ボス戦3分クッキング
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──カツーン、カツーン
「…石、石、火打石、石、火打石、岩塩、石……あっ壊れた」
ボロボロになったツルハシを錬金釜に投入、魔石を3つ入れて『錬金』し、修繕する
現在、北の岩場にて採掘中だ。『採掘』スキルがないので成果は芳しくない。でもなあ、序盤に採取系スキル取るの勿体無くかんじるんだよなあ
たまたま採掘ポイントを見つけたから掘ってみたけど、鉄鉱石のドロップ率がゴミすぎる。スキルがないってのより、最初のマップというのが主な原因なんだろう
「……これで10個目、潮時かな」
しばらく採掘はやらないことにする。どうしても鉱石系が欲しい時はマーケットを漁ってみればいいだろう
そこら辺にいたクレイゴーレムを殴り倒しつつ、岩場のボス、ロックタートルの元へと向かった
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「おい割り込みすんなって」
「ちゃんと並べよ」
「いや並ばんでいいだろ。すぐ別空間に行くんだし」
「それで混雑し始めたから並んでんの!前のやつが入ってから次が入るのにちょっと待機時間があるから」
「魔法強ぇ〜、てか亀の魔防弱ぇ〜」
「これ『風魔法』の【魔法使い】ならソロ狩りできるんじゃね?」
「マナポーションいりませんかー?一本3,000Gでーす!」
「ぼったくりじゃねぇか!それでアロー1発分しか回復しないんだろ?」
「品質高いんで20MPじゃなくて30MP回復するよ。今ならなんと2,000G!!」
「買った!!!」「俺も5本くれ!!」「私は3本!!」「俺も!!」
うわぁ、めっちゃ列できてるぅ……
魔法が普及した影響か、AGIとMNDが低い岩亀くんは大人気になってしまったようだ。ボスエリアから出てきたパーティがまた並び直してるし、ここにいる人のほとんどはボス周回中らしい
幸い行列の進み具合は早く、5分程度で入場できるようだ。なんでわかったかというと、最後尾に「現在5分待ち」の看板を持ったプレイヤーがいたからだ。ノリいいな
俺も列に並ぶことにする。周回予定はないが、一回は倒しておきたいからな
「ん?おっさんもしかしてソロか?」
「ああ。一瞬で終わらせる方法を思いついてな、試してみるつもりだ」
「へー、どんなやり方なんだ?あいつ体力だけは多いから生半可な策じゃ落としきれないぞ?」
「ああ、まずはだな──」
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ボスエリアに入る。岩ばかりの場所でなにもなく、目の前に小さな丘があるくらいだ
その丘が動き出し、下から四本の足が出てくる。正面から首が伸びてきて、のっそのっそと歩き出す
ここのボスのロックタートルだ
「グオオオオ……」
右足を振り上げ、振り下ろすとそこから直線上に地面が隆起してくる。これが主な攻撃で、よっぽど近くにいない限りAGI初期値でも回避可能だ
「『身体強化』『ライトブレス』、『ウィンドアロー』」
『魔力操作』で『ウィンドアロー』を自分の近くに待機させる。カメがのっそのっそと近づいてくるので、こちらもそれに合わせて後退する
「グオオオオ……」
「『ウィンドアロー』」
二本目追加。同じように待機状態にする。カメがまた足踏み攻撃をしてくるため、タイミングよくジャンプする。攻撃に直撃しなくても、地面の振動で小スタンを喰らうからだ。こいつに喰らったところで問題はないが、手癖みたいなもんだな
「『ウィンドアロー』、こっちは準備できたぞ?」
「グオオオオ……」
相変わらずトロくさい動きで近づいてくるため、後ろに回ってケツを小突いてみる
すると、カメは両前脚を持ち上げて、スタンプ攻撃の準備に入った。これは体力を半分にすると打ってくる全体技の劣化版で、全方位にかなりのダメージを与える技だ
「それを待ってた。『エンチャント・ウィンド』、『ストレートパンチ』、『インパクト』!!」
「グオオオ!!?」
すかさず後ろから片方の後ろ足に攻撃する。ノックバック技もつけているため、カメはグラリとバランスを崩し始めた
「はい終わり」
「グオオオ──」
ギリギリで踏ん張っているカメの正面に回り込み、待機させてた三本の『ウィンドアロー』を腹にぶち込む。綺麗にひっくり返り、二度と起き上がれない体勢になった
これで反撃は噛みつきぐらいしかできなくなったため、後は適当に魔法撃ち込めば終了だ
「まあ、お前にはまだ『格闘』のサンドバッグになるっていう大役が残ってるがな!!」
「グオオ……」
HPとVITが高いことをいいことにボコスカ殴りまくった。『格闘』がLv.6になる頃には、悲しげな声を上げながらポリゴンへと還ってしまった




