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百均の不死鳥



「出てこいフェニックス!!!」


「っっっ!!!?!?」



 身構えていない時に不意打ちで飛び出てきたとんでもワード、フェニックス

 発狂絶叫しそうになったのをすんでのところで飲み込めた俺を褒めて欲しい


 でも心中は依然穏やかではない

 いやなんで!?なんでフェニックス!?俺以外でフェニックステイムしたやついるの!?

 どうやったの!?偶然に偶然が重なって、天文学的なハイパーリアルラックでゲットしたってか!!?そんなことある!?

 いや、俺の知らない入手ルートがあった?マイナーすぎたり、『公式鯖』限定のクエストがあったのかも…?

 もしかしたら、いやないとは思うけど、俺以外のタイムリープ者がいる…!?今まで動きを見せなかったのは、第二陣だったから…!?


 一瞬のうちにいくつもの考えが脳を巡り、一人静かにパニックになる俺

 しかし、真実は非常にシンプルで馬鹿らしいものだった



「『召喚』!!」


「コケェ!!」


「んっく…!(いや焼き鳥やないかい!!)」



 「フェニックス」を呼び出すと言ったプレイヤーによって召喚されたのは、橙色の羽毛をした………ニワトリだった


 種族名を[ファイアコッコ]というこいつは、名前の通り火属性に目覚めた[コッコ]の進化系の一つである

 火+鳥という組み合わせから、別名「セルフ焼き鳥」「百均の不死鳥」「火家禽(ヒカキ◯)」と呼ばれている


 ……………ま、まあ、こんなこったろうと思ってたよ!!

 ふぅ、びっくりした



「おいフザけてる場合かっ!!」


「俺は本気だぜぇ…?」


「嘘こけ!!」


「コケ?」


「いやマジマジ!マジなんだって!ちゃんと考えた結果だぜ?」


「どう考えたらそんなガチ感の薄いお遊び要素をこのガチの戦闘の場で出すんだよ!!」


「いやさ、【テイマー】が弱いと言われてる理由って、パーティ枠を潰すからだろ?」


「は?まあ、そうだな」


「でも今は人数制限とかないじゃん?だから頭数は増やし得って思わねぇ?ジョブも【テイマー】にする必要ないし」


「あぁ〜、一理ある、か…?」



「おい揉めてる暇はないぞ!!お前らも戦え!!」


「まだそこにいるな下等生物めが!!『タイタンハンド』!!」


「あっっぶ!?」



 ちょっとした意見の対立もあったみたいだけど、全員ちゃんと戦い始めた

 後は見てれば終わるだろう。さっきまでで観察する時間は十分あったんだし



「うおおお!!!『クロススラッシぁっぶねっ!?」


「『フレイムウィップ』!!おい危ねぇだろ射線に割り込むな!!」


「いや後ろから見てるそっちが気遣えよ!!」


「俺は定位置から動いてないぞ!『フレイムマシンガン』目の前をうろちょろすんな!!」


「はぁぁ!?バック取らなきゃ危ねぇだろが!!『エッジショット』!!」


「そいつ()()()()()()んだから裏取る必要ねぇだろが!!バカか!!」


「前から行くとデタラメに振り回すナイフに当たるんだよ!!ちったあ考えろ!!」


「小癪な!!『フロストノ──うがっ!?くっ、またか…!!」


「ファンブル来た!!今だ!!」


「任せろ!『パワーチャージ』!!『ヘビーって危ねぇなおい!!」


「『ウィンドブラスト』!!攻撃範囲に入ってくんな!!」


「怯んでる時は溜め技当てるのが定石だろ!!引っ込んでろよ!!」


「ダメージ出すなら複数で殴った方がいいだろ!!他の邪魔すんな!!」


「やべぇな、的が小さすぎてFF(フレンドリーファイア)のオンパレードだ……」



 ………あれ?雲行き怪しいぞ?

 仲違いに次ぐ仲違いで、全然DPS出せてないぞ?

 30人もいるのに、実際に攻撃できてるのは4,5人もいないんじゃないか?こいつら連携ヘタクソすぎない??

 なにやってんだか。目も耳も見えてない相手に手間取りすぎだろ


 「呪い返し」。呪詛返しとも呼ばれる要素がある

 それは、『呪い』が成立する前に解呪されたり、呪いを無効化されたり、または呪いを正規の手順を踏まず無理やり解呪した場合、呪いが自分に跳ね返ってくるというものだ


 目の前の悪魔は、ギルド職員を操るためにかけた呪いを自分で解除した。痕跡から自分の元へ辿り着かれないよう強引に解いたため、その反動をモロに喰らっているのだ

 今のこいつは、目と耳が使えない上に、魔力消費の大きい魔法が使えなくなっているはずだ


 やみくもに放たれる攻撃はどれも一撃(ワンパン)で命を刈り取ってくるが、予備動作を見れば事前退避は簡単だ

 あとは体力をチマチマ削っていけばいいだけなんだけど………



「(ほぼフルアタッカーじゃねぇか)」



 人間大の敵を大勢で囲んでいるせいで、相手の攻撃を避けるスペースがない。しかも味方に流れ弾も飛んでいく始末だ

 一度に挑みすぎじゃない?アタッカーは数人に任せて、残りは支援した方がいいんじゃない?もしくは四天王方式でやられたら交代するかんじで

 う〜ん、口出しするべきかなぁ……


 これ、イベント失敗されたらめんどくさそうだな……

 こいつらが全滅しても俺が倒しちゃえばいいんだけど、それはなんか違うじゃん?

 他のプレイヤーにコオロギクエストとして依頼するのもいいけど、こいつらがリトライするかもしれないじゃん?そうしたらダブルブッキングになっちゃうじゃん

 リトライを待ってもいいけど、諦めてリトライしない可能性もあるじゃん?


 めんどくせ〜〜!この場でサクッとクリアしてほしぃ〜〜!

 もういいや、ちょびっと手助けしちゃお



「アカハネ」


「ピィ?」


「あいつらにバフかけてやれ」


「ピィッ!」



「『フレイムウィップ』っ!?なんだこりゃ!?」


「『撃鎚』!!ぬおっ!?ハンマーが軽い!?」


「お、お前らステータス見ろ!!とんでもねぇことになってんぞ!!」


「え?ってはぁ!?STR +13()0!?」


「火属性付与に強化!?状態異常耐性にデバフ抵抗!?なんでいきなり!?」


「潰れて死ね!!『グラビ──あがっ!?ぐぅっ、これもだめか…!!」


「チャンス!『シャドウランス』!!」


「ざっけんな!!また味方を巻き込みやがったな!!クソッ、ポーションを……んあ?なんだ!?HPがモリモリ回復してってるぞ!?」



 プレイヤー達を仲間と認識させ、アカハネに全体バフと回復を撒いてもらう。アカハネ成長期なう

 連携力は全く改善されてない。でも単純にDPSが上がったから、全滅する前に倒せるっしょ

 FFの火力も上がっちゃったけど、死ななければアカハネが秒で回復させちゃうし


 ちなみに、STR上昇と火属性強化の恩恵を一番受けているのは……



「コケェェッ!!」



 こいつだったりする


 [ファイアコッコ]の「フェニックス」くんは、本物のフェニックスのバフで多重強化され、凄まじいダメージを出していた

 ダメージ表記はないけど、ダメージエフェクトの大きさでダメージの大小は判別できるぞ



「ぐっ!この感触、まさか貴様ら!家畜の家畜にこの俺を襲わせてやがるな!!虚仮(こけ)にしやがって!!」


「コケ?」


「く、そ…!ア、『アロマヒール』!クッ、こんな屈辱…!!」



 お?回復なんて使うんだ。珍しいな〜

 いや、もしかして『ソロ鯖』じゃ削除されてたモーションか?複数に殴られてもある程度粘れる用の回復だったのかな?


 ダルいなぁ〜

 じゃ、ダメ押ししよっと



「アカハネ、そこの手前の死体を起こしてやれ」


「ピィッ!!」



「───あぁ^〜生き返るわぁ^〜〜」


「え?お前さっき死んでなかった…?」


「なんか生き返れたわ」


「なんで!?何したお前!?どうやったんだ!?」


「正直俺自身もわけわからんくて混乱してる。普通に死んだからいつも通り即リスポーンしようと思ったら、なんか『蘇生をかけられました、受諾しますか?』みたいな文面が出てきて、『はい』選んだら生き返ってた」


「余計わからん!!」


「誰かに蘇生された、ってこと…?」


「そんなことできるやつなんて、一人しかおらん!!」


「やべぇ!みんなコオロギが支援してくれてるぞ!!」



 手が止まってんぞ〜〜、戦え〜〜



「調子に乗るな!『サンダーボル──っが!?何故だ!さっきまで使えていただろうが…!!」


「よっしゃ!ガンガン攻めろ!!」


「コオロギが味方だ!勝ちイベ確定!!」


「FF気にせずいったれ!回復もしてもらえてるぞ!!」


「やられてもリスポーンすんなよ?ワンチャン蘇生してもらえるぞ!!」


「コケェ!!」



 まあ、俺の支援というかアカハネの支援だけど

 相手が回復で粘るのなら、こっちも蘇生で戦闘員を増やして粘らせる

 流石に死んでくペースの方が早いけど、チマチマ蘇生させてけば倒すまでに全滅することはないっしょ


 アカハネはまだ[フェニックス・キッズ]だから他者蘇生スキルは一つしかない

 けど、クールタイムはたったの2分でバチクソに短い。これまだクールタイム削減スキルない状態なんだぜ?



「クソックソックソッ!!俺が本調子なら貴様らなぞ片手で十分だというのに…!!」


「負け惜しみ乙〜〜」


「悪魔ってのも大したことないのな?」



 いや、負け惜しみなことは事実だけど、そいつが万全の状態なら俺たちなんて片手どころか小指で蹴散らせることも事実だぞ?

 悪魔を一方的にボコれる機会なんて今くらいしかないからな


 その後、幾分か順調にダメージを与えていき、プレイヤーの数が15人ほどに減らされた時だった



「舐めるなよ!!俺の本気を見せてやる!!」


「最初から出してればいいのでは?」


「出し惜しんで窮地に立たされるとかマヌケだよなぁ」


「まぁまぁ、ゲームでそれを言っちゃあお終ぇよ」


「来るか!必殺技的なやつ!!」



「喰らえ………………『アルカロイド』!!!」



「お?何が………うおおおお!!?大量の魔物を呼び出すスキルか!!」


「何言ってるんだ?!地面が毒沼になる魔法だろ!!」


「あれが見えないのかよ!!ドデカいやつが召喚されてんだろ!!」


「のおぉぉぉぉ!!?隕石いぃぃぃ!!?」



 悪魔がなんらかのスキルを使うと、唐突に巨大な金管楽器を思いきり吹き鳴らしたかのような超高音と重低音が入り混じった音が鳴り響き、俺たちの目の前に超巨大なドラゴンが降り立った

 跳ねるように揺れた地面も、ビリビリとくる圧倒的強者特有の押しつぶすかのような威圧感も、本物のドラゴンそのものである


 しかし、聞こえてくる他プレイヤーの言葉はどこかチグハグで、まるで全員が別のものを見ているようだ


 これ、初見じゃ気づくの難しいかもな……

 いや複数人いるし、情報を共有すればその齟齬から違和感に気づけるか

 なら大丈夫そうだな


 ………もしも、気づく前に全滅したら……?

 めんどくさっ、やっぱ教え(ネタバレし)ちゃお



「お前ら全員止まれ!!」


「「「っ!!」」」


「これは()()だ!!惑わされるな!!」


「マジで!?幻覚!?これが!?」


「いやでも、攻撃を受けた感触はあったし、HPも減ってるぞ…?」


「それも幻覚だ!!実際には体力は減っていない!!」


「うっそだろ!?」


「マジかよ、UIにも干渉してくんのかよ…!!」


「もしくは、仲間の流れ弾に被弾したんだ!!迂闊に動くな!!落ち着いて対処しろ!!」


「あ、絶対それだわ了解」


「ぬおおおお押しつぶされるぅぅぅぅでもこれ幻覚ぅぅぅ!!?」


「ちょ、HP0になった!!でも死んでない!!やっぱ幻かよ!!」


「まあVRなんて半分幻覚みたいなもんだし」



 幻覚系スキル、『アルカロイド』

 これ、こんな序盤に出てきちゃいけない超凶悪なスキルなんだけど、使い手が弱体化してるから許されてる感がある

 むしろ今のうちに出しておいて、後々に出てきた時の対策を考える機会を与えてくれてるのかもな



「ふ、ふはははは!!使える!いつものように使えるぞ!!『アルカロイド』!!『アルカロイド』!!『アルカ──うっ、ぐ………なんだ…?頭が重い……」


「魔力切れだな」



 調子に乗って『アルカロイド』を連発する悪魔

 しかし、そんなに使ったら魔力も一瞬で底をつく

 これも全部台本通りなので、あとは煮るなり焼くなり二宮◯也どうとでもすればいい



「やったか!?」


「トドメさせばいいのか?」


「いや、すぐに死なずダウンしたことになんか意味あるんじゃね?」


「ムービーとか?」


「戦意を削いだから、今度こそ会話のターン?」


「コオロギが倒せって言ってたし、普通に倒せばいいのでは?」



 お、悪魔の扱いに困ってる

 サクッと倒しちゃうのが早くて楽だけど、初見なら情報も欲しいかな?

 ここは口出しせず、彼らの判断に任せよう


 …………本当に口出ししないぞ?

 面倒いからやーめた、はもうしないから!!



「クッ………なぜトドメをささない?俺から情報を搾り取る気か?いやまさか……俺を憐んでいるのか……!?」


「お、悪魔がなんか喋ってるぞ」


「動画撮った方がいいか?」


「ゴミ虫が…!!絶対に許さねぇ…!!貴様らに憐れまれるくらいなら…!!!」



 あ〜〜、こりゃ自害ルート行ったな。自殺して自分ん家に逃走する気だ

 可もなく不可もなくってルートだ。情報は得られなかったけど、選択が遅かったからしゃーない

 まあ、耳が聞こえない相手とどう対話するかを初見で考えるのはむずいか


 床ペロしていた悪魔が、最後の力を振り絞ってよろよろと立ちあがろうとする

 ……………うん?なんで立つ必要がある?


 嫌な予感が………



「お、おい、待……」


「全員、死ね」



 今にも倒れそうな悪魔が、不敵な笑みを浮かべる

 そして次の瞬間────





 その背中に、翼が生えた



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