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間話 流血



◇side:ジア



「………ふぅ、緊張しました。結局私が全て報告する羽目になりましたし」



 「ザ・魔王城」の城内

 暗く冷たい廊下の上を、一人の女性悪魔が歩く


 彼女の名は「ジア」

 ある任務のため、少し前まで人間界に潜入をしており、その報告のために戻ってきていた


 しかし、その報告は彼女の上司にするだけでは済まされなかった

 情報の異常性が目に止まり、彼女達のトップ………「王」に直接報告することとなってしまった


 情報は人を経由するごとに劣化してゆく

 正確な情報を得たいのなら、当人から聞き出すのが最適な手段なのだ



「また、目立ってしまいました」



 ジアは今、非常に疲れていた

 身体的疲労は微塵もない。ただ精神的な疲労がピークに達していた


 あの時、人間界の軽食店で、不意に正体を暴かれた時点でかなり余裕が突き崩されていた

 人間への警戒はほとんどしていなかったとはいえ、人間界には悪魔の天敵が存在するため、一瞬たりとも警戒を怠ったつもりはない

 だというのに、簡単に背後を取られた

 さらに、「お前の正体を知っている」と暗に伝えてくる言葉を放たれ、彼女は任務の失敗を悟った


 だが、それで終わりではなかった


 問題となったのは、その後の人間の発言……「伯爵には気をつけろ」という言葉だ

 その言葉をジア自身はこれっぽっちも信用していない。経歴も不明な人間からの言葉なぞ信じなくて当然だ


 だが、他者からどう思われるかは別だ

 この事を馬鹿正直に報告すれば、ジア自身が伯爵に疑惑を持っていると捉えられてもおかしくない。そうでなくとも、お偉方を侮蔑する行為と受け取られても言い訳はできない

 ジアが本当はどう思っていようと、この事を報告すれば、「人間ごときの言葉を真に受けて報告した」と思われてもしょうがないのだ

 しかし、生真面目な彼女に「報告しない」という選択肢はなかった


 さらに追い討ちをかけたのが、同行者リリーの暴走だ

 ただ、リリーが勝手に暴れ回ったこと自体はさほど問題ではなかった

 悪魔には直情的ですぐ暴力に訴えるものは少なくなく、今回のトラブルもよくあることであった。実際に、報告した時も多少のお咎め程度で済まされた


 ジアをここまで疲れさせた原因は別にある。いきなり変装を強制解除されたことだ

 正体が大勢の人間にバレたことは、そこまで気にすることではない。また別の姿に変装すればいいだけだ

 問題はそこではない。「姿を無理やり戻された」という行為が、彼女の寿命を大いに縮めたといっても過言ではないだろう


 もしもあれで、翼の収納も解除されていたとしたら………

 思い出すだけで、今でも背筋が粟立つ


 リリーが人間を虐殺し始めた時には、もう既に限界ギリギリだった

 「混乱に乗じて憂さ晴らしに火の海にしてしまおうか」なんて、物騒な本性が顔を覗かせるほど追い詰められていた

 あと少しでも長く虐殺が続いていたら、自分も暴れ出していたかもしれないくらい、本当に爆発寸前だったのだ




「やはり私に諜報は向いていませんね。ですが、ラナだけに任せるのも限界はありますし……」


「ワタシもいるよ!!」


「リリーですか。今までどこをほっつき歩いていたのですか?報告はもう済んでしまいました」


「あそびにいってた!!」


「正直なことだけは褒めてあげます」



 天井を支える太い柱の影を跨ぐ

 通り過ぎた時には、人影が一人増えていた


 リリーの姿を扮したナニカだ

 その異常な現象を、ジアは気にも留めない。留められない

 「リリーは昔からずっとこのように現れる。今更気にすることではない」と、ありもしない記憶が僅かな違和感も消し飛ばす



「何故遊んでいられたのですか?貴女には私と同様、いえ、私以上に報告する義務があったはずです。今回の問題の半分は貴女が引き起こしたことなのですから」


「おこってる?!」


「ええ、皆も王も大変お怒りでしたよ。当然私もです。何故問題を起こした本人がこの場にいないのだと。そして監督責任として、貴女の分まで私がお叱りを受けました」


「たいへんだったね!!」


「貴女のせいですよ。なにか言うことはないのですか」



 本当は、リリーの暴走についてはほとんど咎められることはなかった

 むしろ同情の念すら向けられた。立場上、口に出して労われることはなかったが


 しかし、今のジアはひどく疲れており、ストレスも溜まっている

 報告も終えて緊張の糸も緩み、理性で抑えていた感情が僅かに漏れ出て、リリーにきつくあたってしまう



「そもそも、貴女がついてこなければここまで問題は大きくなっていませんでした。元々私一人で行く予定でしたのに。貴女がどうしてもというので同行を許可したというのに、貴女はなにか役に立ちましたか?」


「いいであいがあった!!せかいがすくわれるかも!!」


「謝罪の一言くらい言えないのですか?それで少しは私の溜飲も下がります」


「でもまだきたいうす!!つまらない!!」


「まずは人の話を聞きなさい。私は貴女に怒っています」


「まだまだしやがたりない!!じげんがちがう!!」


「いますぐに、そのふざけた妄言を止めて、土下座して謝罪しなさい」


「あ!まだおこってたんだ!!」


「っ!!………謝りなさい。さもなくば、貴女を生きたまま臓物を燃やし、手足の指先からゆっくりと低温の炎で壊死させていき、口に炎を流し込んで腸を通らせて尻から引きずり出して……」


「やーーーー!!!」


「っっ!?」



 ジアの怒りが爆発する寸前

 偽リリーはジアの言葉をかき消すように大声を上げ、いきなり廊下の壁へ向かって猛突進した



 ゴッチーン!!


「いたたたた!」


「な、なにをやっているのですか…?」



 魔王城の壁はそんなことではびくともしない

 へこみすらつかない。割れたのは、偽リリーのおでこの方だった


 突然の奇行に動きを止めるジア

 偽リリーのおでこに小さな傷がつき、真っ赤な血がテロリと流れる

 それは眉間を伝い、鼻の横を通って頬からポタポタと垂れた



「何故、急に壁に頭突きをしたのですか…?」


「ジアがおこってたから!!」


「理由になっていません。何故私が怒っていたら、壁に頭突きをするのですか?」


「もうおこってない!!」


「いえ、たしかに今は呆れと困惑が勝っていますが、怒っていないわけでは………はぁ、もういいです」



 この子に何を言ってもダメだ

 溜飲を下げるどころか余計に疲れるだけだ

 そう悟ったジアは、行き場を見失った怒りに再度蓋をして、偽リリーの謝罪を諦めた



「今回で私はしばしの休息をいただきました。今から、一人で、ゆっくりと、休ませていただくので、もう邪魔をしないでください」


「そっか!!ワタシがいるとひとりじゃない!!」


「ええ。羽を伸ばして静かに休みたいので、くれぐれも、邪魔を、しないでください」


「わかった!!おだいじに!!」


「はぁ……」



 本当にわかっているのか微妙な返事をする偽リリー

 しかし一人にする気はあるらしく、ジアに追随して歩いていた足を止めた

 ここで別れてくれるようだ


 それを確認したジアは目頭を揉み、気分を落ち着かせるように大きく溜息を吐くのだった




















「最後に、一つ質問があるのですが。その額のものはなんですか?」


「ん?!」


「それです。額から垂れている、赤い液体のことです」


「これ?!ち!!」


「ち?血液ですか?それを何故、額につけているのですか」


「あたまぶつけたから!!」


「返答になっていません。何故頭をぶつけたら血液を付着させるのですか」


「ぶつけてきずができたから!!」


「ですから、質問の答えになっていません。何故傷ができた場所に………はぁ、もういいです」


「きずができたらそこからちがでるんだよ!!」


「意味不明です。貴女と会話をしていると疲れるだけです。あまり私を困らせないでください」


「あれー??!」






 これにて第四章終了です


 またしばらく休載させていただきます

 実は、連載中に小スランプに陥ってて、更新が結構ギリギリでした(なう2026/02/09)

 いつもなら書いたものを1ヶ月後に読み直して編集添削してたんですが、最後の方はやっつけになってました

 もっと余裕を持って話数ストックを貯めたいので、一年くらい休載することになるかもしれません


 次章は、ゲームサービス開始から四週間目、チュートリアル終了まで描く予定です

 いろいろなことが起きたり起きなかったりして、それを主人公が解決したりしなかったりします

 あと個人的にお気に入りのアイツが再登場します

 なにもわからない?はい、まだ構想が全然固まってないので

 決まってることは、危機感を覚えた主人公が自己超強化を急ぐくらいですね


 では、おたのしみに


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