ほんとややこしい
「契約デキル子タチハ、アッチ。チビ達、案内シテアゲテ」
「「~~~!!」」
できた精霊鈴を受け取ると、土器頭の周りをフヨフヨ飛び回っていた小さな光のうち二つが、俺のとこに飛んできた
そして、こっちこっちと導くようにクルクルと目の前を飛び回る
この子たちは、[幼精霊]っていう精霊の赤ちゃんみたいなもんだ
できることは、NPC精霊の手助けや精霊界の道案内など。いろんな要素が詰まってて迷子になりそうなこのマップでナビをしてくれる、結構ありがたい子たちなのだ
ここは本当に初心者に優しい。できれば人間界も道案内してください
そんな幼精霊に案内され………るまでもなく、行き先は知ってるので自分で行く。なんなら置き去りにしちゃった
すまんな、タイムイズマネーだ
「トオレナイ」「トオッチャダメ」
構わず走っていると、高さ1m程度の木の柵で囲まれた、牧場みたいな場所が見えてきた
簡単に飛び越せそうだが、見えない壁があるから突っ込んだらバイーンと跳ね返されるぞ
ちゃんとゲートから入らないとだめだ
そのゲートまで行くと、2体のNPC精霊に通せんぼされた。ここの門番だ
体長30cmほどで、お花のような服を着て背中に虫の翅が生えた人型の精霊だ
かなり拙い喋り方だが、言葉を使えるだけでかなりすごいことなんだぞ?
「シカクガヒツヨウ」「シカクミセテ」
「ほれ、精霊鈴なら持ってんぞ」
「セイレイリン?」「ケイヤクシニキタ?」
「ナラトオッテイイ」「トオッテヨシ」
その門番にさっき作ってもらった精霊鈴を見せれば無事合格をもらい、ゲートを開けて通してもらえた
さて、よさげな子を探すぞ〜?
中に入ると、外とあんま変わらないメルヘンファンタジーな平原が広がっていた
違っているところと言えば、そこらを自由気ままに飛び回っている野良精霊の数が5倍になっているぐらいか
周囲を見渡すと、様々な動物の姿をした単一色の存在が至る所にいた。まるで動物園のふれあいコーナーだ
犬に猫に兎に狐、トカゲに蛇にカエルに魚、オコジョにラッコにカワウソにフェレットなどなど…………イタチ科多いなこの辺
基本的に小型犬から中型犬ほどの肩乗りサイズ、ごく稀に馬くらいデカいやつもいる
地面を歩いているものもいるが、ほとんどは羽もないのに空を駆け回っている
上を見上げれば、遙か上空に細く長い胴体をした巨大な精霊が雄大に空を泳いでいた
坊や〜良い子だねんねしな、って言いたくなる
そのさらに遠くに、ここからでも見えるほど巨大な体躯と翼を持った精霊が宙に止まっていた
一週間くらい前に追い回されたやつと瓜二つの見た目をしてるな。違うところは、あいつは緑の鱗をしてたけど、今見てる精霊は赤い鱗なとこだ
あれも広義の意味ではドラゴンだ。でも狭義の意味ではドラゴンじゃない。ここら辺ほんとややこしい
精霊の姿は大きく三種類ある、と、よく言われている。が、人によっては「一種類じゃろがい」と言う人もいる
どっちが正しいとかはない。どっちの言い分も理解できる
一つ目は最もポピュラーな「動物型」
まんま動物の見た目をしている。精霊なので体色が単一色だったり、体重があったりなかったりするけど
このタイプが一番契約しやすい。精霊は、小さかったり形が単純だったりするほど格が低く、契約に応じてくれやすいぞ
二つ目はちょっと珍しい「妖精型」
背中に羽の生えた、手乗りサイズの小さな人間型の精霊だ。ここの門番も妖精型だな、結構デカかったけど
こいつはダメ。絶っっっ対に契約しちゃダメだ
ここは精霊界だから大丈夫だけど、人間界に「人型に羽を生やした存在」を連れ出せば、一瞬で怪物の餌食になる
当然、テイムモンスも喰われたらロストだ
三つ目は、論争の元となっている「空想生物型」
「妖精も空想生物だろがい!」「動物型も進化したらほとんど空想生物になるだろがい!」「結局一種類だろがい!」という主張があるんだ
でも、分類したい人たちは、契約難度とかタブー注意とかをしたくて選り分けてるからなぁ………どっちの言い分もわかる
んで、「空想生物型」は、石や土でできた身体をしてたり、プルプルの粘体でできたボディをしてたりする
うん、まんまゴーレムやスライムだ
あの空を飛んでる龍とかドラゴンとかも空想生物型に分類されるな
こいつらはほーんとややこしい。魔物のスライムとスライム型精霊を並べても、どっちがどっちか見分けられんくらい、似すぎてる
『鑑定』系スキルで見るまでは、もう全く同じの種族なんじゃないかってくらい瓜二つなんだ
まあ、魔物の祖先って精霊だし
ついでに、動植物の祖先も精霊だ
ついでのついでに、人間の祖先も精霊だったりする
ついでのついでのついでだけど、ドラゴンの祖先は精霊、ではないんだなこれが
ここほーーんとややこい
説明してもいいんだけど、あんまり気が乗らない
今ここにはいないけど、適当な説明したら口うるさく訂正してくるやつらがいるからな
あいつら、特にあいつ、全くデタラメな説明するより部分的に間違ってる説明した時の方が目くじら立てて怒ってくるんだよなぁ
なんだったか…………『お前のは理解じゃない、暗記だ。理解してたらそんなとこ間違えるわけないだろ』的なこと言われるんだよ
まいいや、また気が乗った時にでも説明してあげよう
とりあえず今は、契約してくれる精霊を見繕おう
土属性の精霊なので黄色の、というより黄土色っぽい色の子から選ぶ
できればある程度育ってる子がいい。でもレベルが高いと契約を断られちゃうことがあるから、ちょうどいいくらいの子を探す
断られても好感度を上げたりすれば契約できるけど、そこまでして厳選するほどじゃないのでサクッと契約できる子がいい
「ん〜〜〜…………、一旦集めるか」
精霊は六属性六種類。そこから目当ての土属性精霊を見つけ出して、その上で手頃なレベルかを判断する
手間が二段階かかるのが、ほんのちょっとだけもどかしい
なので、その手間をひとつ省くことにする
俺は作ってもらった精霊鈴、[精霊鈴・土]を取り出す
鈴についている紐をつまみ、軽く振ってみる
チリーン
「~~?」「~~!」「~~~~」「………」「~~!!」「~」「~~~~~!!!!」「~~…」「~?」「……!」「~~??」
「おー来た来た、ワラワラワラワラと」
すると、そこらじゅうを飛び回ってた精霊の中から、黄土色をした精霊のみが鈴の音につられて近寄ってきた
ちょっとした裏技だ。これでわざわざ土精霊か否かを判別する手間がなくなった
集まってきた土精霊を観察する
ネズミ、ウシ、トラ、ウサギ、タツ…ノオトシゴ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、ニワトリ、イヌ、イノシシ、土偶、埴輪、リス、カメ、妖精、ダチョウ、クマ、ハト、オポッサム、インパラ、ネコ、フグ、キジ、ムフロン、ブラックマンバ、メガネカイマン、ゴマフアザラシ、タスマニアデビル、ハダカカメガイ、ヒメコブスジツノゴミムシダマシ、バーガンディゴライアスバードイーター、etc.etc.………
玉石混交、千差万別、十人十色、ピンからキリまで。幅広すぎるニーズに応えられるラインナップとなっていた
まあメジャーなイヌとかネコとかの小型哺乳類が複数体いて大半を占めてるけど。ニッチなのはたまにいるくらいだ
大きさもバラバラ。クマの姿をしてるのにチワワサイズしかない子もいれば、虫型なのに3mクラスもある失神ものなやつもいる
そこのヒメコブスジツノゴミムシダマシ型精霊も、本来は体長5mmで小指に乗るサイズなのに、こいつは逆に人間が背中に乗れちゃうくらいデカい。ヒメコブスジツノゴミムシダマシの特徴的な二本のツノも大きくなって観察しやすくなってるし、ヒメコブスジツノゴミムシダマシマニアにはたまらない精霊だな。ヒメコブスジツノゴミムシダマシマニアなんていればだけど
ここから良さげな子を探してく
デカすぎる子は無理、小さすぎるのもやめとく。容姿がのっぺりしてる子も外す。できれば毛並みとかの体表がある程度造形できてるくらいの子がベストかな?妖精型は論外
消去法で候補を絞って、後は好みで決めようと思う。残念ながらヒメコブスジツノゴミムシダマシは早々に候補から外れてしまった
最終的に残ったのは、イヌ、サル、キジ、カメ、ネコ、バーガンディゴライアスバードイーターの6体になった
どの子にしよっかな〜〜?決まんなかったら離れたとこでまた集まればいいけど、ここで決めちゃいたいな
「マ〜オ」
「んお?お前、鳴けるのか!!」
「ナ〜」
イロモノ枠はロールプレイ上よろしくないかな?いやでも、「コオロギ」の精霊がタランチュラなのはそれはそれでいいかもな……
なんて、しょうもない理由でバーガンディゴライアスバードイーターに決定しそうになったところに、動物の鳴き声のようなものが聞こえた
そっちを見れば、候補の1体だったネコ型精霊がネコの鳴き声をあげていた
普通の精霊なら電子ピアノのような声しか出せないのに、だ
この子は、レベルが他の子より一回り高いかもな
「ダメで元々!ネコちゃん、俺と契約しないか?」
「ンナ〜」
レベルが高いということは契約失敗する確率も高くなる
でも、チャレンジするのはタダだ。成功すれば儲けもん、失敗しても他の子にすればいい
土精霊特有の黄土色の体色がマッチして、見た目は完全に茶トラなネコ精霊に精霊鈴を近づける
すると………
「ニャア」
「よっしゃ!!」
ネコ精霊が鈴を見て、前足の肉球でテチっとタッチした
すると、ネコ精霊と精霊鈴があたたかな光を放ち始める。それが収まると、ネコ精霊の首に精霊鈴のついた首輪が着けられていた
契約成功だ
〈〈お知らせします。精霊と初めて契約したプレイヤーが現れました 契約者 「(匿名)」〉〉
〈ユニーク称号『精霊との初契約者』を獲得しました〉
〈BPを1獲得しました〉
〈[無結晶]を手に入れました〉
〈称号『永遠の親友となるだろう』を獲得しました〉
〈BPを1獲得しました〉
〈[精霊の雫]を手に入れました〉
〈条件を満たしました。スキル『精霊術』が獲得可能になりました〉
あっ。
…………まあ、ええか。精霊門が開いたからそこまで不自然じゃないだろうし
むしろ発破になったでしょう
「これからよろしくな!!お前の名前は………………え〜〜〜っと………な、なににしよっかな〜?」
「ナーー」
やべ、名前決めてなかった
いつも精霊に使ってる名前は………あれは属性由来だし、あっちは動物が元で………
前に土精霊使った時の名前は…………あーそうだそうだ、「ハイパーアースクエイクグレートグランドアルティメットカピバラ」だ!
あークソ、これどこぞのドラゴンなシャイニングに命名任せたのをなぜかノリで採用しちゃった時のやつじゃねーか!!
「しゃーない、後で考えよう」
「ムーー」
「すまんな、絶対いい名前つけてあげるから」
「ナー」
そう言うと、ネコ精霊はピョンとジャンプして俺の肩に乗ってきた
機嫌を損ねちゃったかな?まあ、精霊が「機嫌を損ねる」なんてことは滅多にないんだけど
へんに適当な名前つけるよりは、しっかり考えてまともな名前つけてあげた方がいいだろうしさ
このままだと「ハイパーアースクエイクグレートグランドアルティメットヌッコ」になるとこだったし
何はともあれ無事精霊と契約できた俺は、ひとまず家に帰るのだった
精霊門イベントも終わったし、次のイベントの対策もしないとな〜〜




