プレイヤーキラー
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サービス開始5日目。2日後にはスタンピードイベントがある予定だ
このゲームでは、イベント告知的なものはほとんどない。ゲーム内でそれらしいことが仄めかされるので、それをヒントにいろいろ準備を進めなきゃいけない。『AWR』が廃れた理由の一つだな
幸い、最初の方はまだわかりやすいので俺がテコ入れする必要はないだろう。冒険者ギルドの職員からそれらしい話題を聞けるし、街の衛兵などからも噂が聞ける
俺が「コオロギ」として助言する必要もないだろう。というか「コオロギ」飽きた
いやね?やってみてわかったんだけど、俺ってロールプレイ向いてないんだわ。聞かれてもないこと口走りすぎだし、いつボロが出るかわかったもんじゃない
というかなんだよ「コオロギ」って。適当すぎんだろ。その場で決めたにしてはマシかもしれんけど、使い続けてたらなんかダサくね?と思えてきた
ゲームの人気を保つためのヒント出しは……今はもう充分でしょ。よく考えたら、序盤の方はそんなにヒントも鬼畜難易度じゃないし、自分で探し出せるはずだ
「コオロギ」を再開するとしても、もう少しストーリーが進んでから……そうだな、最短でもスタンピード後まで休憩にしよう。うん、それがいい
……あの巨乳テイマーの冷たい目が案外トラウマになってるのが理由ではない。知らない人に話しかけるのこわい、みんな顔見知りの過疎ゲーバンザイなんて微塵も思ってない
気を取り直して、今日は何をしようか。全体アナウンスを見たら『セカン』のボスが倒されているらしいし、そっちに行ってみよう
噴水を使い、『セカン』へと転移する。かなりのプレイヤーで賑わっているが、俺みたいにタバコ薬を使っている人はまだいないな
この街の裏路地に行けばタバコを吸っているNPCはちらほらいるし、そこからクエストが始まるのだが……まだそこまで進んでる人はいないのかもいれない
見た目によっちゃ、ビジュアルも悪いしな。そこらへんは設定でどうにかできるが、どっちにしろまだ広まってなさそうだ。まだ俺が使うのは目立ちそうだな
……俺も設定で変えればよくね?タバコが消えるかわりにバフアイコンが出るけど、そっちの方が悪目立ちしないかもな。普段使いアバターを使ってる時はそうすることにしよう。一々設定変えるの面倒だけど
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「『不意打ち』、『ストレートパンチ』」
「プギィッ!?」
木の影からこっそり近づき、ウリボアの横腹に正拳突きを入れる
急所にクリティカル、不意打ち補正もあって、体長2m近いイノシシはそれだけでポリゴンへと変わった
現在、『セカン』の北にある木がまばらに生えた森を隠密行動中だ。うん、また森である
なぜこんなことをしているかというと、単純に『隠密』や『暗殺術』等のレベリングという目的以外にも、モンスターやプレイヤーが多すぎるってのもある。たしか『公式鯖』ではフィールド上の人数によってポップ数が増減するんだったか
しかもほとんどのプレイヤーがフルパーティでいるので、そんななかソロ行動をしていたら目立つだろう
一応バレてもいいように「コオロギ」アバター使用中だ。見つかってもNPCと思われれば怪しまれないだろう。……隠しクエストか何かだと思われて、別の面倒ごとになりそうではあるが
目指す場所はここのボス、次の街『サーズ』との道を隔てているボスだ。ただ、そいつを今倒してもスタンピードイベントが終わるまで次には行けないがな
「……ん?プレイヤーが減ってきてないか?」
気がつけば、『索敵』に反応する存在が減っていた。奥に来たため、強いプレイヤーしかいなくなったのだろうか?
あ、また1人消えた。魔物にやられたか?だが消えた反応の近くに魔物の反応はなかったし……だとするとログアウトか?
消えた人の近くにいた、おそらくパーティメンバーと思われる反応も消えていった。これだけならパーティ全員で休憩と考えることもできるが───少し離れたところにいたパーティも同じように消えていく
そして、ついに周りのプレイヤーの反応が全て消え去った。明らかに異常事態だ。彼らが全員同じクランメンバーで、集団で休憩に入ったのかもしれないが……
「一応警戒しとこう。ボロマントを[黒大蛇の外套]に変えて『隠密』レベルを加算しといて………」
「────『不意打ち』」
「!?『インパクト』ッ!!!ぐぅっ!?」
ガギィンッッ!!!
背後に気配。反射的にパリィ。不完全なため大きく弾き飛ばされる
すぐに後ろを振り向くが、そこには何もいなかった。一体なんだ?今のは、『暗殺術』?
そうか、プレイヤーキラーか!さっきまでプレイヤーが次々に減っていたのは、こいつらにPKされていたのか
なぜか、心のどこかで自分はPKに狙われることはないと思い込んでいた。だが、わかったからには容赦しないぞ?既プレイ勢として後輩に手解きしてやろうじゃないか!!
『索敵』を使用、だが何もうつらない。どうやら高レベルの『隠密』持ち集団のようだな。敵は何人いる?あの数を倒したのだから、おおよそ20人はいると見ていいだろう
もし30人以上いたら……最悪『シャドウダイブ』で逃げよう。ちょっとダサいけど
「──『不意打ち』」
「そこっ!『インパクト』ォ!!」
「うおっ!?」
「へっ、来るとわかってりゃ対処は簡単だぜっ!」
左後方から来た攻撃を的確に弾き返す。今度は相手がノックバックを受ける番だ
ビビらせやがって。玄人様を襲った代償は高くつくぜぇ?
不意打ちを防がれて、マヌケ面を晒してるだろう下手人の顔を拝んでやろうと振り返り───背筋が凍りついた
黒くて目立たない皮装備に、両手に二振りの短剣を装備している。おそらく【盗賊】ジョブだろう。だが、問題はそこではない
「ありゃりゃ、防がれちゃった。こんなこと初めてだよ!じゃあ次は……え?何?こいつNPCなの?」
小柄な、下手したら120cmもないかもしれない小さな体躯の少女。灰色髪のショートに暗い黄色の目。そして、頭の上には「配信中」の文字が浮かんでいる
「ふーん、NPCって殺したらどうなるんだろ?やってみりゃわかるか!」
カノンが最凶だとしたら、こいつは最強のプレイヤーキラー。最強かつ最狂のライブ配信者
チャンネル名、プレイヤー名共に「テトロ」。そんな幼女が俺の命を刈り取ろうとしていた
冷や汗がタラリと流れる。これは、ちょっと勝てるか怪しいぞ……?




