これはウマと読みます
◆side:クロート
さぁ!気を取り直してゲームを進めていこう!!
え?空元気?うるせぇ俺は平気だいっ!!
さて、前回の続きから始めよう。…………何をやってたんだっけ?
ああそうだそうだ![精霊門の欠片]集めをしてたんだった!今日は「悪魔の偵察」イベントの後で残りの欠片を集める予定だったな
集め漏らしがなければ、あとはこの『王都プリムス』周辺で取れるものと、[精霊門の欠片・属性結晶]で全部だ
最後にボス周回してフィニッシュだな
ゲームに熱中してたら嫌なことも忘れてるだろう
よっしゃはりきっていくぞぉ!!
グニュゥゥ
「……………」
「ブルヒィンッ!」
「こんのウンコタレがぁぁぁ!!!『ブラッドスラッシュ』!!」
「おい!!そいつは後回しだって言ってんだろ!!クソして走り回るだけでなんの脅威にもなんねぇんだから!!」
「このウマ共、一体一体が地味に硬い上に複数エンカだから非効率なことやってる余裕はねぇぞ!!」
「わかってっけど!!ムカつくんだよこの糞馬鹿!!」
「すごく同意するけど我慢しろ!!」
「ブルヒィン!」
街を出た矢先、靴裏にひっじょ〜〜に不快な感触が。そして俺のINTが3下がった
どうやら、誰かが[ホースディア]を含めた馬魔物集団と戦闘していたようだ
それも結構長引いているらしく、周辺に300個近いデ馬糞がばら撒かれていた
俺は迂闊にもそこに踏み込み、踏みつけてしまった。ウンコを
「ピィ…?」
「いや、あれは倒せない。横取りになっちゃうからな」
俺のフードの中に隠れていたアカハネが、俺の苛立ちを感じ取ったのか声をかけてくる。レベリングということで連れてきていたのだ
ただ、今のは俺のミス。デバフ解除のために自ら倒すことはキルパクになってしまう
ここは諦めて先に行こう
彼らがこのウマシカをぶっ殺してくれれば、このデバフも消えることだろうし
▼
「よし、ここでラストだな!」
「ピィ!」
王都周辺を巡り、ちょっとした秘境とかにも立ち寄って、まだ手に入れてない欠片を集めてきた
残すところはあと2つ。[精霊門の欠片・属性結晶]と、ここのボスからドロップする欠片だ
『王都プリムス』からさらに先へ向かう場所に立ちはだかるボス
それはつまり、チュートリアル正規ルートの最後のボスということだ
念のため全体アナウンスも確認したけど、ちゃんと誰かが初討伐を取ってたことが確認できた。まだだったとしても行くつもりだったけど
でもこのアナウンスが流れたの、今日の朝らしいんだよなぁ……ちょっと遅すぎない?
ここのボスは[マーダーベア]と同程度、下手したら[マーダーベア]より弱いくらいだぞ?
まあ、取り巻きを召喚するから難易度は上がってるけど
あ、ギミックを解明するのに手こずったのか?……いや、一度やればわかるギミックに4日も手こずるわけないし……
う〜ん、イベントや他クエストに集中してるのかな…?
まあいいや。初クリアされてるんならそれでヨシ!
ちょっとプレイヤー全体の攻略度合いが心配になってきたけど、それは後で考えよう
秘技、後回し!!今はボス周回の時間なのさ!!
「アカハネ、準備はいいか〜?」
「ピィッ!」
「よし、行くぞ〜」
ボスエリアに侵入
その場所は、外とほとんど変わらない草原。障害物のない開けた景色であった
ただ一つ違うのは、中央になんか気持ち悪いのが佇んでいることだ
この場の主であるボス魔物、そのシルエットは馬のようであった
しかし、近くで見たら馬とは全く似つかない
目は死んだ魚のようで、口には鋭い牙が生えていて、細く長い舌がヒョロヒョロと垂れている
頭から背中にかけては、たてがみの代わりに太く長い、硬質な体毛がまばらに生えている
体表はカサカサのボロボロで、まるで皮膚病に罹ったような見た目をしている
なんというか、家畜を襲って血を啜ってそう
今回のボスは、その名も[UMA]だ
「UMA」でも「UMA」でもない。「UMA」と書いて「ウマ」と読みます
はい、おふざけモンスですね
「よし、俺が動きを止めるから、アカハネはぶっ放せ」
「ピィッ!」
「モゲェェ!!」
アカハネが頭から降りたのを確認し、気持ち悪い鳴き声をあげている[UMA]へ向かってダッシュで接近する
それを受けて、[UMA]も俺の方に突進してくる
アイツはそのまま正面衝突して跳ね飛ばす気だろう
未だに耐久が紙な俺はそんなつもりはないけどな!
「モゲェェェ!!」
「『ブリンク』!『不意打ち』『カウンターフィスト』ォ!!」
「モゲラッ!!?」
あと数歩で接敵する、といった瞬間に俺が『風魔法』を使って一気に距離を詰める
[UMA]が反応する前にアッパーカットが決まり、大きく怯ませることに成功した
そして………
「『サイドステップ』」
「ピィッ!!」
「モギャァァァ!!??」
俺が横にズレたところに、高火力火炎放射が襲来
[UMA]を強火でじっくり丁寧に焼き上げていく
うむ、理想的なコンビネーションがむっちゃ綺麗に決まっちゃったな!
「いやー、やっぱチートすぎるなぁ」
[UMA]の丸焼きを眺めながら、改めてアカハネの無法さを実感する
火炎ブレスもそうだけど、バフの強化値もえぐい。ダメージ補正の重ねがけを狙えたのもあるけど、一撃でボスを退け反らせるってやばいぞ?
ボスエリアに入った時にはもうバフがかかってたんだけど、この「STR +100」のおかげで俺のSTRは200超え。ちょっとした特化構築並みになっている
やっぱこんな序盤にいちゃいけない強さしてんな
「モヒンッ!!」
「おっ、アカハネ一旦中止」
「ピィ?」
高火力多段ヒットな火炎ブレスのせいで反撃もできず炙られ続けていた[UMA]だったが、突然奇声を上げ、ブレスを弾いた
見れば、全身に半透明の青っぽいタイルが覆っていた。これは、一切のダメージが通らない無敵状態を表すバリアエフェクトだ
[UMA]は体力が25%削れるごとにこの行動をしてきて、ある条件を満たさない限りはこの無敵が解除されないのだ
つまり、ギミックボスだ
「モゲリョリョリョリョ!!!」
[UMA]がやっぱり気持ち悪い鳴き声を上げる
すると、地面のあちこちに魔法陣が出現し、そこから計10体の馬型モンスターが出現した
取り巻き召喚行動だ
さらに、[UMA]の頭上にリングのエフェクトが出現。よく見ればそのリングは6つに分割されており、なんらかのゲージのようにも見えた
「アカハネ![タイガーホース]から倒せ!わかるよな?シマシマのやつだぞ!!」
「ピィ!ピィィッ!!」
「「「ヒヒィィン!!?」」」
取り巻き召喚をしてから、[UMA]は全く動かなくなった
攻撃も通らないので、今は雑魚処理の時間だ
対多数こそアカハネの得意戦場。いつものように火炎ブレスを放ち、一瞬で3体を葬った
すると、[UMA]の頭上に浮かんでいたリング状ゲージが3つ消失した
つまりこれは、召喚された雑魚を6体倒せば無敵が解除されるのだと簡単に予想できる。わかりやすいギミックだ
しかも無敵中は[UMA]自身も行動不能になるため、大分易しいギミックだな
まあ、ギミックはもう二段階あるけど
「アカハネ、そのまま殲滅!」
「ピィッ!!」
「「ヒヒィィン!!?」」
アカハネばっかに任せてられないな!俺も戦おう!!
まずはお前からだ!!
グニュゥゥ
「……………」
「ブルヒィンッ!」
一体の馬へ近づこうとしたら、靴裏に超不快な感触が。そして俺のAGIが3下がる
こんのクソバカ性懲りも無くゥ!!何回これやるねん!!
「ふんっ!!」
「モゲッ!?」
俺は怒りのまま、踏んづけたデ馬糞を蹴り飛ばす
そしたらそのデ馬糞は、無敵エフェクトを纏った[UMA]にベチョッと当たる。そしてギミックの無敵を貫通してデバフエフェクトを付与した
今の[UMA]は、なんらかのステータスが3下がっていることだろう
と、俺がウンコと戯れている間に、アカハネは真面目に仕事をこなしており、6体目の雑魚の体力が消え去った
「ムモモモモモ!!!」
[UMA]の無敵エフェクトが、ガラスが割れるように砕け散る
それと同時に、[UMA]がまた違う種類のキモい鳴き声をあげた
すると、生き残っていた4体の雑魚敵に変化が生じる
背中から[UMA]と同じ硬い毛が生えてきて、キモいのが増えた。あとついでにステータスが強化された
あ、一個訂正。4体って言ったけど3体だったわ
クソバカこと[ホースディア]は、今の行動が「なんか魔法っぽい!」と判断したのか、ボスからのバフを無効化してしまった
何がしたいんだこいつ
そして、[UMA]の行動不能も解除される
ここからは、ボスと強化された取り巻き4体(内1体バカ)の合計5体を相手にしなくてはいけないのだ
「モゲゲゲゲ……!」
「───『気合い溜め』、『不意打ち』『バックスタブ』『スマッシュ』!!」
「モギャッッ!?!?」
「アカハネ!」
「ピィッ!!」
「モギャァァァ!!?」
バフを撒き終えてさあ自分も戦うぜ!と息巻いていたのだろう[UMA]の隙をつき、『上級隠密』で意識から外れる
そのまま後ろへ回り込み、脳天に拳骨を喰らわせて小スタンさせ、またアカハネの火炎放射で上手に焼いてもらう
見事なハメ技コンボが決まってしまった
「そのまま焼いといて〜、気持ち弱火で。その間に雑魚処理しきっちゃうから」
「ピィッ!」
「モギェェェェ!!?」
チートモンスフェニックスのぶっ壊れ技でボスの行動を完全に封じ込めている間に、俺が取り巻きを倒し切る
[UMA]の取り巻き強化は重複しちゃうからな。また体力を25%削る前に全部倒しとかないとダルいことになる
で、これだけ完璧に手玉に取れてしまったら、後はもう作業だ。これ以上の強化も変化も行動パターン追加もなにもない
一応ギミックには最後の段階があるけど、それは発生させないようにしてるから見ることはないし
………見ることないから、ネタバレしちゃうか!こっから作業ゲーで暇だし
[UMA]の最後のギミック。召喚された10体の取り巻きのうち6体を倒し、取り巻き強化がなされた時………生き残った取り巻きの中にもしも、[タイガーホース]がいた場合
バフが施された瞬間、背中にキモい毛が生えるだけでなく、筋肉がボコボコと隆起し、全身の毛が抜け落ちてボロボロカサカサになり、目は死んだ魚みたいになって口からは細い舌がビロビロと出てくる
なんと、[タイガーホース]が[UMA]になってしまうのだー!!(棒読み)
しかもこれ、見た目だけが変化しているのではなく、ステータスやギミックまで[UMA]そのものになってしまう
体力が25%削れたら雑魚召喚をするのも、バフをかけた時に[タイガーホース]がいたら[UMA]に変異させるのも、そのままだ
しかも全部がボス判定になっているので、最初の[UMA]だけを倒してもクリアにはならなくなってしまうのだ
まあ、[タイガーホース]を優先して倒せばいいだけの簡単なギミックなんだけどな
初見で行ったらギミックを理解する前に増殖した[UMA]にやられちゃうかもしれないけど、2回目以降は普通に行けるでしょ
他プレイヤーは何にそんな苦戦してたんだ…?
「モゲェ───」
あ、説明してたらボス戦終わりました
いや〜アカハネいるとマジ楽だわ〜
もう事故も特記事項もなにもなく終わった。無敵解除した瞬間に一発入れてアカハネが炙る。以上
強いて言えば、クソバカのクソがただただ不快だったぐらいだ
「お、[精霊門の欠片・謎]出たな」
「ピィ!」
そんじゃ、後は時間いっぱいまで周回するかな




