表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/154

姫プクランのマスター




▼▼




 サービス開始四日目の朝。ゲーム内だと……六日目の夜かな?


 昨日はちょっとしたトラブルがありながらも、無事に魔草の最高品質が完成した。魔力茸も途中までできている


 最高品質は、品質、成長時間、収穫量などの全てのパラメータがマックスの状態だ。特に回復薬の材料となると、回復量の増加にクールタイムの減少などのメリットもマックスにしないと「最高品質」とは言えない


 ぶっちゃけ成長時間と収穫量は『作製加速』もあるし妥協しても良かったが、やるならとことんやるべきだろう。なんか称号貰えたし。こんなのあったんだ


 いやぁ、かなりの苦行だった。親の高パラメータ同士を引き継いだ個体が出るまで交配させて、さらにそこからパラメータが伸びるまで増やしていく。雄株・雌株があるタイプじゃなくてよかった……


 苦労した分、完成したときの達成感もひとしおだ。これを魔力茸でもやるのか……自分で始めたことだけど、やめたくなってきた



 さてと。今日はコオロギごっこをする予定だ。が、ずっと畑に篭ってたから、まずは身体を動かしたい


 久しぶりに森の洞窟でも周回しようかな?実は、各ボスのレアドロップである属性結晶があるのだが、[光結晶]だけ手に入れてないのが心残りだったんだよな


 他のはボス周回やらユニーク称号やらで入手しているが、[光結晶]はここらだとレアボスであるライトサーペントからしか出ないんだ


 現状特に欲しいってわけでもないが、狩りの目的とするならこれくらいでいいだろ








「この洞窟は我々〈ホーリープリンセス〉が独占しています!!」


「またお前らかよ!!」


「ここより効率のいい狩場は他にあるでしょう?」


「『光魔法』のこと知ってて言ってんの?お前ら魂胆見え見えなんだが」


「先行者が狩場を独占するのは特権でしょ?」


「通せんぼはただのマナー違反だけどな。やりたいなら狩り尽くすとかじゃないと」


「『光魔法』が欲しいなら、姫が広めてくれると言っているでしょう!何故待てないんです?忍耐力なさすぎでは?」


「今更すぎるわ。自分たちの手に負えなくなると思った途端それだよ」





 森の洞窟の入り口に着くと、人で溢れかえっていた。どうやらまたバッドマナー君達が現れているようだ




「もうこいつら殺っちまわね?街の外だしカルマもそんな上がらんだろ」


「あいつら昨日もいた気がするんだけど、なんでBANされてないんだ?」


「なんでも、警告文が出たやつから交代してるらしい。ほら、人数少ないだろ?推しの為の自己犠牲のつもりなんだよ、くっだらねぇ」


「クランごとBANされちまえ」




 教会の時よりもたむろしてる人の数が多い。こりゃ解決したとしても周回は無理そうだな。ちゃんとしたダンジョンならパーティごとにチャンネルが分かれるようになるが、ここはなんちゃってダンジョンだし


 にしても、人垣ができるほどの人数ができているのに、誰も押し通ろうとする人はいないんだな。争いごとはしたくない……というより、人前で目立つような行ないはしたくないんだろう


 ザ・日本人だな。そう考えるとあの通せんぼ君達は肝が座ってるな




 入り口周りを大勢で取り囲みながらも、「お前が行けよ」的な雰囲気が漂い始めたその時、人混みを押し入って前へと躍り出てきたプレイヤーがいた



「あなたたち!なにをやってるんですか!!」


「こ、これは!!姫!?」

「すげぇ、生姫だ!!」

「俺、姫に話しかけられちゃった!」


「質問に答えてください!それから、あなた達に姫と呼ばれる筋合いはありません!!」



 スラっと背が高く、聖職者のような装備を身に纏った女性が、通せんぼ君達を叱りつけている


 あの装備、オーダーメイドか?ところどころの特徴から【僧侶】用の装備だと予想できる


 【僧侶】はINT,MNDに補正があり、教会関係でのスキル取得がやりやすくなるジョブだ。彼女が姫と呼ばれている人なのだろう





「呼ばれ方を変えるのですね?これからはなんと呼べばいいんです?」


「都合のいいとこだけ抜き取らないでください!!まずは質問に答えてください!何を、してたんですか!?」


「姫──クランマスターが『光魔法』を教えてくれるということを広めていたんですよ。それなのにやつら、文句を言ってきて……」


「そうじゃないでしょう!?なぜこんなところに立ち塞がっているんですか!!?」


「もちろん、姫以外に『光魔法』の習得者を出さないためです!」

「このクランを設立する時、「ナンバーワンにはなれなくても、オンリーワンなクランになりたい」と言ってたじゃないですか!」

「優しいクラマスが『光魔法』を与えてくれると言っているのに、それ以外の方法で手に入れようとするなんて……」


「曲解しないでください!!他の方に迷惑がかかっているでしょう!!早くそこをどいてください」





 ものすごい剣幕でクランメンバーだろう通せんぼ君達を追い払った姫さんは、こちらへ振り返るとぺこりと頭を下げた



「私のクランメンバーがすみませんでした!私は〈ホーリープリンセス〉クランマスターのフレイニです。お詫びとして、希望する方は私が『光魔法』の習得を手伝います!」


「姫に謝らせるなんて…!!」


「あなたたちのせいですよ!!?」




「へぇ、クラマスはまともっぽいな」


「狂信者の暴走に振り回される教祖、いや信仰対象?大変そうだな」


「あれマッチポンプじゃね?クラメンに問題起こさせて、クラマスが解決。それでいい人アピールしてんだろ」


「ああ、確かに。あいつが黒幕って可能性もあるのか」




 どうやら解決したようだ。ゾロゾロと森の洞窟へと入っていく人もいれば、フレイニと名乗った女性から教わるために列を作る人もいる。俺は……せっかく来たし、一回だけボス倒そうかな


 フレイニ……どっかで聞いたことあるような?未来の有名人かなんかかな





「渡りに船だったな。ライトサーペントの攻撃を避けながら『光魔法』を受け止めるとか無理ゲーだったし」


「絶対習得前に死ぬよな。レアボスを何回も引き当てないといけなくなってたのか……」


「そもそも俺、ダークサーペントも倒せてないからレアボス引けないし」


「あ、俺もだわ」


「俺も。てかここの奴らのほとんどはそうじゃね?」


「そのダークサーペントには『光魔法』が特効……振り出しに戻ってるな」


「そのために姫ちゃんから教わるんだろ。レアボス引く必要なくなるけど」


「いやダンジョンクリアしたら称号貰えるじゃん。しかもBP称号だぞ?それだけで『光魔法』取る理由になるだろ」


「それに、『闇魔法』も持ってれば『無魔法』も取れるしな」


「そうそ──え?マジで!?」



 やべ、つい口挟んじゃった


 みんなこっち見てる、どうしよ………あ、俺が「コオロギ」から教えてもらったってことにすればよくね?



「適当言ってるだけじゃね?『光魔法』持ってるやつってあそこの姫ちゃんしかいないんだろ?」


「お、俺も人から聞いただけだしなぁ」


「又聞き情報かよ」


「人っていっても、NPCだぞ?ボロい服来てタバコ吸ってた、胡散臭いおっさんだったが」


「おっさんはあんたやんけ。詐欺師NPCとかいるんじゃね?」


「ソウカモナー。騙されたのかもナー。結構な素材要求されたけど、騙し取られちゃったカー」



「待ってくれ!その情報詳しく聞かせてくれ!!」



 ───なんか来た

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ