身バレの危機
「そこの人!さっきの話を詳しく──ん?どこかで会ったことあります?」
「え?たしかにそういえば……」
うーん?どっかで見たような……
金髪に青い目のイケメンフェイス、金属鎧を身に纏っていて片手剣と小盾を装備している。物語の主人公みたいな見た目だが、そんなやつごろごろいるからなぁ……
「カイルさん、あの人じゃないですか?クロートさんを探してた時に会った」
「……ああ!あの時のおじさんか!」
……ああ!初日に俺を探してた人たちか!!
「初めて会ったときもここでしたね。俺はカイルっていいます」
「俺はコ──トシローだ。それで、あの後目的の人は見つかったのか?」
「いやぁ、見つかってないです。あれからなんにも情報がないので、もしかしたら雲隠れしちゃったかもです」
「ああ、追いかけられてびっくりしたんでしょうねー」
目の前にいるけどねー
「それは置いといて、さっきの話、俺にも聞かせてくれませんか?あ、対価は支払いますんで」
「『無魔法』のことですか?」
「できれば、それを教えてくれたNPCの特徴から教えて欲しいです」
お、コオロギのこと知ってる人か?
「えーっと、タバコ吸ってて、ボロい服着てて、髪がボサボサで……ああ、あと自分のことを「コオロギ」と呼べと言っていたな」
「ビンゴ!!それで、その人にどんなこと教わりましたか?」
「『光魔法』と『闇魔法』、あと『魔力操作』が使えたら『無魔法』が入手できると」
「マジか……それが本当なら、四属性コンプよりBP4も安く済むじゃん……」
「何!?大損こいたってことか!」
「損ってことはないわよ。BPが消えたわけじゃないんだから」
「魔法ジョブ以外からしてみたら、遠回りになってしまったし損じゃないですか?」
「教えてくれてありがとうございます。情報の対価ですが……」
「あ、まだあるぞ?」
「本当ですか!?」
ついでにアレも言っちゃおう
「『生活魔法』を極めたらいいことがあるらしい。だけど、その先はお前にはまだ早いって言われたな。何か罠みたいなスキルがあるのかも……」
「『生活魔法』を……?1スキルに隠し要素でもあるのか……!?」
インベントリ拡張だけだぞ?『時空魔法』は今取ってもキツいだけだからな?
「ありがとうございます。それで支払いなんですが、今の手持ちじゃ払えそうにないな……」
「いやいや、この情報が本当らしいってわかっただけで俺は充分だよ」
「それじゃこっちの気が済まないですよ。そうだな、後日また会いませんか?フレンドになりましょうよ」
「えっ」
それはまずい。フレンド登録したら本当のプレイヤーネームが知られてしまう
俺が森の洞窟を初攻略した「クロート」だとバレてしまう!!……最近忘れかけてたけど
とにかく、なんとかして話を流さないといけない
「いや、あー、そういうのはえーとプレイスタイル的に……あ、実はプレイヤーネームをちょっと恥ずかしいものにしてしまって、人に知られたくないんだよ」
「ああ、あるあるですね……フレンド登録はやめときましょう。俺は今後もトシローさんって呼ぶので」
「いやー助かった!あ、どうしても支払いたいってのなら、この前みたいにキノコでどうだ?」
「それならありますよ!俺たちが持ってるもの全て上げます!」
「ちょっと!?あれマナポーションの品質上げる貴重な素材なのよ!?」
「ごめんって。でもこんぐらいしないと釣り合わないじゃん?しかも魔法の情報だし、ハナさんにも恩恵あるでしょ」
「むぅ、それはそうだけど……」
「あ、一本で大丈夫なんで」
なんか後ろのパーティメンバーの女性と揉め出した。未だに[魔力茸]はレアっぽいな。俺は『作製加速』のせいで大量にあるけど
いろいろ話し合った結果、10本ももらえることになった。品種改良前のやつはもう俺にとってゴミも同然だが、受け取らないとややこしくなるだろう
これは後でマーケットに激安で売り払うことにしよう。還元しないとな
俺はそのまま、洞窟に入らずに帰ることにした。なんかドッと疲れた……
コオロギごっこも、間接的にしたってことにしてしばらく畑に篭ろう
ただいまイビルプラントちゃんたち。ほれ、おやつのゴブリン耳だぞ〜




