ぶっちゃけ倒す旨みはあんまりない


 墓地から出てきて街に被害が出ると報酬下がるから一応倒すけど。今は一般モブプレイヤーAとして雑魚処理に徹しよう




「うーわ、最初からそれしてくるのかよ」



 と思ってたら、ボスが面倒な行動パターンを始めやがった。掲げた手のひらに禍々しいオーラが集まって、いかにもこの後ヤバい攻撃が来ますって雰囲気だ


 あれは、アンデッドの追加召喚と全体バフをする技だ。ただその召喚量がかなり多い。特に、タゲを取れてないゴーストが上空から墓の外へと出ていくとだいぶめんどくさいことになる



「阻止しちゃっていいかな……」



 幸い対処は簡単だ。あいつは光属性が弱点で、大技中に至近距離から『フラッシュ』を撃てばデカめの怯みモーションに入る


 よし、決めた。最初の一回だけ阻止しちゃおう。二回目以降は誰か気づいてやってくれるでしょ



「よ〜し、『エンチャント・ライト』、『シャドウダイブ』」



 影に潜って足元を通り、ボスの元へと近づく


 たまに影に潜っている他プレイヤーとすれ違う。どうやら俺と同じように『シャドウダイブ』でボスに近づこうとしたようだが、ゴーストに影の中まで追いかけられて逃げ回っているようだ


 『シャドウダイブ』って影の中を移動できるだけで、反撃とかは全くできないからゴースト系に無力なんだよね


 『魔力感知』も駆使してゴーストを避けながらボスへと近づいていく。俺の移動の方が若干速いため、ギリギリ振り切れる。トレイン気味になっているけど、そもそもスタンピードだし。他の人もやっちゃってるし



「到着、『不意打ち』『フラッシュ』!」


「ーーーーー!!!?」



 ボスの元に辿り着いたと同時に『フラッシュ』を浴びせる。すると、レッサーリッチは両手で顔を覆ってうめき始めた



「よっしゃこのまま──っといけないいけない」



 癖で追撃しそうになるのをギリギリで止める。流石にイベントボス独り占めはダメなことはわかってる


 あ〜早く倒してくんねぇかなぁ。こっちに時間かけてたら外のスタンピードが失敗しかねないし。セオリーだとレッサーリッチはさっさと倒すのがいいんだけど……もうやっちゃっていいかな?


 ボスの近くまで来たのに追撃入れない方が不自然に思われるよな??イベント全体で見たらこいつは中ボスだし、サクッとやっちゃっていいかな??プレイヤー諸君には外のゴブリンキングを倒して貰えばいいよな??よし!(なにもよくない)



「ということで、お前には死んでもらう!『ファイアブレス』『ウィンドブレス』『ライトブレス』『身体強化』、『ラッシュパンチ』ッ!!!オラオラオラァ!!」


「ーーーーー!!!!?」



 穴だらけの理論武装で自己完結し、レッサーリッチは俺が討伐することにした。多分後でクヨクヨ後悔することになるだろうけど、まあそれは明日の俺が頑張るだろう





「ウハハハハ!!!………あれ?」



 気持ちよく殴っていたが、ふと気づく



 ──体力、全然減ってなくね?



 そろそろ半分いくかな〜と体力バーをチラッと見たら、半分どころか1割も減ってなかった


 えっ…なにこれ不具合?俺の知らない無敵状態でもあったか?いや、俺だけダメージ入れられない可能性?タイムリープ者という異端者だから運営からデバフ喰らってる!?


 いや、体力自体は減ってはいる、想定より少ないが。じゃあ、防御モーション?アーマー付与?単純に防御力上がってる?



 その時、あることを思い出した


 『公式鯖』が少人数用の『ソロ鯖』にダウングレードされた時、それに合わせていくつかの要素が調整されたことだ。例えば、多人数前提のレイドボスとか


 『ソロ鯖』なら頑張れば1人で倒せるようなボスしかいなかったが、本来の『公式鯖』の強さは、プレイヤーが数千人と集まってようやく勝てるかどうかといったものだった



 完全に忘れてた……このゲームが過疎った原因の一つだったじゃないか!プレイヤーが減ったせいでレイドボスを倒すのがほぼ無理ゲーになったんだった


 スタンピードボスは取り巻きの量で調整された分、ボス自体の弱体化は他のレイドボスより控えめだったはずだが……それでも『ソロ鯖』の何倍も強いはずだ


 今後のクエストやヤバいイベントでも、こういう展開は絶対起きるだろう。……そういやあのクリア必須級クエスト、本来複数プレイヤー必須じゃなかったか?そういえばあれも……今更焦りが湧いてきた


 これは、プレイヤーとの交流を真剣に考えた方がいいかもな……

●スキル『二重詠唱』

 パッシブスキル

 魔法スキルアーツの、取得レベルが『二重詠唱』のレベル以下のものをクールタイムを無視して二回発動できる


例:『二重詠唱 Lv.6』の場合

 『火魔法』のLv.1アーツの『ファイアボール』やLv.3アーツの『ファイアスフィア』は二連続で撃てるが、Lv.7アーツの『ファイアアロー』はできない



○用語『非公式(マルチ)鯖』

 それ自体は『ソロ鯖』であり、『公式鯖』でしかできないことは当然できない

 ただ、「数十人も参加者プレイヤーいるのにソロって言うのはなぁ」ということで区別された

 人数による湧き倍率やボス補正、報酬補正などはない。ただ鯖主がそこらへんを弄ることはできる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新おつかれさまです! 今月、久々の更新を見て嬉しく思います。 更新が無い期間はロスを感じて、似たような小説が無いか探したこともありましたが、見つからなかったのですよね。半分諦めていたので、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ